誤魔化ごまか)” の例文
町役人は人別帳を控えて、かねて家主から渡しておいた短冊形の切手と引換えですから、手数な代り誤魔化ごまかしも間違いも起りません。
新聞の漫画を見ていると、野良のむすこが親爺おやじの金を誤魔化ごまかしておいて、これがレラチヴィティだなどと済ましているのがある。
アインシュタインの教育観 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
川上の産ませた子を誤魔化ごまかして、秘密に里子にやってしまったということをきくと、そんな夫とは縁を断ってしまえと言出した。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
平気で誤魔化ごまかして行こうとしたりなさる御模様があったら、念のために書いて置きましたほかの一通を警察署へ出して頂きます。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ところが、そんなことをデカ/\と書いた直ぐ後から、いたる処で党が活動している。それはどう誤魔化ごまかしようにも誤魔化しがきかなかった。
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
まだ幼稚な者に向って、説いても無益と思いながら、武蔵には、少年に対しても、よいほどにものを誤魔化ごまかしておくということができない。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
曖昧あいまいな事を言って誤魔化ごまかしてしまおうとするのだが、造酒は、テッキリ園絵とばかり思いこんでいるので、深く追究もない。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
同じく用器とはいいますが、一時まに合せの誤魔化ごまかし物であって、用には極めて不忠実な粗悪なものとなっています。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
そこで苦し紛れに信州から養殖のはやを取り寄せ、利根で釣れたのですといって誤魔化ごまかしたところ、さなぎ臭いので直ぐ化けの皮が現われたという話である。
水と骨 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
「とてもはかり誤魔化ごまかすんですよ。薪屋はどうしても二十四斤半というのだけれど、私は二十三斤半で勘定してやればいいと思います。どうでしょうかね?」
幸福な家庭 (新字新仮名) / 魯迅(著)
「いや、それは何んでもありません。御心配なさいますな。何んでもありませんから。」と医師は誤魔化ごまかした。
花園の思想 (新字新仮名) / 横光利一(著)
もう僕とちがったものですから、虚飾にみちた自家広告も愛嬌あいきょうだと思い、続けて自己嫌悪を連ねようと考えたのですが、シェストフで、誤魔化ごまかして置きます。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
……大師流で手蹟はいいが、見てくればかりで品がねえ。筆蹟は人格を現すというが、いや、まったく、よく言ったもんだ、こればっかりは誤魔化ごまかせねえの。
顎十郎捕物帳:06 三人目 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
一種の誤魔化ごまかし句と言われても弁護の余地がないのである。其処の区別はよほど注意しなければならぬ。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
し其時落第せず、唯誤魔化ごまかしてばかり通って来たら今頃はんな者になって居たか知れないと思う。
落第 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
で、莫迦莫迦ばかばかしいようだが、ドイツは、盲人めくらに、よいように手紙を読んでやる長屋の悪書生みたいなり方で、アフガニスタンを誤魔化ごまかしてなにかせしめようとした。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
しかし、その時も、私たちの怒りは、おかみさんの不得要領な哀訴嘆願で誤魔化ごまかされて、しまった。
第三句までは序詞で、この程度の序詞は万葉には珍らしくないが、やはり誤魔化ごまかさない写生がある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
クラス講義の方は何とか誤魔化ごまかせたが、問題は夜の社交的という方である。新聞では八時から九時半ということになっていたが、とても一時間半はつとまりそうもない。
ネバダ通信 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
「賞与を誤魔化ごまかしたり俸給を匿したりするのは何処かにお金を使うところがあるからでございますわ。奥さまは村島さんから主人の噂を何かお聞きじゃございませんの?」
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
どうして己に、其れ程の小遣いがあるかと云うと、大きな声では云えないが、帳場の金を少しずつ誤魔化ごまかして居るのだ。買い物にやられる度毎に、己はこっそりと頭をはねる。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しかし、私は親の勝手な量見にへつらつたり、僞善的口吻こうふんを洩したり、または誤魔化ごまかしの後押しをしようと思つて書いてゐるのではない。私は、たゞ眞實を語らうとしてゐるのだ。
米国の西部海岸に備えつけられた水中聴音機や其の辺を游戈ゆうよくしている監視船、さては太平洋航路を何喰わぬ顔で通っている堂々たる間諜船舶かんちょうせんぱくの眼と耳とを誤魔化ごまかすためだったのだ。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「あなたひとりに身も世も捨てた」と云う小唄こうたをうたって、誤魔化ごまかして暮していた。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
将又はたまたファルスの発生なぞということについて一言半句の差出口を加えることさえ不可能であり、従而したがって、最も誤魔化ごまかしの利く論法を用いてやろうと心を砕いた次第であるが、——この言草いいぐさを、又
