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腐爛
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ふらん
ふりがな文庫
“
腐爛
(
ふらん
)” の例文
これはみな、
宋朝
(
そうちょう
)
腐爛
(
ふらん
)
の悪世相が、
下天
(
げてん
)
に描きだしつつある必然な
外道
(
げどう
)
の図絵だ——。これを人心の
荒
(
すさ
)
びと嘆くも、おろかであろう。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
下人
(
げにん
)
は、それらの死骸の
腐爛
(
ふらん
)
した臭気に思わず、鼻を
掩
(
おお
)
った。しかし、その手は、次の瞬間には、もう鼻を掩う事を忘れていた。
羅生門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そのために無数の口碑が伝わっている。あらゆる種類の幽鬼がその長い寂しい地郭に住んでいる。至る所に
腐爛
(
ふらん
)
と悪気とがある。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
その中に遺骸は直ちに自宅へ引取るはずだったが、余り
腐爛
(
ふらん
)
しているので余儀なく直ちに火葬場へ送棺したと知らせて来た。
最後の大杉
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
死後数日を経た
腐爛
(
ふらん
)
死体は、何とも云えぬ悪臭を放って、触ればズルズルと皮膚がめくれて来そうで、着物を脱がせるのにひどく骨が折れた。
恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
そこにはもはや、永久の暗黒と窒息とがあるのみである。しかも外部に置かれた者すらも、内部より発散する
腐爛
(
ふらん
)
の気に悩まされざるを得ない。
ジャン・クリストフ:01 序
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
二人とも死後二、三週間ばかりと推定されましたが、ジーナの方は、スパセニアと違って見るから無残に
腐爛
(
ふらん
)
して……。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
間もなく二梃の鍬は、
腐爛
(
ふらん
)
してしまつた男の死骸を一つ掘り出しました。町役人を呼んで、丸屋に使ひをやると、お留と要吉が飛んで來ます。一と目
銭形平次捕物控:102 金蔵の行方
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
泥と血とで成った惨めな人間、いたずらな努力を尽して生命を取り止めようとしても、生命は刻々に
腐爛
(
ふらん
)
してゆく。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
春
(
はる
)
になつて
雪
(
ゆき
)
も
次第
(
しだい
)
に
解
(
と
)
けた
或日
(
あるひ
)
、
墓場
(
はかば
)
の
側
(
そば
)
の
崖
(
がけ
)
の
邊
(
あたり
)
に、
腐爛
(
ふらん
)
した二つの
死骸
(
しがい
)
が
見付
(
みつ
)
かつた。
其
(
そ
)
れは
老婆
(
らうば
)
と、
男
(
をとこ
)
の
子
(
こ
)
とで、
故殺
(
こさつ
)
の
形跡
(
けいせき
)
さへ
有
(
あ
)
るのであつた。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
大方
(
おおかた
)
痒
(
かゆ
)
いのだろうけれども、たださえあんなに赤くなっているものを、こう
擦
(
こす
)
ってはたまるまい。遠からぬうちに
塩鯛
(
しおだい
)
の眼玉のごとく
腐爛
(
ふらん
)
するにきまってる。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は十六日間責め通されてなお改宗を
肯
(
がえん
)
じないのだ。彼の全身は
悉
(
ことごと
)
く
腐爛
(
ふらん
)
し、口も眼も鼻も
癩
(
らい
)
患者のようにただれ、彼より発する
堪
(
た
)
え難い悪臭が恐ろしく鼻をつく。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
手短かに言えば、死体が急速に
腐爛
(
ふらん
)
するように想像されたので、葬儀は急いで行われたのであった。
早すぎる埋葬
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
馬のような屍体、犬猫のような屍体、そして人間のような屍体、屍体はみな
腐爛
(
ふらん
)
して
蛆
(
うじ
)
が湧き、
堪
(
たま
)
らなく臭い。それでいて水晶のような液をたらたらとたらしている。
桜の樹の下には
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
のみならず、焼け残りの部分が様々な恰好で、焦土の所々に黄色く残っているところは、ちょうど焼死体の
腐爛
(
ふらん
)
した皮膚を見るようで、薄気味悪く思われるのだった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
最早ジョンの死体は死因を確かめることが出来ぬほどに半ば
腐爛
(
ふらん
)
していた。別に打撲傷というようなものもなかった。竹駒様の
祟
(
たた
)
りだ!
