さい)” の例文
部隊部隊で、さいを振る風が鳴った。真っ黒な長い人馬が、奔流のように動きだした。しかし、目ざす地点は、大高の城ではなかった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ゐのしゝきばこさへました、ほんにさいでござります、御覧ごらうじまし。』と莞爾々々にこ/\しながら、てのひららしてせたところを、二人ふたり一個ひとつづゝつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
好く文学者の成功の事を、大いなる coupクウ をしたと云うが、あれはさいなげうつので、つまり芸術を賭博とばくに比したのだね。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
かれが決してバユワアル族(訳者註。バイエルン人の祖先)のたねでないことは、明らかだった——すくなくとも、かれの頭をおおっている、広いまっすぐなへりのついた皮帽は、かれの風さい
「へ、へ、へ、丁半はさいコロにかぎるて、なぐささい、じゃあるめえな」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
もうかくしの中のさいの目がわたくしの手をむずむずさせます。
辰三郎 (髪の中よりさいを出し捨てる)
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
わたしてのひらけさせて、ころりとつてせたのは、わすれもしない、双六谷すごろくだにで、夫婦ふうふ未来みらい有無ありなしかけやうとおもつてつたさいだつたんです。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その歩兵群を蹴ちらして、一騎、二騎、三騎——すべてで七、八騎の騎馬の武将がさいを振り、自身槍をふるい、また、声をからしてめぐっている。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さいの目はまだどう出るか、分からない。10295
其処そこ魔所ましよぢやとたかい。時々とき/″\やまくうつてしんとすると、ころころとさいげるおと木樵きこりみゝひゞくとやら風説ふうせつするで。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
部将を堂前によび集め、彼は、さいを持って、床几しょうぎにかかった。戦闘配置の命を降してゆく。——沈剛ちんごうな采配ぶり、さすがにまだ老いずの風はある。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どうぞすぐに旨いさいの目を出して
が、腰にたばさんでいるさいや太刀づくりは誰の眼にもただの部将とは見えない。どうしても大将である。しかも味方の内では見たこともない大将だ。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かちつたる秀吉ひでよし一騎驅いつきがけにうませると、こしよりさいいだし、さらりとつて、れは筑前守ちくぜんのかみぞや、又左またざ又左またざ鐵砲てつぱうつなと、大手おほて城門じやうもんひらかせた、大閤たいかふ大得意だいとくい場所ばしよだが
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
受けとって押しいただいた民部みんぶは、駕籠かごの上に立ったまま、八ぽうの戦機をきッと見渡したのち、おごそかに軍師ぐんしたるの姿勢しせいをとり、さいのさばきもあざやかに
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お仏壇は、蔦ちゃんが人手にゃ渡さねえ、と云うから、わっし引背負ひっしょって、一度内へけえったがね、何だって、お前さん、女人禁制で、蔦ちゃんに、さいふらせねえで、城を明渡すんだから、むずかしいや。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
卒は元より、小隊の組頭ぐらいなところでは、いつもいくさは行き当りばッたりだった。大局のことは何も分らないのである。たださいのうごくまま、号令によって血をかぶり、号令によって突きすすむ。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)