トップ
>
一幅
>
ひとはば
ふりがな文庫
“
一幅
(
ひとはば
)” の例文
一幅
(
ひとはば
)
の赤い
灯
(
ともし
)
が、暗夜を
劃
(
かく
)
して
閃
(
ひらめ
)
くなかに、がらくたの
堆
(
うずたか
)
い荷車と、
曳子
(
ひきこ
)
の黒い姿を従えて立っていたのが、洋燈を持ったまま前へ出て
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
前垂ももとは
四幅
(
よはば
)
三幅
(
みはば
)
の広いものであったのが、不断着のままで働くようになって、うしろはいらぬから、それが
二幅
(
ふたはば
)
になりまた
一幅
(
ひとはば
)
にもなった。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
行詰
(
ゆきづめ
)
に石垣に寄せて
縁側
(
えんがわ
)
のようにした
一幅
(
ひとはば
)
の
桟橋
(
さんばし
)
がかかっていて、その下には大川の水が物の秘密を包んでいるように
満満
(
まんまん
)
と
湛
(
たた
)
えていた。二人は河の
面
(
おもて
)
を見入った
後
(
のち
)
に黙って顔を見合して
衝立
(
つった
)
った。
水魔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
およそ
一幅
(
ひとはば
)
の黒い影が、山の腹へひらひらと映って、煙が分れたように消える、とそこだけ、はっと月が
射
(
さ
)
して、芭蕉のあとを、明るくなる。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そうすると袂が邪魔になって、手細の
筒袖
(
つつそで
)
は着られない。それで今度は手元だけ細く、袖つけの所の広くなった
巻袖
(
まきそで
)
がはやり出したのである。この袖は
一幅
(
ひとはば
)
の袖を斜めに折ってこしらえた。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
▼ もっと見る
やはりそのものの手から、ずうと糸が
繋
(
つな
)
がっていたものらしい。舞台の左右、山の腹へ斜めにかかった、
一幅
(
ひとはば
)
の白い
靄
(
もや
)
が同じく幕でございました。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
天涯に
衝立
(
ついたて
)
めいた
医王山
(
いおうせん
)
の
巓
(
いただき
)
を
背負
(
しょ
)
い、
颯
(
さっ
)
と
一幅
(
ひとはば
)
、障子を立てた白い
夕靄
(
ゆうもや
)
から半身を
顕
(
あら
)
わして、
錦
(
にしき
)
の帯は
確
(
たしか
)
に見た。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
目の前へ——水が、向う岸から
両岐
(
ふたつ
)
に
尖
(
とが
)
って切れて、
一幅
(
ひとはば
)
裾拡
(
すそひろ
)
がりに、風に半幅を絞った形に、薄い水脚が立った、と思うと、
真黒
(
まっくろ
)
な
面
(
つら
)
がぬいと出ました。
半島一奇抄
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
※
(
ぱっ
)
と糸のような
真赤
(
まっか
)
な光線がさして、
一幅
(
ひとはば
)
あかるくなったなかにこの
身体
(
からだ
)
が包まれたので、ほっといきをつくと、山の
端
(
は
)
が遠く見えて、私のからだは
地
(
つち
)
を放れて
化鳥
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
また
暗碧
(
あんぺき
)
に
白布
(
しろぬの
)
を織って矢を射るように里へ出るのじゃが、その巌にせかれた方は六尺ばかり、これは川の
一幅
(
ひとはば
)
を
裂
(
さ
)
いて糸も乱れず、一方は幅が狭い、三尺くらい
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
仕丁 ずるずるずると巻きましたが、真黒な
一幅
(
ひとはば
)
になって、のろのろと森の奥へ
入
(
はい
)
りました。……
大方
(
おおかた
)
、釘を打込みます古杉の根へ、一念で、巻きついた事でござりましょう。
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
婦人
(
おんな
)
はしばらく考えていたが、ふと
傍
(
わき
)
を向いて布の
袋
(
ふくろ
)
を取って、
膝
(
ひざ
)
のあたりに置いた
桶
(
おけ
)
の中へざらざらと
一幅
(
ひとはば
)
、水を
溢
(
こぼ
)
すようにあけて
縁
(
ふち
)
をおさえて、手で
掬
(
すく
)
って
俯向
(
うつむ
)
いて見たが
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
枯野
(
かれの
)
の
冷
(
ひえ
)
が
一幅
(
ひとはば
)
に細く肩の
隙
(
すき
)
へ入つたので、しつかと引寄せた下着の
背
(
せな
)
、
綿
(
わた
)
もないのに
暖
(
あたたか
)
く
二
(
に
)
の
腕
(
うで
)
へ触れたと思ふと、足を包んだ
裳
(
もすそ
)
が揺れて、絵の
婦人
(
おんな
)
の、
片膝
(
かたひざ
)
立てたやうな
皺
(
しわ
)
が
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
棒杭
(
ぼうぐい
)
のように欄干がついて、——あれを横切って、山の方から浜田へ流れて出る小川を見ると、これはまた案外で、
瓦色
(
かわらいろ
)
に濁ったのが、どうどうとただ
一幅
(
ひとはば
)
だけれども
畝
(
うねり
)
を立てて
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あけの明星の
光明
(
こうみょう
)
が、
嶮山
(
けんざん
)
の
髄
(
ずい
)
に
浸透
(
しみとお
)
つて、横に
一幅
(
ひとはば
)
水が光り、縦に
一筋
(
ひとすじ
)
、
紫
(
むらさき
)
に
凝
(
こ
)
りつつ
真紅
(
まっか
)
に燃ゆる、もみぢに添ひたる、
三抱余
(
みかかえあま
)
り見上げるやうな杉の
大木
(
たいぼく
)
の、
梢
(
こずえ
)
近い葉の中から
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
茫
(
ぼう
)
と天井から
一幅
(
ひとはば
)
落ちたが、
四辺
(
あたり
)
が暗くて、その何にも分らぬ……両方の棚に、ひしひしと並べた明
晃々
(
こうこう
)
たる器械のありとも見えず、
寂
(
しん
)
となって隠れた処は、雪に埋もれた関らしく
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
拳
(
こぶし
)
をあげて一
人
(
にん
)
の
天窓
(
あたま
)
をうたんとせしに、
一幅
(
ひとはば
)
の青き光
颯
(
さっ
)
と窓を射て、水晶の念珠瞳をかすめ、ハッシと胸をうちたるに、ひるみて
踞
(
うずく
)
まる時、
若僧
(
じゃくそう
)
円柱をいざり出でつつ、つい居て
竜潭譚
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
拳
(
こぶし
)
をあげて一
人
(
にん
)
の
天窓
(
あたま
)
をうたむとせしに、
一幅
(
ひとはば
)
の青き光
颯
(
さつ
)
と窓を射て、水晶の
念珠
(
ねんじゆ
)
瞳
(
ひとみ
)
をかすめ、ハツシと胸をうちたるに、ひるみて
踞
(
うずく
)
まる時、
若僧
(
じやくそう
)
円柱
(
えんちゆう
)
をいざり
出
(
い
)
でつつ、ついゐて
竜潭譚
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
カタリと
一幅
(
ひとはば
)
、黒雲の
鎖
(
とざ
)
したような雨戸が閉って、……
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
幅
常用漢字
中学
部首:⼱
12画
“一幅”で始まる語句
一幅淞波