FARCE に就て (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
え、それじゃ女は薬を飲んでるのか、然し、おい、誤魔化ごまかしちゃいけねえぜ。薬を飲ませて裸にしといちゃ差引ゼロじゃないか、卵を食べさせて男に蹂躙じゅうりんされりゃ、差引欠損になるじゃないか。
淫売婦 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
「いや何、これは何んでもござらぬ」老師は透かさず誤魔化ごまかしにかかる。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そして、それが私の羞恥しゅうち誤魔化ごまかした。
麦藁帽子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
狼狽ろうばいした余り、娘はこう誤魔化ごまかした。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
弘 (笑って)うまく誤魔化ごまかした。
みごとな女 (新字新仮名) / 森本薫(著)
殺したに違いあるまい。うんにゃ、隠したって駄目だ。お上の眼はくらませても俺の眼は誤魔化ごまかせねえ。あの水の中で、しゃけのように腹を
極めて科学的な、絶対に誤魔化ごまかしの無い俯仰ふぎょう天地に恥じざる真実の記録と信ずる次第で……御座います……かね……ヤレヤレ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「うんにゃ、そうに違いねえ。うぬが隠し男を持っているので、なんとか、おれを甘口に乗せて誤魔化ごまかしていやがるのだろう」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
決して誤魔化ごまかしをやらない。「衣川の漆器は丈夫だという評判です」。そう村の人も話している。実に手堅い塗ということが、この衣川漆器の生命である。
陸中雑記 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「馬も悪くはないが、しかし、まあ一長一短というところだろうな。」あいまいに誤魔化ごまかした。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
二人の車掌が詰め寄るような勢いを示して声高こわだかにものを云っていた。「誤魔化ごまかそうと思ったんですか、そうじゃないですか。サア、どっちですか、ハッキリ云って下さい。」
雑記(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
下塗したぬやっこにでもまぎれ込んで八丁堀の眼を誤魔化ごまかすために、進んでここへ現れたのであろうか?
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
いま乾板現像液で茶色に染まってる手を出して、他人の賭金ステイキ誤魔化ごまかしてさらえ込もうとしている——AA! 何て素走すばしっこい事業でしょう! あたしはあの人を讃美します。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
「私、あなたなんかに誤魔化ごまかされませんわ。甘く見ていらっしゃるから、こらしめの為めよ」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
さいわい片側だけの見物で、象の血を見た人数にんずもあまりたんとではない。さまざまに世話役が骨を折り、舁役かきやくが怪我をしたのだと誤魔化ごまかしてようやくおさまりをつけてホッと胸を撫でおろす。
結句の「も」は「さを鹿鳴くも」の「も」に等しい。万葉にはこの種類の歌がなかなか多いが皆相当なものだというのは、実質的で誤魔化ごまかさぬのと、奥に恋愛の心をひそめているからであるだろう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
石川孫三郎の顔は硬張こわばりました。何と言おうと、どう誤魔化ごまかそうと、この悪戯いたずらは、屋敷内に住んでいる者の仕業でなければなりません。
そうしてそのお話というのは大抵、校友会費に関係した事ばかりで、お二人でその誤魔化ごまかし方を熱心に研究なさるのでした。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
武蔵は、その彫りに向って、技巧を心得ている玄人くろうとではない。また、賢い逃げ道や、上手らしい小刀のあとをつけて誤魔化ごまかしてゆく方法を知らない。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも自家使うちづかいのものや、特別の注文による品は念入りに作られます。これに対し儲けるために粗製濫造らんぞうした商品の方には、誤魔化ごまかしものが多くなります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
大阪の天王寺てんのうじの五重塔が倒れたのであるが、あれは文化文政頃の廃頽期はいたいきに造られたもので正当な建築法に拠らない、肝心な箇所に誤魔化ごまかしのあるものであったと云われている。
颱風雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ことさら僕が国籍を誤魔化ごまかしたわけではなく、全体、はじめて口を利いたとき、リンピイが頭からお前は支那公チンクだろうと決めてかかって来たので、正誤するのも面倒くさかったし
石川孫三郎の顏は硬張こはばりました。何と言はうと、どう誤魔化ごまかさうと、この惡戯いたづらは、屋敷内に住んでゐる者の仕業しわざでなければなりません。
叔父はそうした旧悪に対する一種の自白心理を利用して私たちを誤魔化ごまかそうと試みているので、友丸伊奈子と私とはその実、タネ違いの兄妹きょうだいとも
鉄鎚 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
すこしも、はばかるには当らんじゃないか。武士は武士、町人は町人、おのずからの立場がある。正道を踏むというのは、その立場に揺ぎや誤魔化ごまかしのないことを云うのだ
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)