言草いいぐさ)” の例文
「君、いろんな言草いいぐさしてくれたまえ。君が友人として僕をいたわってくれた段は実に感謝する。それが好意というものだろう。」
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
彼は節子が長い長い沈黙から——彼女自身の言草いいぐさではないが、まるで口業くごうでも修めていたかのような沈黙から動き変って来て
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しかし滑稽とか真面目まじめとか云うのは相手と場合によって変化する事で、高飛びその物が滑稽とは理由のない言草いいぐさである。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
アグリでなくてもアの字をつけると次に男が生れるという言草いいぐさがある。それもそうかと赤ん坊はアグリとつけられた。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
ほかの餓鬼がざるに一ぱい遣るうちに、己は二はい遣るのだ。百姓びっくりしやぁがった。そして言草いいぐさが好いや。里芋の選分えりわけは江戸の坊様に限ると抜かしやぁがる。
里芋の芽と不動の目 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
くうくう」だとか、内部ないぶだとか、外部がいぶだとか、苦痛くつうや、たいする軽蔑けいべつだとか、真正しんせいなる幸福こうふくだとか、とこんな言草いいぐさは、みなロシヤの怠惰者なまけもの適当てきとうしている哲学てつがくです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
チェーホフは勿論もちろん満足だったに違いない。彼自身の言草いいぐさにしたがえば「医学部を出て以来の懸案だった学位論文」が、科学にのみならず直接社会に寄与したのである。
だが、余りと云えば突拍子とっぴょうしもない言草いいぐさではないか。一体全体何の理由があって、何の恨みがあって。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
鶴見の経験から推量しての言草いいぐさであるが、それを手離しでひっ込めようとする気にはなれない。
串戯だよ、串戯だけれどもねえ、その位にさばけておくれだと、それこそお前さんの言草いいぐさじゃあないが、誰も冷かしたり、なぶったりなんぞしないようになっちまうわね。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかしそれも「赤外線男」事件が本当に解決され、その主人公がマスクをかなぐり捨てたときのの大きなおどろきと奇妙な感激とを思えば、一見思わせたっぷりなこの言草いいぐさ
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
人はかかる言草いいぐさを耳にせばただち栄耀えいようの餅の皮といひつべし。されど芸術を味ひ楽しむ心はもと貧富の別に関せず。深刻の情致じょうちは何事によらずかへつて富者の知らざる処なり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
夜はけて人の通行ゆききまれになっていたから四辺あたりきわめて静に僕の靴の音、二人の下駄の響ばかり物々しゅう反響していたが、先刻さっきの母の言草いいぐさが胸にこたえているので僕も娘も無言
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「何だと、この若造! やい、みんな聞いたか、今のこの野郎の言草いいぐさを聞いたか」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
将又はたまたファルスの発生なぞということについて一言半句の差出口を加えることさえ不可能であり、従而したがって、最も誤魔化ごまかしの利く論法を用いてやろうと心を砕いた次第であるが、——この言草いいぐさを、又
FARCE に就て (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
これは弘化こうか年度に生れて今まで存在ながらえている老人としより言草いいぐさのように聞えます。
離婚について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
それが反対あべこべに西洋にはこういう例があるの日本の医者がこういうのと悪い言草いいぐさの種ばかり覚えて今更お代をイヤがるとはもってのほかだ。おれたちが相談ずくでめたのだ。イヤもオーもあるものか。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
じゃなんですか、昨日わっちがお話しやした一件……、ヘヽヽヽヽはゞかりながら先生、左様そう申すと口巾くちはゞッてえ言草いいぐさでげすが、ごろッちゃらして居アがる野郎の二三人引摺ひきずって来りゃア訳のねえことでさア
なぜお前そんな知れ切っている言草いいぐさをおいいだい。
御雛様おひなさまに芸者のきがないと云って攻撃するのは御雛様の恋をかいせぬものの言草いいぐさである。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ここにゐる兼吉さんから委細の話はじきにあるはず、一口に申せば何でもない事、ただもう清さん恋しやほうやれほといふやうなわけと、何だか分りにくい言草いいぐさに兼吉気の毒がり、一中もう沢山
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
もうそんな幼稚な言草いいぐさたまえ。僕は教授と真面目まじめに話した。どうしても正確なところを聞かなくてはならない理由があるのだという事を、向うにみ込ませたのだ。詰まり親戚しんせきの処分だねえ。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
それに、はじめお雪さんを無理強いにした言草いいぐさが、私の内の楓の樹で、それをお雪さんがひどかばってらさなかったからこんなことが起ったんだってね、……そしてなぜ楓の樹を伐らさなかったろう。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あの時は、ついあんなわけで、口上の言草いいぐさしゃくに触るから」
「バ、馬鹿ッ。それが親に対する言草いいぐさか」
夢遊病者の死 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
わたしには気取った言草いいぐさは出来ない。
生徒の言草いいぐさもちょっと聞いた。追って処分するまでは、今まで通り学校へ出ろ。早く顔を洗って、朝飯を食わないと時間に間に合わないから、早くしろと云って寄宿生をみんな放免ほうめんした。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
米友は昨晩の女の言草いいぐさを思い出して腹を立てました。
ませた言草いいぐさで歓楽や事業を