はり)” の例文
「女はもとはりの名人の圍はれ者だと言つたが、人の身體の鍼壺はりつぼは六百五十七穴、そのうち命取りの禁斷の鍼が一ヶ所あるといふことだ」
夜半に燈下に坐して、んで仮寝うたたねをしていると、恍惚のうちに白衣の女があらわれて、はりでそのひたいを刺すと見て、おどろき醒めた。
或日の夕ぐれ、いつもの如く夢ごゝろになりてゐたるが、ふと思ひ付きて、はりもて穿うがちたる紙片を目にあて、太陽を覗きはじめつ。
ギリシア語のアコケー(尖頂けんさき)、ラテンのアクス(はり)、アケル(迅速また鋭利また明察)、英語アキュート(鋭利)等からせんじ詰めて
入れました杉山流のものでござります。鳩尾きゅうびはりをお打たせになりましても、決して間違いのあるようなものではござりませぬ。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
深山氏を疑うとなれば、喋っていながら手を動かしてはりを突き立てるということになりますが、これは実行の出来ないことですよ
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この間の隅にはおおいなるはりがねのかごありて、そが中なる鸚鵡おうむ、かねて聞きしことある大隊長のことばをまねびしなりけり。
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「南無大師遍照金剛へんじょうこんごう」とせわしく唱えながら、ようやく太陽の昇ったのを見て、いそいで山をくだり、京都へ帰って、薬やはりの治療にいそしんだのである。
長塚節氏の『はりの如く』の中に「四日深更、月すさまじくえたり」という前書があって、「硝子戸を透してかやに月さしぬあはれといひて起きて見にけり」
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
大切に致しくらしける是よりは猶はりの療治も日々に繁昌はんじやうして諸家へもよばれ大岡殿へも時々療治に上りけるに其度々々に越前守殿にもちからそへて下され有難きことば
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かれが、つかれるとよくはりをさせたり体を揉ませている杉山検校すぎやまけんぎょうのことで、紀の国屋文左衛門と吉保とのあいだを紹介したものも検校であるといわれている。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すねはりでも刺されるようであったし、こむらは筋金でもはいっているようだった。顔は真赤まっかに充血して、ひたいや鼻や頬や、襟首からは、汗がぽたぽたとしたたり落ちた。
駈落 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
その他の日は、午前中だけ、自宅ではりとマッサージを申しわけのやうにやつた。
髪の毛と花びら (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
やりは降りても必ずべし、と震摺おぢおそれながら待たれし九日目の例刻になりぬれど、如何いかにしたりけん狂女は見えず。鋭く冱返さえかへりたるこの日の寒気ははりもてはだへに霜をうらんやうに覚えしめぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
石を外科的手術に即ちはりとして応用することは、日本の神代かみよから既に行はれて居たものらしく、支那へはこの術が日本から伝はつて行つたものであるとさへ一部の人々によりて考へられて居る。
毒と迷信 (新字旧仮名) / 小酒井不木(著)
或る一人の人が己の性命の時計のはりを前へ進めることを自分の特別な任務にしてゐるのである。その人のためには己の死が偶然の出来事では無くて、一の願はしい、殊更にち得た恩恵である。
復讐 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
医者の薬なんぞきはしない、どんなに偉い大学の先生にかかってもそう簡単に直るはずはない、それより私にお任せなさい、け合って直して上げる、私は指壓ばかりでなく、はりやいとも施術する
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
またはりには戻天るいてんといって一打ひとうちで人を殺す術があるということは聞いて居りますが、それまでの修業をいたしませんから、殺す方角がつきませんが、眼の前に吊下ぶらさがっている百両の金を取損とりそこなうのも残念と
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
霜はふる、しみじみとはりをもてかいさぐりゆく
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
此處には呼吸中樞や心臟鼓動中樞があり、はりや灸點の方でも、これを『生活點』と言つて、一針よく生命を斷つと言はれてゐるのです。
おどろきてかえりみれば、この間の隅にはおほいなるはりがねのかごありて、そが中なる鸚鵡おうむ、かねて聞きしことある大隊長のこと葉をまねびしなりけり。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
あの延髄えんずいを刺したはりだ。調べてみると指紋はあった。しかし細いはりの上にのったはばのない指紋なんて何になるのだ。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それらの者にははり、灸治、按摩あんま売卜ばいぼくの道など教えて、ともあれ職屋敷の制度下にいれば、何かの生業たつきと保護を得られ、そして穀つぶしなどとさげすまれるいわれもなくなった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
聞くと、どうして、思ったより出来ている、按摩はりの芸ではない。……戸外おもてをどッどと吹く風の中へ、この声を打撒ぶちまけたら、あのピイピイ笛ぐらいにまとまろうというもんです。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その時になりても、おん身は我側に坐して栗を燒き、又籃を搖りたることを思ひ給ふならん。言ひ畢りて、媼は我に接吻し、面を掩ひて泣きぬ。我心ははりもて刺さるゝ如くなりき。
きかれ夫は近頃ちかごろかたじけなし早速に呼寄よびよせ療治すべし其者は何所に居やと尋ねらるゝに勇右衞門其者儀そのものぎは長谷川町にまかあり名は城富と申して至つてはり功者こうしやに候と申けるにぞ越前守殿早々用人の山本新左衞門やまもとしんざゑもん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「それくらゐのことは誰でも知つてゐる——あれくらゐのことなら、はりきうの方でもわかつてゐる筈だよ」
誰があの暗黒あんこくのなかで、りにって非常に正確を要する延髄えんずいの真中にはりを刺しこむことが出来るだろうか。『赤外線男』という超人ちょうじんでなければ、到底とうてい想像し得られないことだった。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
実は時計のはりはどこにあるか、目にも留まらず意識にものぼらなかったのである。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「いえ、はりの方ださうで、——尤も檢校は嘘でございませう。唯の鍼醫者の流行はやり按摩あんまらしい話で、へエ」
俺は先刻はりきうことを訊きに行くと言つたらう。近所の鍼の名人で、巳之市みのいちといふのが居るんだ。
善七と仲直りしたと見せかけ、酒で性根を失はせて、急所に五寸といふ長いはりを打つたのです。
この界隈かいわいを流して歩く、佐の市という二十七八の男、物の黒白ぐらいは見えるようですが、按摩もはりもなかなかの上手な上、持前の愛嬌あいきょうのよさが手伝って、旦那衆にも可愛がられております。
灸点横町の多の市というのはお灸とはりの名人で、神田中に響いた盲人ですが、稼業の傍ら高利の金を廻し、吸い付いたら離れないからというので、蛸市と綽名あだなを取っているほど、したたか者だったのです。
灸點きうてん横町の多の市といふのはおきうはりの名人で、神田中に響いた盲人ですが、稼業のかたはら高利の金を廻し、吸ひ附いたら離れないからといふので、蛸市と綽名あだなを取つてゐるほど、したゝか者だつたのです。
「大層お肩が凝って居ります、はりを一本打って置きましょうか」
禁断の死針 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)