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重石
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おもし
ふりがな文庫
“
重石
(
おもし
)” の例文
死体があがらないといった、けさのひと言が
重石
(
おもし
)
になり、そうして立っていても、ぼんやりと青年の追憶にふけっている瞬間がある。
あなたも私も
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
それに対したのが気軽そうな
宗匠振
(
そうじょうぶり
)
。
朽色
(
くちいろ
)
の麻の衣服に、
黒絽
(
くろろ
)
の
十徳
(
じっとく
)
を、これも脱いで、矢張飛ばぬ様に
瓢箪
(
ひょうたん
)
を
重石
(
おもし
)
に据えていた。
悪因縁の怨
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
行きあう人の顔も、見おぼえがなかった。まるで遠い国へきたような心細さが、みんなの胸の中にだんだん、
重石
(
おもし
)
のようにしずんでいく。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
かの女のかぼそい首筋には巨大な
重石
(
おもし
)
が、ふっくりつぼみのように膨らんだかの女の
双乳
(
もろち
)
を隠すばかりに結びつけられてある。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
松の木の上からタクアンの
重石
(
おもし
)
のような石が落ちてきたり、自宅の前へきてヤレヤレと思うと屋根の上から大きな石がころがり落ちたりする。
明治開化 安吾捕物:13 その十二 愚妖
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
▼ もっと見る
たとえばれても、あの連中のことだから、平気の平左かもしれないが、死体にはしっかり
重石
(
おもし
)
をつけて、沖から投げこんだ。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
十二時頃ででもあったであろうか、ウトウトしかけていると、裏の井戸で、
重石
(
おもし
)
か何か墜ちたように
凄
(
すさ
)
まじい水音がした。
風琴と魚の町
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
義元の
帷幕
(
いばく
)
では、雷鳴のしているうちは、むしろ爽快として笑いどよめいていた。烈風が、ふき
募
(
つの
)
って来ても、四方の
幕
(
とばり
)
のすそに
重石
(
おもし
)
を置かせ
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
狭い日本に張りつめたこの
重石
(
おもし
)
は、先頃発表されたポツダム会議の決定によれば、直ちにとりのぞかれ、粉砕されるべきものとして示されている。
播州平野
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
そうして読み終ると
旧
(
もと
)
の通りに丁寧に折り畳んで、丸
卓子
(
テーブル
)
の真中に置いて、その上から角砂糖入れを
重石
(
おもし
)
に置いた。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
美濃紙
(
みのがみ
)
一枚に、学校のお清書の如く「公徳を重んぜよ」と大書して、夜になってその切取工事をしている所へ、四隅に
重石
(
おもし
)
をして拡げて置いたものである。
青バスの女
(新字新仮名)
/
辰野九紫
(著)
それが出来たら、鮨桶でも飯櫃でもいゝ、中をカラカラに乾かしておいて、小口から隙間のないように鮨を詰め、
押蓋
(
おしぶた
)
を置いて漬物石ぐらいな
重石
(
おもし
)
を載せる。
陰翳礼讃
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
この間に多治見の郎党ばらは、館の四方の門をかため、
閂
(
かんぬき
)
をかい
重石
(
おもし
)
を宛てがい、籠城の手筈をととのえた。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
泥鰌
(
どじょう
)
も百匁ぐらいずつ買って、猫にかかられぬように
桶
(
おけ
)
に
重石
(
おもし
)
をしてゴチャゴチャ入れておいた。十
尾
(
ぴき
)
ぐらいずつを自分でさいて、
鶏卵
(
たまご
)
を引いて煮て食った。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
天使たちが、お前を見すてなかったのね。……ああ、わたしの胸や肩から、この
重石
(
おもし
)
がとりのけられたら! わたしの過去を、きれいに忘れることができたら!
