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端倪
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たんげい
ふりがな文庫
“
端倪
(
たんげい
)” の例文
「とにかく、正面を見ただけでは、
解
(
わか
)
り
難
(
にく
)
い人だ。柔和かと思えば剛毅、無策かと思えば遠謀家。あの隠居だけは、
端倪
(
たんげい
)
できぬ」
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
絢爛
(
けんらん
)
たる才気と洗錬された趣味と該博な知識とを
有
(
も
)
った・
端倪
(
たんげい
)
すべからざる才人だった。しかも彼は何を為したか? 何事をもしなかった。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
この受身の形は対象に統一を与える判断力を養っている準備期であるから、力が満ちれば
端倪
(
たんげい
)
すべからざる黒雲を
捲
(
ま
)
き起す。
厨房日記
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
大体に於て、極点の華麗さには妙な悲しみがつきまとうものだが、秀吉の足跡にもそのようなものがあり、しかも
端倪
(
たんげい
)
すべからざる所がある。
日本文化私観
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
修容正粛ほとんど
端倪
(
たんげい
)
すべからざるものありしなり。されど一たび大磐石の根の覆るや、小石の転ぶがごときものにあらず。
琵琶伝
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
そうして始終黙々と机に
凭
(
よ
)
って、不機嫌そうに眉をしかめて居るばかりなので、貝島にはちょっと此の少年の性格を
端倪
(
たんげい
)
することが出来なかった。
小さな王国
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
帰って来たかと思うと、たちまち出発——いつもながら、
端倪
(
たんげい
)
すべからざる伊賀の暴れん坊の行動に、安積玄心斎をはじめ一同はあっけにとられて
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
若しこの數節の分解にして、甚しき過謬なきものとするときは、逍遙子が用語の變通自在にして逍遙子が立言の
殆
(
ほとんど
)
端倪
(
たんげい
)
すべからざりしを知るに足らむ。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
鴎外はそれらの諸徳を一身に集めていたように、或る時は信じていたでもあろうが、それもまたあの
端倪
(
たんげい
)
すべからざるあそびの変貌であったに違いない。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
またトリックにしても、あまりに凝りすぎて尋常な読者にはとうてい
端倪
(
たんげい
)
すべからざるようなのも
香
(
かぐわ
)
しくない。
現下文壇と探偵小説
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
ドリスが
端倪
(
たんげい
)
すべからず、
涸渇
(
こかつ
)
することのない生活の喜びを持っているのが、こんな時にも発揮せられる。
世界漫遊
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ユリウス・ダビット
(著)
木の生えた岩石の島がちらばって、ジグ・ザグの小半島が無数に突出し、
端倪
(
たんげい
)
すべからざる角度に両側から迫っている。ところどころに石油のタンクが見える。
踊る地平線:05 白夜幻想曲
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
大名の上屋敷、中屋敷、合せて五百六十、これに最少四人二分を乗じただけの人数が、顎十郎の手足のように働くとしたら、これまた一種
端倪
(
たんげい
)
すべからざる勢力である。
顎十郎捕物帳:05 ねずみ
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
冥々
(
めいめい
)
のうちに作家チェーホフを支え導いていた
端倪
(
たんげい
)
すべからざる芸術的
叡知
(
えいち
)
の存在を明かすとともに、この叡智の発動形式の一端に私達を触れさせて
呉
(
く
)
れることである。
チェーホフの短篇に就いて
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
鈴木君の去来は、まことに
端倪
(
たんげい
)
すべからざるものであったが、一転する毎に
箔
(
はく
)
をつけ、貫禄を供え、社会運動の闘士として大きくクローズアップされるようになったのである。
随筆銭形平次:18 平次読む人読まぬ人――三人の政治家――
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
しかのみならず、今利他本位でやってるかと思うと、
何時
(
いつ
)
の間にか利己本位に変っている。言葉だけは
滾々
(
こんこん
)
として、
勿体
(
もったい
)
らしく出るが、要するに
端倪
(
たんげい
)
すべからざる空談である。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかし仔細に点検して来ると、その鬼神も
端倪
(
たんげい
)
すべからざる痛快的逸話の中にも
牢乎
(
ろうこ
)
として動かすべからざる翁一流の信念、天性の一貫しているところを明白に認める事が出来る。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
けれども我われがいま直面している問題は、国家と国民ぜんたいの興亡に関するんだ、極めて強大な、然も
端倪
(
たんげい
)
し難いほど複雑な意図をもって、西欧諸国の触手が我われを
囲繞
(
いにょう
)
している
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
もし物質間の引力が距離によらず同一であったり、あるいは距離の大なるほど大であったと仮定したら、天地万物の運動はすべて人間には
端倪
(
たんげい
)
する事の出来ぬ
