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自嘲
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じちょう
ふりがな文庫
“
自嘲
(
じちょう
)” の例文
死ぬるばかりの猛省と
自嘲
(
じちょう
)
と恐怖の中で、死にもせず私は、身勝手な、遺書と称する一
聯
(
れん
)
の作品に凝っていた。これが出来たならば。
十五年間
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
もち前のとり澄まし方に、じっと
堪
(
た
)
えていた泰子は、忠盛が、
自嘲
(
じちょう
)
を発すると、むかと、顔に血をうごかして、すぐ反撥して来た。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
詩を書いていた時分に対する回想は、未練から
哀傷
(
あいしょう
)
となり、哀傷から
自嘲
(
じちょう
)
となった。人の詩を読む興味もまったく失われた。
弓町より
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
自嘲
(
じちょう
)
したり、自惚たりしているうちに、ようやく
陶然
(
とうぜん
)
と酔ってきた。——そして、いつの間にかグッスリ睡ったものらしい。
疑問の金塊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「親子
相愛
(
そうあい
)
生活の姿は可愛いな」と賞めるかたわら、その
本能的
(
ほんのうてき
)
かつ盲目的なることにおいて、我々はあまり鳥後に落ちないと
自嘲
(
じちょう
)
したくなる。
親は眺めて考えている
(新字新仮名)
/
金森徳次郎
(著)
▼ もっと見る
当然自己のものになしうるはずの人を主君にゆずった自分は広量なものだと
嫉妬
(
しっと
)
に似た心で
自嘲
(
じちょう
)
もし、
羨望
(
せんぼう
)
もしていた。
源氏物語:04 夕顔
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
深喜の顔が
自嘲
(
じちょう
)
に歪み、眼がするどく、
苛立
(
いらだ
)
たしげに光った。彼は立って納戸をあけ、手文庫の中から紙入れを出した。中に一分と、少しあった。
花も刀も
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
あらゆる
自嘲
(
じちょう
)
の
独白
(
モノローグ
)
をくり返しながら、いつの間にやらその『醜悪』な空想をすでに一つの計画のように考え慣れてしまった、そのくせ相変わらず
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
こうした
日蔭者
(
ひかげもの
)
の気楽さに
馴
(
な
)
れてしまうと、今更何をしようという野心もなく、それかと言って自分の愚かさを
自嘲
(
じちょう
)
するほどの感情の
熾烈
(
しれつ
)
さもなく
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
あう——ウア!
欠伸
(
あくび
)
の合唱、源三郎の欠伸と門之丞の欠伸とがいっしょだったので、源三郎
自嘲
(
じちょう
)
的な笑いを洩らし
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
これもその時兄さんの口から出た
自嘲
(
じちょう
)
の言葉でした。はたして兄さんは着いた晩からして、やかましい隣室の客を我慢しなければならなくなりました。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
自嘲
(
じちょう
)
的な口調でいってその手紙を悠吉の方にすべらせた。悠吉がよむ間に机の上の辞苑をぱらぱらとめくった。
妻の座
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
M君は標準語と土地言葉をチャンポンにしながら、
自嘲
(
じちょう
)
を交ぜたこの土地人らしい
豪傑風
(
ごうけつふう
)
なわらい方をした。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
同時にそういう御自分を
自嘲
(
じちょう
)
せられるような、いかにも痛々しい感じのするお便りばかりをいただいていた。
楡の家
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
しかし、すぐそのあとにかれの心をおそったものは、めいるようなさびしさであり、
虚無的
(
きょむてき
)
な
自嘲
(
じちょう
)
であった。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
「愚に耐えよ」という言葉は、
自嘲
(
じちょう
)
でなくして
憤怒
(
ふんぬ
)
であり、悲痛なセンチメントの
調
(
しらべ
)
を帯びてる。蕪村は極めて温厚篤実の人であった。しかもその人にしてこの句あり。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
(
自嘲
(
じちょう
)
的に)「とまあいった次第で、つまりそのありまして、そのう、ええと……」
かもめ:――喜劇 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
傾いた家運を
自嘲
(
じちょう
)
するように、常右衛門の唇には、淡い淋しい笑いが浮びました。
銭形平次捕物控:065 結納の行方
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
蓬莱町まで行きながら又引き返して来た自分のぶざまな恰好を私は
自嘲
(
じちょう
)
した。
風宴
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
末期的江戸
気質
(
タイプ
)
を充分にもった、ものわかりはよいが深い考えのない、
自嘲
(
じちょう
)
的皮肉に富んだ、気軽で、人情深くユーモアな彼は、なんとしても自分が法律なんぞという畑の人間でないことを
旧聞日本橋:21 議事堂炎上
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
何んの、と、すては
自嘲
(
じちょう
)
してにが笑いをして見せた。
舌を噛み切った女:またはすて姫
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
こんどは、
哄然
(
こうぜん
)
たる声を、官兵衛は暗やみへ放った。そして詩でも吟じるがごとく、
自嘲
(
じちょう
)
の感を、ひとり壁に向って云っていた。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
自嘲
(
じちょう
)
的な思いに眠りなどにははいりきれなかった源氏は物音にすぐ目をさまして人の近づいて来るのを知ったのである。
源氏物語:07 紅葉賀
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
兄さんは御自分の顔の黒いのを、時々
自嘲
(
じちょう
)
なさっているが、僕は、兄さんのように浅黒くて陰影の多い顔を好きだ。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「こっちはその金を六つ取って、一つ返すような馬鹿ときている」横になって彼は
自嘲
(
じちょう
)
するよう呟やいた
七日七夜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
丁度我が石川
啄木
(
たくぼく
)
が、自分で詩人であることを
自嘲
(
じちょう
)
しつつ、生涯慰められないで詩を書いていた。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
それは
後悔
(
こうかい
)
でもあり、
自嘲
(
じちょう
)
でもあり、
怒
(
いか
)
りでもあった。かれは浴室に立ちこめた
濃
(
こ
)
い
湯気
(
ゆげ
)
の中にじっと
裸身
(
らしん
)
を
据
(
す
)
え、ながいこと、だれの眼にも見えない
孤独
(
こどく
)
の
狂乱
(
きょうらん
)
を演じていたのである。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
自嘲
(
じちょう
)
して、お酒をまた一口のんで、長いまばらな
黄歯
(
きば
)
を出して見せて
旧聞日本橋:11 朝散太夫の末裔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
と思わず左膳が、
自嘲
(
じちょう
)
に似たつぶやきを洩らした
刹那
(
せつな
)
!
