あたら)” の例文
私のように冬でも夏でも年中川や海へ釣の旅をして、あたらしい魚をたしなんでいるものでも、秋がくると特に魚漿にうま味が出てくるのを感ずるのである。
秋の鮎 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
それらの天恵の中でも、この伊豆海岸の生活で自分に一番嬉しいことは、いつもあたらしい魚が得られしかもその種類が極めて多いということであった。
雑魚図譜 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
紅玉を砕いたような桜桃のジェリー、今朝焼いたばかりの Weggliウェックリ、アルプから届けてれたあたらしい牛酪アンカなどが、どんなに一同を喜ばせたろう。
妻君「鯖の船場煮とはどうしたお料理です」お登和嬢「鯖の船場煮は誠にさっぱりしたお料理で先ず生鯖のあたらしいのへ一塩てて二、三時間置きます。 ...
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
日の暮に平潟ひらがたの宿に歸つた。湯はぬるく、便所はむさく、魚はあたらしいが料理がまづくて腥く、水を飮まうとすれば潟臭かたくさく、加之しかも夥しい蚊が眞黒にたかる。
熊の足跡 (旧字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
日のくれに平潟の宿に帰った。湯はぬるく、便所はむさく、魚はあたらしいが料理がまずくてなまぐさく、水を飲もうとすれば潟臭かたくさく、加之しかもおびただしい真黒まっくろにたかる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「今日はね河岸かしへ大層着いたそうで、まぐろあたらしいのがあるからおすきな赤いのをと思ってきいちゃんを一人ぼっちにして、角の喜の字へくとね、帰りがけにお前、」
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
珍しくあっさりした、魚のあたらしい夕食を済ますと葉子は風呂ふろをつかって、思い存分髪を洗った。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
皿の上のはやは焼きたての香を放つて、空腹すきばらで居る二人の鼻を打つ。銀色の背、かばと白との腹、そのあたらしい魚が茶色に焼け焦げて、ところまんだら味噌のく付かないのも有つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
電燈は、膳の上の、あたらしい魚の肉を盛った皿に青く輝いた。奈良、法隆寺と海の遠い処の、宿屋に泊って、半分腐れかゝった魚を食べさせられた自分は、舞子の一泊を忘れることが出来ない。
舞子より須磨へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
あたらしい陰影になつて
わがひとに与ふる哀歌 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
それから少し手際が面倒ですけれども醤油と味淋と水飴とを煮詰めて照炙てりやきにしても結構ですがあたらしい鰯をって上手に取扱わないと崩れてうまく参りません
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
これが海軍の軍人に縁付いて、近頃相州の逗子ずしります。至って心の優しい婦人で、あたらしい刺身を進じょう、海の月を見に来い、と音信おとずれのたびに云うてくれます。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
K鮨は、評判どおりに非常にあたらしい材料を使うので、たいへんうまかった。料理台の上にのっていた、一尺立方くらいの鮪の切身の色の美しさなど、今でも記憶にのこっているくらいである。
塩の風趣 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
その代り味はなかなか結構で上等の御馳走にしてありますが料理法が悪いと身体からだを害します。こと半煮なまにえの物を食べるのとあたらしい肉を料理するのが一番悪うございます。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
うまつたか、身軽みがるになつて、ちひさなつゝみかたにかけて、に一こひの、うろこ金色こんじきなる、溌溂はつらつとしてうごきさうな、あたらしいそのたけじやくばかりなのを、あぎとわらとほして、ぶらりとげてた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
... そうして出来上った時あたらしいクリームなら上等ですし、なければ牛乳をきほど加えて少し煮て火からおろしたのがかけ汁になります」玉江嬢「オヤオヤ随分面倒ですね」
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
馬は売ったか、身軽になって、小さな包みを肩にかけて、手に一こいの、うろこ金色こんじきなる、溌剌はつらつとして尾の動きそうな、あたらしい、そのたけ三尺ばかりなのを、あぎとわらを通して、ぶらりと提げていた。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
イザ出すという前にあたらしいクリームを一合ほどいれたのがこのスープだ。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
……その時は町の方を歩行あるいて、通りの煮染屋にしめやの戸口に、手拭てぬぐいくび菅笠すげがさかぶった……このあたり浜から出る女の魚売が、天秤てんびんおろした処にきかかって、あたらしい雑魚に添えて、つまといった形で
小春の狐 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
中川「それはあたらしい肉のエキス分が出てしまうからです。 ...
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
あたらしき鳥は前文の悪兆なく眼の球に光沢あり。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)