渾沌
(
こんとん
)
たるものになるであろう。
方則について
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
ゴルフは重役連中丈けの娯楽で下積みの
端倪
(
たんげい
)
すべきところでないが、社長が一番強いらしい。玉突きも天狗で、屋敷に玉突台を三つまで備えている。社長の将棋については、同僚の畑君が
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
ほとんど人をしてそのゆえんを
端倪
(
たんげい
)
すべからざらしむるのありさまとなれり。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
何うも容易に
端倪
(
たんげい
)
することが出来ない。
不思議な鳥
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
私は田園の長い夜道を
辿
(
たど
)
り乍ら、改めて
歎息
(
たんそく
)
に似た自卑と共に、世に母親ほど
端倪
(
たんげい
)
すべからざるものはないと教えられた。
母
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
一方の鐘巻自斎はまたより以上の驚嘆をもって重蔵を
端倪
(
たんげい
)
した。今の青年剣客に珍らしい
慥
(
たし
)
かさ、まさに上泉伊勢の面影を見るような太刀筋であると思った。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
四十にして家を
成
(
な
)
さず
去就
(
きょしゅう
)
つねならぬ泰軒の乞食ぶりには忠相もあきれて、ただその
端倪
(
たんげい
)
すべからざる動静を、よそながら微笑をもって見守るよりほかはなかった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
呑気なような、ほとんど
端倪
(
たんげい
)
すべからざる、たとえば
竜
(
りょう
)
のごとき否、むしろ大雨に就いて竜を黙想しつつありしがごとき、奇体なる人物は、
渾名
(
あだな
)
を
外道
(
げどう
)
と
称
(
とな
)
えて、名誉の
順風耳
(
じゅんぷうに
)
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
わが共同の邸宅に招き一
夕
(
せき
)
盛大なる晩餐会を催すにつき、食堂、玄関、便所の嫌いなく満堂国花をもって埋むべし、という、例によって例のごとき、
端倪
(
たんげい
)
すべからざるタヌが
咄嗟
(
さっそく
)
の思い立ち。
ノンシャラン道中記:02 合乗り乳母車 ――仏蘭西縦断の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
人間の運命というものは
迚
(
とて
)
も
端倪
(
たんげい
)
出来ない。
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
殆ど
端倪
(
たんげい
)
すべからざるものあり。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「こうなると、やっぱり、馬春堂先生の
易断
(
えきだん
)
も、ちょっと
端倪
(
たんげい
)
すべからざるものだろう。おほん」
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それまではこの夜の雪をさながらにまんじ
巴
(
ともえ
)
、去就ともに
端倪
(
たんげい
)
すべからざる渦乱であった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「それゃ何ともいえねえ。浜村屋のやり方は
端倪
(
たんげい
)
すべからずですからなア」
平賀源内捕物帳:萩寺の女
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
こうして彼の領有は、一躍、
四川
(
しせん
)
漢川
(
かんせん
)
の広大な地域を見るにいたり、いまや蜀というものは、江南の呉、北方の魏に対しても、断然、
端倪
(
たんげい
)
すべからざる一大強国を成した。
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
華々
(
はなばな
)
しい遊覧地も数多くあるものを、何を
選
(
よ
)
り好んで、
辺鄙
(
へんぴ
)
閑散、いたずらに悠長な、このような絶海の一孤島へ到着したかといえば、これまた、
端倪
(
たんげい
)
すべからざるタヌの主張によったもので
ノンシャラン道中記:01 八人の小悪魔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
すでに両国が修好を締結するまえ数年に
亙
(
わた
)
って、信越国境では三度も彼と激戦を交えているので、越後勢の精鋭、謙信の
端倪
(
たんげい
)
すべからざるものであることは充分に心得ているが
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
諏訪
(
すわ
)
ヶ
原
(
はら
)
の城を攻めて、これを一時奪回したり——小山城の急変に駈けて、たちまち
矛
(
ほこ
)
を転じ、駿河に火を放って、家康を急襲せんと試みたり——とにかく
端倪
(
たんげい
)
できないものがなおあった。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
どうして、どうして、決して
端倪
(
たんげい
)
するわけにゆきません。海を
倒
(
さかしま
)
にし、江を翻す弁才があります。丞相の
著
(
あらわ
)
されたかの孟徳新書をたった一度見ただけで、経をよむごとく、
暗誦
(
そらん
)
じてしまいました。
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そう簡単に
端倪
(
たんげい
)
すべき者ではない。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“端倪”の意味
《名詞》
端倪(たんげい)
事の本末終始。かぎり。はて。
(多くは成句「端倪すべからず」の形で)はかり知ること。推しはかること。
(出典:Wiktionary)
端
常用漢字
中学
部首:⽴
14画
倪
漢検1級
部首:⼈
10画
“端”で始まる語句
端
端折
端書
端緒
端唄
端然
端近
端々
端居
端艇