桜の園
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
何とかする段には仕方はいくらでもある。仕方が無ければ手も引込めて居るのだが、仕方が有るから手が出したくなる。然し氏郷という
重石
(
おもし
)
は可なり重そうである。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
まるで何かの犯罪が
重石
(
おもし
)
のように、わたしの魂にのしかかっているようなあんばいだった。
地下生活者の手記
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
砂利
(
じゃり
)
や
玉石
(
たまいし
)
は玉川
最寄
(
もより
)
から来るが、
沢庵
(
たくあん
)
の
重石
(
おもし
)
以上は上流
青梅
(
あおめ
)
方角から来る。一貫目一銭五厘の
相場
(
そうば
)
だ。
択
(
えら
)
んだ石を
衡
(
はかり
)
にかけさせて居たら、
土方体
(
どかたてい
)
の男が通りかゝって眼を
瞪
(
みは
)
り
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「この屋根は
半刻
(
はんとき
)
もめえからばきばきいってるんだ、おれがこうして
重石
(
おもし
)
になってるからいいようなもんの、おれがどいてみねえ、いっぺんにひん
捲
(
ま
)
くられて飛んでっちまうから」
赤ひげ診療譚:06 鶯ばか
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ある日、吉原公園の池の際にあった吉原の
鳶頭
(
とびがしら
)
の家の前で友達と遊んでいたときに、私はそこに転してあった土木作業に使う鉄の
重石
(
おもし
)
のようなものを、過って右足のうえに落した。
生い立ちの記
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
この暑さと云ったら暑さが
重石
(
おもし
)
に成って、人間を、ずんと上から
圧付
(
おしつ
)
けるようです。
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
重石
(
おもし
)
をつり下げたような腰部の鈍痛ばかりでなく、脚部は抜けるようにだるく冷え、肩は動かすたびごとにめりめり音がするかと思うほど固く凝り、頭の
心
(
しん
)
は絶え間なくぎりぎりと痛んで
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
それを
重石
(
おもし
)
を強くしてこうじでつけたもので、非常にうまい漬け物である。
かぶらずし
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
これがまた、父の伊太夫を喜ばすことは前述の如く、この暴女王の絶対権に支配されていた以前の小作たちから圧迫の
重石
(
おもし
)
を除いて、鬼のいぬ間という機会を与えた善根になるというものです。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
石松は死骸の傍に転がされた、
沢庵
(
たくあん
)
の
重石
(
おもし
)
ほどの石を指します。
銭形平次捕物控:148 彦徳の面
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
重石
(
おもし
)
で圧迫されてゐる
小熊秀雄全集-04:詩集(3)小熊秀雄詩集1
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
「白川幸次郎の妻」の一件は、二宮に知らせずに無事におさめたが、臨終の告知は、息苦しい
重石
(
おもし
)
になって心のなかに残った。
雲の小径
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
甲斐性
(
かいしょう
)
がなさすぎるではないか。二人とも小気な人間なのだ。しかも結局は女の側にだけ最後の
重石
(
おもし
)
がかかってくるのだ。
妻の座
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
農家の建築は一般に
木片
(
こつぱ
)
で葺いた屋根の上へまるで沢庵の
重石
(
おもし
)
のやうに人頭大の石を並べたものであるが、これは恐らく風雪の被害を避ける最も安直な手段なのだらう。
吹雪物語:――夢と知性――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
汝一人に
重石
(
おもし
)
を背負つて左様沈まれて仕舞ふては源太が男になれるかやい、詰らぬ思案に身を退て馬鹿にさへなつて居れば可いとは、分別が
摯実
(
くすみ
)
過ぎて
至当
(
もつとも
)
とは云はれまいぞ
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
……それはわたしの
頸
(
くび
)
に結えつけられた
重石
(
おもし
)
で、その道づれになってわたしは、ぐんぐん沈んで行くけれど、やっぱりその重石が思いきれず、それがないじゃ生きて行けないの。
桜の園
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
この心を見物衆の
重石
(
おもし
)
に置いて、
呼吸
(
いき
)
を練り、気を鍛え、やがて、
件
(
くだん
)
の白蔵主。
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この通りはからっ風が強いのか、ぼろ隠しのような布の下には
重石
(
おもし
)
がつけてある。石は囚人を縛るような
麻縄
(
あさなわ
)
でからげてある。
豚
(
ぶた
)
の
腹綿
(
はらわた
)
を焼いている煙が、もくもくと布の間から立ちのぼっている。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
石松は死骸の傍に轉がされた、
澤庵
(
たくあん
)
の
重石
(
おもし
)
ほどの石を指します。
銭形平次捕物控:148 彦徳の面
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
数馬さんとやらの死体の処置に困って、六平にそっとかつぎ出させ、このへんならまず
皀莢河岸
(
さいかちがし
)
、
重石
(
おもし
)
でもつけて濠の深みへ沈めたというわけ。よくあるやつですな。
顎十郎捕物帳:21 かごやの客
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
汝一人に
重石
(
おもし
)
を
背負
(
しょ
)
ってそう沈まれてしもうては源太が男になれるかやい、つまらぬ思案に身を
退
(
ひ
)
いて馬鹿にさえなって居ればよいとは、分別が
摯実
(
くすみ
)
過ぎて
至当
(
もっとも
)
とは云われまいぞ
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
と
頭
(
あたま
)
ごなしにやりつける身分になったが、ひっこみ思案のところへ、苦労性ときているので、権勢の
重石
(
おもし
)
におしひしがれ、失策ばかり恐れて、ほとほとに
憔
(
やつ
)
れてしまった。
無惨やな
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
鶴が
甲
(
かん
)
ばしった声でさけんだ。血走った眼で乾を睨みつけながら、妙に
重石
(
おもし
)
のついた声で
金狼
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「あたしが
重石
(
おもし
)
じゃ、あなたが、泳げそうもないから」
川波
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
その親切が
重石
(
おもし
)
になり、あるにあられぬ思いがした。
奥の海
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
そのひとことが、たいへんな
重石
(
おもし
)
になってしまった。
キャラコさん:10 馬と老人
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
“重石”の意味
《名詞》
タングステン酸塩鉱物の総称。
(出典:Wiktionary)
“重石(重し)”の解説
重し、重石(おもし、en: weight)とは、適度な質量を持った物体であって、その物体に働く重力(質量が及ぼす鉛直方向の力)を利用して使用するもののこと。
(出典:Wikipedia)
重
常用漢字
小3
部首:⾥
9画
石
常用漢字
小1
部首:⽯
5画
“重”で始まる語句
重
重畳
重宝
重々
重量
重荷
重立
重箱
重大
重陽