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茅屋
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ぼうおく
ふりがな文庫
“
茅屋
(
ぼうおく
)” の例文
私は、あの頃のまゝの姿で、今や追はれ追はれて、名前も知らなかつた東京のとある郊外の
茅屋
(
ぼうおく
)
に、仮屋して佗しい日を送つてゐる。
環魚洞風景
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
余がむかし
越後
(
えちご
)
にいて、ある田舎の妖怪屋敷を探検したことがある。その家は大なる
茅屋
(
ぼうおく
)
にして、裏には深林と墓場とがあるのみだ。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
茶室は
茅屋
(
ぼうおく
)
に過ぎない——茶室の簡素純潔——茶室の構造における象徴主義——茶室の装飾法——外界のわずらわしさを遠ざかった聖堂
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
靄
(
もや
)
に隔てられてぼんやり見えてるゴチック式の塔のある小さな町を、
茅屋
(
ぼうおく
)
の立ち並んでる丘を、霜氷に白くなって湯気の立ってる牧場を。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
……それは
藁葺
(
わらぶ
)
きの
茅屋
(
ぼうおく
)
で、裏の方には汚らしい牛小屋だの、鳥や鵞鳥を入れて庇のようなものがついている。内部は二間に仕切られていた。
大衆文芸作法
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
▼ もっと見る
亀井戸
(
かめいど
)
の
金糸堀
(
きんしぼり
)
のあたりから
木下川辺
(
きねがわへん
)
へかけて、水田と立木と
茅屋
(
ぼうおく
)
とが趣をなしているぐあいは武蔵野の
一領分
(
いちりょうぶん
)
である。ことに富士でわかる。
武蔵野
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
ただプツプツとけむるばかり、
煙
(
けむり
)
は
茅屋
(
ぼうおく
)
のまわりにただようている。源四郎はそれにもかかわらず、どしどしといやがうえにごみをのせかける。
告げ人
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
『お小夜どの。今、
茅屋
(
ぼうおく
)
から取って来たこの
備前長船
(
びぜんおさふね
)
は、自慢ではないが、すばらしく斬れますぞ。御安心なさるがよい』
夏虫行燈
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この間、僕は東京郊外の
茅屋
(
ぼうおく
)
に
蟄居
(
ちっきょ
)
して、息づまる思いで世の激しい転変を
眺
(
なが
)
めていた。東京はおおかた
廃墟
(
はいきょ
)
と化した。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
彼はその特産植物誌と銅版と植物標本と紙ばさみと書物とを持って、サルペートリエール救済院の近くに、オーステルリッツ村の
茅屋
(
ぼうおく
)
に居を定めた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
余はもとより日本全体の利益と幸福とを目的として議論をなすものなり。しかれどもその議論の標準なるものはただ一の
茅屋
(
ぼうおく
)
中に住するの人民これなり。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
舞台には
渓流
(
けいりゅう
)
あり、
断崖
(
だんがい
)
あり、
宮殿
(
きゅうでん
)
あり、
茅屋
(
ぼうおく
)
あり、春の
桜
(
さくら
)
、秋の
紅葉
(
もみじ
)
、それらを取り取りに生かして使える。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
薄倖多病の才人が都門の栄華を
外
(
よそ
)
にして
海辺
(
かいへん
)
の
茅屋
(
ぼうおく
)
に
松風
(
しょうふう
)
を聴くという仮設的哀愁の生活をば、いかにも
稚気
(
ちき
)
を帯びた調子でかつ
厭味
(
いやみ
)
らしく飾って書いてある。
夏の町
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
茅屋
(
ぼうおく
)
も金殿玉楼と思いなして
訪
(
と
)
いおとずれた、その当時はまだ若盛りであった、明治文壇の諸先輩の名をつらねることも、忘れてならない一事だろうと、ほんの
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
照りはせぬけれども
穏
(
おだ
)
やかな花ぐもりの好い暖い日であった。三先輩は
打揃
(
うちそろ
)
って
茅屋
(
ぼうおく
)
を
訪
(
と
)
うてくれた。
野道
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
大「何はなくとも折角の
御入来
(
ごじゅうらい
)
、
素
(
もと
)
より斯様な
茅屋
(
ぼうおく
)
なれば別に
差上
(
さしあげ
)
るようなお
下物
(
さかな
)
もありませんが、
一寸
(
ちょっと
)
詰らん支度を申し付けて置きましたから、一口上ってお帰りを」
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
打
(
うち
)
うめかれしをお
出入
(
でいり
)
の
槖駝師
(
たくだし
)
某
(
それ
)
なるもの
承
(
うけたま
)
はりて、
拙郎
(
やつがれ
)
が
谷中
(
やなか
)
の
茅屋
(
ぼうおく
)
せき
入
(
い
)
れし
水
(
みづ
)
の
風流
(
みやび
)
やかなるは
無
(
な
)
きものから、
紅塵千丈
(
こうじんせんぢやう
)
の
市中
(
まちなか
)
ならねば
凉
(
すゞ
)
しきかげもすこしはあり
たま襻
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
都会の新式の家にすむ知識階級の母親から、農村の
茅屋
(
ぼうおく
)
にすんでいる母親まで、赤ん坊や
幼児
(
おさなご
)
の強い自力に気がついていないことにおいては、全然同一ではないかと思われます。
おさなごを発見せよ
(新字新仮名)
/
羽仁もと子
(著)
黙々とした
茅屋
(
ぼうおく
)
の黒い影。銀色に浮かび出ている竹藪の闇。それだけ。わけもなく簡単な黒と白のイメイジである。しかしなんという言いあらわしがたい感情に包まれた風景か。
温泉
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
かなり古い家らしく壁は
剥
(
は
)
げ落ち、柱は虫に食われ、ほとんど修理の仕様も無いほどの
茅屋
(
ぼうおく
)
を買いとって自分に与え、六十に近いひどい赤毛の醜い女中をひとり附けてくれました。
人間失格