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
自嘲
(
じちょう
)
が、苦々しく心に浮んで来た。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
惨
(
さん
)
として独り
注
(
つ
)
いでは飲み、注いでは飲み、やがてその大酔を
自嘲
(
じちょう
)
に
交
(
ま
)
ぜて、思わずも一詩を胸に
醸
(
かも
)
していた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お民は客を送りだして、あと片付けに戻ったまま、小窓に
倚
(
よ
)
って、
自嘲
(
じちょう
)
するようにこう
呟
(
つぶや
)
いた。
初蕾
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
田舎者と笑われはせぬかと幾度となく
躊躇
(
ちゅうちょ
)
した後、とうとう一部、うむと決意し、ことさらに乱暴な
自嘲
(
じちょう
)
の口調で買い求め、それを懐中し
荒
(
すさ
)
んだ歩きかたで下宿へ帰った。
東京八景:(苦難の或人に贈る)
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
封を切る時に、かすかながらもある期待をかけていた自分の
甘
(
あま
)
さに対する
自嘲
(
じちょう
)
が、そのにがさと冷たさとを倍加した。かれの眼は、しかし、そうであればあるほど
鋭
(
するど
)
く手紙の上に光っていた。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
信長は、
自嘲
(
じちょう
)
をもって、自身のつぶやきを結んだ。しかし一たん噛みしめていた唇をひらくと、かたわらにいた佐久間右衛門にたいして、こういう
酷命
(
こくめい
)
を
冷
(
ひや
)
やかに下した。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
君は、そんな
自嘲
(
じちょう
)
の言葉で人に甘えて、君自身の怠惰と傲慢をごまかそうとしているだけです。ちょっと地味に見えながらも、君ほど自我の強い男は、めったにありません。
風の便り
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「だが——」と平八はそこで
自嘲
(
じちょう
)
するように唇を
歪
(
ゆが
)
め、足がこれではね、と低い声で笑った。
花も刀も
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
世辞よく、馬から降りて、そこで利家の顔を見ると、まず
自嘲
(
じちょう
)
するように、こう大声で云った。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「お笑いぐさだな」と彼は
自嘲
(
じちょう
)
するように云った、「こんなときに風邪をひくなんて」
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
屡々
(
しばしば
)
、自分で何をかいたのか
呆
(
あき
)
れる有様。近頃の句一つ。
自嘲
(
じちょう
)
。歯こぼれし口の
寂
(
さぶ
)
さや三ッ日月。やっぱり四五日中にそちらに行ってみたく思うが
如何
(
いかが
)
? 不一。黒田重治。太宰治様。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「年貢だけに頼っていては、武家の経済はやってゆけなくなる。なにか他に年収のみちを計らなければならない、そう考えた手始めにやってみたのだが」甲斐は
自嘲
(
じちょう
)
するように云った
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ときどき
自嘲
(
じちょう
)
なさいますけれど、このごろは仕事も多く、百円、二百円と、まとまった大金がはいって来て、せんだっても、伊豆の温泉につれていっていただいたほどなのに、それでもあの人は
皮膚と心
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
『……ふ、ふ。そうか。それだけのものか』と、
自嘲
(
じちょう
)
して——
夏虫行燈
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「まだ自然だけは生きていますからね」と竹中は
自嘲
(
じちょう
)
するように口を歪めた
おごそかな渇き
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それは、つねに
自嘲
(
じちょう
)
を抱いて生きている人の声のようだった。
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「めそめそしてみせればよかったのか」忠太は
自嘲
(
じちょう
)
するように唇を
歪
(
ゆが
)
めた
源蔵ヶ原
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼は、
自嘲
(
じちょう
)
をもらして、どこか淋しげに意中を語った。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「甘くみすぎたのが悪かったのよ、だって疑わしいようなところはこれっぱかしもないんだもの」おしのは
自嘲
(
じちょう
)
するように、鼻の頭へ
皺
(
しわ
)
をよせた。「——それなによ、また子供へ縫ってやるのね」
雪と泥
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
一歩一歩、階を降りつつ、彼は
自嘲
(
じちょう
)
を抱いていた。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
やけでも、
自嘲
(
じちょう
)
でもなく、自分の気持を正直に述べたのである。
あだこ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
“自嘲”の意味
《名詞》
自 嘲(じちょう)
自分自身を嘲ること。
(出典:Wiktionary)
自
常用漢字
小2
部首:⾃
6画
嘲
常用漢字
中学
部首:⼝
15画
“自嘲”で始まる語句
自嘲的
自嘲心
自嘲癖