トップ
>
香花
>
こうげ
ふりがな文庫
“
香花
(
こうげ
)” の例文
その前には、竹の花立があったけれど、誰も
香花
(
こうげ
)
を
手向
(
たむ
)
けた様子は見えず、腐りかけた雨水がいっぱいに溜っているだけです。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
またあれの墓にも
香花
(
こうげ
)
をあなたの手から手向けて頂いたら、少しは家中の心持も休まるかと思いまして……今日のことをなんぼう待ちましたろ。
野菊の墓
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
門内に進み入り、扉のかげの花屋で
香花
(
こうげ
)
を買いながら、わたくしは何と言っていいかわからぬので、まず、それとなく
墓畔の梅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
春の彼岸の墓参りなどにも、心当りの雪を掻きのけて、わずかな窪みを作って
香花
(
こうげ
)
を供えて帰るという話が、越後
南魚沼
(
みなみうおぬま
)
の町方でも語られている。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
その以来、彼は彰義隊の墓へまいるときには、かならずかの親子の小さい墓へも
香花
(
こうげ
)
をそなえるのを例としていた。
兜
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
かの玉をこめ
置
(
おき
)
、
香花
(
こうげ
)
を備え、守護神は八竜
並居
(
なみい
)
たり、その外悪魚
鰐
(
わに
)
の口、
遁
(
のが
)
れがたしや
我
(
わが
)
命、さすが恩愛の
故郷
(
ふるさと
)
のかたぞ恋しき、あの浪のあなたにぞ……
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
王も都人も見物に出懸け
香花
(
こうげ
)
を供う、この巨人は誰だろうと王が言うと、一僧これは
袈裟
(
けさ
)
を掛け居るから
滅心定
(
めっしんじょう
)
に入った阿羅漢だろう、この定に入るに期限あり
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
と事なく済みましたが、多助は
少
(
ちい
)
さい内から
仲好
(
なかよし
)
の友達のことゆえ、
間
(
ま
)
さえあれば圓次の
墓所
(
はかしょ
)
へまいり、墓掃除をいたし、
香花
(
こうげ
)
を毎日手向けてやって居りました。
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
なるほど、
香花
(
こうげ
)
、
燈燭
(
とうしょく
)
、
幢幡
(
とうばん
)
、
宝蓋
(
ほうがい
)
などをささげた行列——それはすでに船をはなれて上陸していた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あの建札へこの頃は
香花
(
こうげ
)
が
手向
(
たむ
)
けてあると云う噂を聞く事でもございますと、やはり気味の悪い一方では、
一
(
ひと
)
かど大手柄でも建てたような嬉しい気が致すのでございます。
竜
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
わたくしはその間に、妹のわたくしを偏愛して男の気ならば友人の手紙さえ取上げて見せなかった文学熱心の兄の墓に
詣
(
もう
)
で、一人の弟と一人の妹の墓にも花と
香花
(
こうげ
)
をわけた。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
一七日の法事を営み
了
(
おわ
)
り墓に詣りて
香花
(
こうげ
)
を
手向
(
たむ
)
けたること、勇蔵が遺物と逸事をもって阿園の喜びに入りしこと、再度徳利と菜籠を提げて阿園を訪いたること、ついに阿園と寝たること
空家
(新字新仮名)
/
宮崎湖処子
(著)
という和尚は
珠数
(
じゅず
)
を手にしながら、先に立って、廊下づたいに本堂の裏手へと半蔵らを導いた。
霊膳
(
れいぜん
)
、茶、
香花
(
こうげ
)
、それに
燭台
(
しょくだい
)
のそなえにも和尚の注意の行き届いた薄暗い
部屋
(
へや
)
がそこにあった。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
尤
(
もっと
)
も、
最初
(
さいしょ
)
は
別
(
べつ
)
に
私
(
わたくし
)
をお
宮
(
みや
)
に
祀
(
まつ
)
るまでの
話
(
はなし
)
が
出
(
で
)
た
訳
(
わけ
)
ではなく、
時々
(
ときどき
)
思
(
おも
)
い
出
(
だ
)
しては、
野良
(
のら
)
への
往来
(
ゆきかえり
)
に
私
(
わたくし
)
の
墓
(
はか
)
に
香花
(
こうげ
)
を
手向
(
たむ
)
ける
位
(
くらい
)
のことだったそうでございますが、その
後
(
のち
)
不図
(
ふと
)
とした
事
(
こと
)
が
動機
(
どうき
)
となり
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
墓に向って
香花
(
こうげ
)
を
手向
(
たむ
)
けるでもなく、墓を墓として見届けた後も、急に立去ろうとはしないで——お雪ちゃんのために、こんな話を語り聞かせました——
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
橋杭にかかった五人の遊女を葬って「
上﨟塚
(
じょうろうづか
)
」とよんだり「傾城塚」と称して、往時は
香花
(
こうげ
)
が絶えなかったというのはロマンではあるが、法然伝の史実ではあるまい。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
民子のためには
真
(
ほん
)
に千僧の供養にまさるあなたの
香花
(
こうげ
)
、どうぞ政夫さん、よオくお参りをして下さい……今日は民子も定めて草葉の蔭で嬉しかろう……なあ此人にせめて一度でも
野菊の墓
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
内供は、仏前に
香花
(
こうげ
)
を
供
(
そな
)
えるような
恭
(
うやうや
)
しい手つきで、鼻を抑えながら、こう呟いた。
鼻
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
一度江戸へ立帰らんと思い立ち、
日数
(
ひかず
)
を経て、八月三日江戸表へ
着
(
ちゃく
)
いたし、
先
(
ま
)
ず谷中の三崎村なる新幡随院へ参り、主人の墓へ
香花
(
こうげ
)
を
手向
(
たむ
)
け水を上げ、
墓原
(
はかはら
)
の前に両手を突きまして
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
七左 はあ、
香花
(
こうげ
)
、お
茶湯
(
ちゃとう
)
、御殊勝でえす。達者でござったらばなあ。
錦染滝白糸:――其一幕――
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
香花
(
こうげ
)
を飾って極めて清浄ならしめ、葡萄、
甜漿
(
てんしょう
)
、
酥乳
(
そにゅう
)
の
粥
(
かゆ
)
を各八器に盛って
俟
(
ま
)
て、
然
(
しか
)
る時八道人ありて汝が供物を食うはず、さて
飲食
(
おんじき
)
しおわったら、汝杖を以て上座した者の頭を打ち
隅
(
すみ
)
に入れと言え
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
と書かれ、
香花
(
こうげ
)
、
燈燭
(
とうしょく
)
のかざりはいうまでもなく、特に供えられた一すじの“誓いの矢”が人目をひいた。これなん
晁蓋
(
ちょうがい
)
を殺した「
史文恭
(
しぶんきょう
)
」と彫りのある毒矢の
矢柄
(
やがら
)
なのである。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
されば、神と云い
仏
(
ほとけ
)
と云う
天魔外道
(
てんまげどう
)
の
類
(
たぐい
)
を信仰せられて、その形になぞらえた木石にも
香花
(
こうげ
)
を供えられる。かくてはやがて
命終
(
めいしゅう
)
の
期
(
ご
)
に臨んで、
永劫
(
えいごう
)
消えぬ地獄の火に焼かれ給うに相違ない。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
香
常用漢字
小4
部首:⾹
9画
花
常用漢字
小1
部首:⾋
7画
“香”で始まる語句
香
香具師
香気
香港
香炉
香華
香奠
香爐
香水
香物