船底ふなぞこ)” の例文
「ぶく/\やりたけりやへえつたはうがえゝや」船頭せんどうはそつけなくいつておもむろにさをてる。船底ふなぞこさはつてつて身體からだがぐらりとうしろたふさうつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
其外、向ふ島の花はもう駄目になつた、横浜にある外国船の船底ふなぞこ大蛇だいぢやつてあつた、だれが鉄道でかれた、ぢやないかと云ふ。みんな新聞に出た事ばかりである。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
はて艇舷ふなべり材木ざいもくでも打碎うちくだいて、にしてまんかとまで、馬鹿ばかかんがへおこつたほどで、つひれ、船底ふなぞこまくらよこたはつたが、その空腹くうふくため終夜しうやねむこと出來できなかつた。
わからなくてもたたかわねばならぬ、自分ひとりではない、ここに三人がいる、船底ふなぞこにはさらに十一人の少年がいる、同士どうしのためにはけっして心配そうな顔を見せてはならぬのだ。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
遺憾いかんながら電文の前の方は聞きもらしましたので途中からでありますが、こんなことを打ってきました。“——船底ふなぞこガ大破シ、浸水しんすいハナハダシ。沈没マデ後数十分ノ余裕シカナシ。
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わがきみをはじめ、一どうはしきりに舟子達かこたちはげまして、くる風浪ふうろうたたかいましたが、やがてりょうにんなみまれ、残余のこりちからつきて船底ふなぞこたおれ、ふねはいつくつがえるかわからなくなりました。
あれ/\、其の波頭なみがしらたちま船底ふなぞこむかとすれば、傾く船に三人が声を殺した。途端に二三じゃくあとへ引いて、薄波うすなみ一煽ひとあおり、其の形に煽るやいなや、人の立つ如く、空へおおいなるうおが飛んだ。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
俺は何船なにぶねだろうかと思って、傍へ往ってみると、顔のあかい男が出て来て、好い物を見せてやろうと云うから、うっかり船へあがって往くと、そのまま船底ふなぞこへやほうり込まれてれて来られた
宇賀長者物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そして毎年まいとし船をどっさり仕立てまして、その船底ふなぞこかわくときもなく、さおかいの乾くまもなもないほどおうかがわせ申しまして、絶えず貢物みつぎものたてまつり天地がほろびますまで無久むきゅうにお仕え申しあげます
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
村のとっつきの小さな波止場はとばでは、波止場のすぐ入り口で漁船がてんぷくして、くじらの背のような船底ふなぞこを見せているし、波止場にはいれなかったのか、道路の上にも幾隻いくせきかの船があげられていた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
船底ふなぞこの水をかなしみ
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
船底ふなぞこぎんのやうなみづたまつてるのをた。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)