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
大隈、徳川、鍋島、前田、三井、岩崎など、当時の華族の御曹司も、なかなか熱心なファンぞろいで、私の
茅屋
(
ぼうおく
)
へ自動車を乗りつけて、近所のおかみさんを、びっくりさせる人もあった。
胡堂百話
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
本所
業平
(
なりひら
)
の
陋巷
(
ろうこう
)
、なめくじばかりやたらにいる
茅屋
(
ぼうおく
)
にいて、その大きい大きいなめくじはなんと塩をかけると溶けるどころかピョイと首を振ってその塩を振り落としてしまうというのである。
随筆 寄席囃子
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
立派なシナ商人の邸宅が土人の
茅屋
(
ぼうおく
)
と対照して何事かを思わせる。
旅日記から
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
僕が頭を下げて行った先々の人間達は、いわゆるフォイエルバッハの
大邸宅
(
だいていたく
)
と名づけられるような、中では
茅屋
(
ぼうおく
)
にある場合と違った考えを人達はしているものだ、で、全くもってムザンでありすぎる。
魚の序文
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
茶室(
数寄屋
(
すきや
)
)は単なる小家で、それ以外のものをてらうものではない、いわゆる
茅屋
(
ぼうおく
)
に過ぎない。数寄屋の原義は「好き家」である。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
「まあ
宜
(
よろ
)
しいではございませぬか、この見苦しい
茅屋
(
ぼうおく
)
へ、お嬢様からお運び下さるなんて、光栄とも
冥加
(
みょうが
)
至極
(
しごく
)
とも、いいようのない
欣
(
うれ
)
しさでござる」
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
宮廷のそれも
茅屋
(
ぼうおく
)
のそれも、ヘクーバから
鵞鳥婆
(
がちょうばあ
)
さんまで(訳者注 イリヤッドと千一夜物語の中の老婆)
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
その
茅屋
(
ぼうおく
)
を結ぶにはみずから木挽・大工・石工・泥匠とならざるべからざるところのかのロビンソン・クルーソーを学ばざるべからざらしめたり。それかくのごとし。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
茅屋
(
ぼうおく
)
のほとりにある大きな枯れた
叢
(
くさむら
)
は、長い年代のために消えてしまってる燃ゆる
荊
(
いばら
)
であった。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
家が焼けかかって幸いに消しとめたる場合には、仮に小さき
茅屋
(
ぼうおく
)
の形を造ってこれを焼く。そのことを火返しと申している。また、屋根瓦の中に
獅子
(
しし
)
の
面貌
(
めんぼう
)
をなせるものがある。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
片側は広く開けて
野菜圃
(
やさいばたけ
)
でも続いているのか、其間に折々小さい
茅屋
(
ぼうおく
)
が点在している。他の片側は立派な丈の高い塀つづき、それに沿うて小溝が廻されている、
大家
(
たいか
)
の裏側通りである。
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
自分は二十九年の秋の初めから春の初めまで、
渋谷
(
しぶや
)
村の小さな
茅屋
(
ぼうおく
)
に住んでいた。自分がかの望みを起こしたのもその時のこと、また秋から冬の事のみを今書くというのもそのわけである。
武蔵野
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
見る蔭もない
茅屋
(
ぼうおく
)
に
佗住居
(
わびずまい
)
を致して居ります、此の
後
(
ご
)
とも幾久しく……
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
郿塢城
(
びうじょう
)
へお還りある日は、満城を挙げて、お慰みを捧げましょうが、また時には、
茅屋
(
ぼうおく
)
の粗宴も、お気が変って、かえってお慰みになるかと思われます。
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その道程の間彼は、何をなし、何を考えていたか? 朝の時と同じく、樹木や、
茅屋
(
ぼうおく
)
の屋根や、耕された畑や、道を曲がるたびに開けてゆく景色の変化を、ながめていた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
それ驕奢品なるものは必要品の需用を飽かしめたるののちにおいてすべし。いまだ
茅屋
(
ぼうおく
)
のうちにありて大門
高墻
(
こうしょう
)
を作るものあらず。いまだ飢餓に瀕して羊肉・葡萄酒を
沽
(
か
)
うものあらず。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
余が十勝にてアイヌの
茅屋
(
ぼうおく
)
をたずねたときに、中央の炉の中に、木を削りて造りたる
御幣
(
ごへい
)
のごときものを立ててあった。彼らはこれを神として崇拝しているらしい。また、彼らは熊を神と申している。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
「一睡のうちに、かかる神雲が、
茅屋
(
ぼうおく
)
の
廂下
(
しょうか
)
に降りていようなどとは、夢にもおぼえず、まことに、無礼な態をお目にかけました。どうか、悪しからず」
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
最後に一つの戸口すなわち一つの開き口だけを持ってる
茅屋
(
ぼうおく
)
が三十四万六千戸あります。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
それは軒低い貧しげなこぢんまりした
茅屋
(
ぼうおく
)
であって、正面にぶどう棚がつけられていた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「門前に、父が出て、お待ちしておりまする。——あの
茅屋
(
ぼうおく
)
でございます」
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
『大坂見物の折には、
茅屋
(
ぼうおく
)
を宿として下さい。角の芝居にも近いし』
梅颸の杖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
茅
漢検準1級
部首:⾋
8画
屋
常用漢字
小3
部首:⼫
9画
“茅屋”で始まる語句
茅屋根
茅屋婆
茅屋破窓
茅屋親爺