“宛然”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
さながら53.7%
まるで22.2%
えんぜん15.4%
ゑんぜん4.3%
まるきり1.2%
あたかも0.6%
あだかも0.6%
そつくり0.6%
ちやうど0.6%
ソツクリ0.6%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
乱れ打つ急調なリズムは、宛然さながらつ白骨の音で、その間を縫う怪奇な旋律は、妖鬼の笑いと、鬼火の閃めきでなくて何んでしょう?
死の舞踏 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
とお前様まへさまかせまをはなしは、これからぢやが、最初さいしよまをとほみちがいかにもわるい、宛然まるでひとかよひさうでないうへに、おそろしいのは、へびで。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
山は開けて上流を見るべく、一曲毎きよくごとに一らいをつくり、一瀬毎に一たんをたゝへたる面白き光景は、宛然えんぜん一幅の畫圖ぐわとひろげたるがごとし。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
つらつらあんずるにわが俳諧修業は「ホトトギス」の厄介にもなれば、「海紅かいこう」の世話にもなり、宛然ゑんぜんたる五目流ごもくりうの早じこみと言ふべし。
わが俳諧修業 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
彼は絨毯の上を、しつかりと歩んでゐたつもりであつたが、もし傍観者があつたならば、その足付が、宛然まるきり躍つてゐるやうに見えたかも知れない。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
おそらく快楽好きな若者の目には器量きりょうよしには映るまい。自転車にまたがっている彼女の姿は宛然あたかも働きものの娘さんを一枚の絵にしたようだ。
落穂拾い (新字新仮名) / 小山清(著)
一年ひとゝせの骨折の報酬むくいを収めるのは今である。雪の来ない内に早く。斯うして千曲川の下流に添ふ一面の平野は、宛然あだかも、戦場の光景ありさまであつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
しろこずゑあをは、また中空なかぞらうづうつす——とぐろをき、れて、海原うなばらのそれとおなじです。いや、それよりも、たうげ屋根やねちかかつた、あの可恐おそろしくもみね宛然そつくりであります。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それから横手よこてさかはうかゝつてると、るわ/\、打石斧だせきふが、宛然ちやうど砂利じやりいたやう散布さんぷしてる。
女寅のおえん、容貌カホツキなら物ごしなら宛然ソツクリその人である。唯折々野暮な姿を見せるのは、刻明な世話女房と見えるオソレがある。
封印切漫評 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)