部落中
(
むらじゅう
)
にそんな
噂
(
うわさ
)
が起こった。
或る部落の五つの話
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
その子が生きていたときとおなじようなたわむれをされながら、その肉が
腐爛
(
ふらん
)
するのをおしんで、肉を食い骨をしゃぶって、とうとうすっかり食いつくしてしまったのです。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
蛆
(
うじ
)
や蠅に取りつかれている
腐爛
(
ふらん
)
した「死体」ではないか、そんな不気味さを感じた。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
順作は恐ろしいが見ずには往けないので、こわごわ入って往って人びとの間から
覗
(
のぞ
)
いた。そこには一つの
瓶
(
かめ
)
を横に倒した処に見覚えのあるお
召
(
めし
)
羽織
(
はおり
)
を着た女の
腐爛
(
ふらん
)
した死体が横たわっていた。
藍瓶
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
腐爛
(
ふらん
)
してゆく肉体のことが、わたくしの念頭につきまとって、どうしても離れません。たとえその肉体は腐っていても、在りし日の面影は認められるであろう。わたくしにはそんな気がいたしました。
墓
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
誰がこの
腐爛
(
ふらん
)
した状態から工藝を救い起すであろう。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
その肉塊はそれほど損傷し、
腐爛
(
ふらん
)
していた。
日本に於けるクリップン事件
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
晩秋の十日間では、まだ形がくずれる程
腐爛
(
ふらん
)
はしていない。だが、腐爛よりも、うじ虫よりももっと恐ろしい現象が、二つの死体に起っていた。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
天下一統の大業を完成して、後漢の代を興した光武帝から、今は二百余年を経、宮府の内外にはまた、ようやく
腐爛
(
ふらん
)
と
崩壊
(
ほうかい
)
の
兆
(
ちょう
)
があらわれてきた。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
見ると、
猪熊
(
いのくま
)
の小路のあたり、とある
網代
(
あじろ
)
の
塀
(
へい
)
の下に
腐爛
(
ふらん
)
した子供の
死骸
(
しがい
)
が二つ、裸のまま、積み重ねて捨ててある。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
間もなく二梃の鍬は、
腐爛
(
ふらん
)
してしまった男の死骸を一つ掘り出しました。町役人を呼んで、丸屋に使いをやると、お留と要吉が飛んで来ます。一と目
銭形平次捕物控:102 金蔵の行方
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
春
(
はる
)
になって
雪
(
ゆき
)
も
次第
(
しだい
)
に
解
(
と
)
けた
或日
(
あるひ
)
、
墓場
(
はかば
)
の
側
(
そば
)
の
崖
(
がけ
)
の
辺
(
あたり
)
に、
腐爛
(
ふらん
)
した二つの
死骸
(
しがい
)
が
見付
(
みつ
)
かった。それは
老婆
(
ろうば
)
と、
男
(
おとこ
)
の
子
(
こ
)
とで、
故殺
(
こさつ
)
の
形跡
(
けいせき
)
さえあるのであった。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
彼はまだ墓地へはいろうと決心することができないでいた。彼は幼い時からその
腐爛
(
ふらん
)
の畑地に
嫌悪
(
けんお
)
を感じていて、愛する人々の面影をそこに結びつけることが嫌だった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その恐ろしい
腐爛
(
ふらん
)
の地域を探険しようという考えは、警察の人々にも起こらなかった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
しかし、フランスの輝かしい空気を呼吸することによって祖国の重苦しい空気を忘れんとした彼は、いわゆる光の国の主都パリーにおいて何を見出したか。それは
腐爛
(
ふらん
)
した文明の臭気であった。
ジャン・クリストフ:01 序
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
もうひどく
腐爛
(
ふらん
)
して血魂が固まりついている死骸が、そこにいた人々の眼前にすっくと立った。その頭の上に、赤い口を大きくあけ、爛々たる
片眼
(
かため
)
を光らせて、あのいまわしい獣が
坐
(
すわ
)
っていた。
黒猫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
日没の、血紅の雲をうつしてまっ赤に染った沼土は、さながら
腐爛
(
ふらん
)
物のごとく毒々しく美しい。と、彼のからだがスイと浮き木を離れ、ずぶりと泥にはまったかと思うと、たちまち見えなくなった。
人外魔境:05 水棲人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
(自分の
屍
(
かばね
)
は、都の西郊に捨てて、世の
色餓鬼
(
いろがき
)
たちの見せ物に与えてください。
腐爛
(
ふらん
)
したわたくしの
亡
(
な
)
きがらを見た人は、おそらく何か考えることがありましょう)
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その暴風は久しい前から準備されたものだった。低級な思想、卑しい妥協、また彼が数か月来住んでいた
腐爛
(
ふらん
)
空粗な
雰囲気
(
ふんいき
)
などにたいして、早晩反動が来るべきであった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
下人は、それらの屍骸の
腐爛
(
ふらん
)
した臭氣に思はず、
鼻
(
はな
)
を掩つた。しかし、その手は、次の
瞬間
(
しゆんかん
)
には、もう鼻を掩ふ事を忘れてゐた。或る強い
感情
(
かんじやう
)
が、殆悉この男の嗅覺を奪つてしまつたからである。
羅生門
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
これで地に人間の争いがなく、
宋朝
(
そうちょう
)
の
政
(
まつり
)
に
腐爛
(
ふらん
)
さえなければ、この世はそっくり天国なのだが。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それを消そうと努める害悪な
息吹
(
いぶ
)
きに反抗して、必死に守っているのだ——異人種どもの
腐爛
(
ふらん
)
した
雰囲気
(
ふんいき
)
を周囲に感じながら、常に孤独であって、彼らから
蠅
(
はえ
)
の群れのように思想によりたかられ
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
建武いらい武家はむかしの
下種
(
げす
)
とみなされ、公卿専横の御支配もすでに
腐爛
(
ふらん
)
の状にある。みちのく、北陸、
五畿
(
ごき
)
、山陰山陽、武家の不平の声なき所はなく、九州とても
鬱勃
(
うつぼつ
)
は久しかろう。
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
紅蓮の下にも、白蓮の根元にも、
腐爛
(
ふらん
)
した人間の死骸がいっぱいだよ。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
琵琶亭そのものも人間も、すべては現実の
腐爛
(
ふらん
)
と濁流中のものだった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“腐爛”の意味
《名詞》
腐ってただれること。
(出典:Wiktionary)
腐
常用漢字
中学
部首:⾁
14画
爛
漢検1級
部首:⽕
21画
“腐爛”で始まる語句
腐爛目
腐爛美
腐爛氣味