にはとり)” の例文
旧字:
それからといふもの、お月様つきさまおこつてれると、にはとりえぬやうにしてしまひました。それで「とりめ」になりました。
此頃このごろ空癖そらくせで空は低く鼠色ねずみいろくもり、あたりの樹木じゆもくからは虫噛むしばんだ青いまゝの木葉このはが絶え間なく落ちる。からすにはとり啼声なきごゑはと羽音はおとさはやかに力強くきこえる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
セエヌが其処そこにも流れて居るのだらうと云つて降りて行つたが、河は無くてはて知らぬ丘陵の間に野菜畑が続き、散らばつた百姓の庭でにはとりが鳴いて居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
うらの窓もける。窓には竹の格子が付いてゐる。家主やぬしの庭が見える。にはとりを飼つてゐる。美禰子は例の如くき出した。三四郎は四つばいになつて、あとから拭き出した。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
城趾しろあとあたりは、人里ひとざととほいから、にはとりこゑからすこゑより、五位鷺ごゐさぎいろけやう。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其の弟子八五成光なりみつなるもの、興義が八六神妙しんめうをつたへて八七時に名あり。八八閑院の殿との八九障子しやうじにはとりゑがきしに、生けるとりこの絵を見てたるよしを、九〇古き物がたりにせたり。
両側の家の軒燈けんどうのまたたいて居る大道だいだうを、南へ南へと引いて行かれるのでした。みなとの橋を渡りますと正面に見える大きい家でにはとりきました。何時いつにか私は母にりかかつて眠りました。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
うちのにはとり
(新字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
にはとり
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
にはとり神様かみさま夜明よあけらせること仰付おほせつかつたのがうれしさに、最初さいしよよる、まだお月様つきさまがゆつくりとそらあそびまはつてゐるのに、ときつくつてきました。
夜食にあゆのフライが出た。日本の様な風味だ。にはとりにあしらつた米も日本まいの様に美味うまかつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)