をさな)” の例文
同時に、まだ電灯が普及しない時分、かゝる薄暗い灯火の光をたよりに自分はをさない恋の小説を書き始めた昔の追憶に打沈められる。
海洋の旅 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
大久保の子供達は皆をさない。それがすつかり大人になるまで婆さんは生き伸びる積りでゐるらしい。大変な事を約束したものだ。
それから思ひ切つて武士を捨て、をさないお前の手をひいて、すみ馴れた郡山の土地を離れる時は、おれも流石にさびしいやうな心持がしないでもなかつた。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
汝の思ひのをさなきをみて我のほゝゑむをあやしむなかれ、汝の足はなほいまだ眞理の上にかたく立たず 二五—二七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
鶴子はやつと下げ髪から替へたての、まだ何処どこか身につかない可笑をかしな感じのする束髪に結つた娘だつた。彼女は十七で、見かけよりはずつとをさなげであつた。
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
されど其道を過ぎんには、わがをさなき頃より夢に見つる馬籠まごめ驛の翠微すゐびは遂に一目をも寓するあたはざるなり。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
ロミオ はて、そのねらひはづれた。戀愛神キューピッド弱弓よわゆみでは射落いおとされぬをんなぢゃ。處女神ダイヤナとくそなへ、貞操ていさうてつよろひかためて、こひをさな孱弱矢へろ/\やなぞでは些小いさゝか手創てきずをもはぬをんな
一六一此の浦回うらわの波に身を投げしことを、世の哀れなるためしとて、いにしへの人は歌にもよみ給ひてかたり伝へしを、翁がをさなかりしときに、母のおもしろくかたり給ふをさへ
船から見て行く島根半島の方に私達の話頭を轉じ、國讓りの故事を語り、事代主ことしろぬしの神の昔を語り、この世がまだ暗く國もをさなかつたといふ遠い神代の傳説の方へ私達の心を連れて行くのは野村君だ。
山陰土産 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
彼の鬼臉こはもてなるをいとをさなしとかろしめたるやうに、間はわざと色をやはらげて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
こはいかにせん/\しうとめにいひわけなしとなみだしづくにふらせてなきけるが、我もともにと松明たいまつを川へなげ入れ身をなげんとしつるが、又おもへらく、わがなきあとはおいたる母さまとをさなどもらをやしなふものなく
諏訪すはのうみの田螺たにしを食へばみちのくにをさなかりし日おもほゆるかも
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
をとめ子の紅牙こうげの尺は花鳥はなとりの目もあてにしてをさなかりけり
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
時しもあれや、徒然つれ/″\ゑひをさなき心に浮び
をさなき心の夢のひらきぬれば
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
今の英国皇太子がまだをさなかつた頃、ある日その雑誌棚の前へ来て、多くの写真帖のなかから『各国民元首帖』といふのを引張り出してじつと見てゐた。
をさなき女そのほか空しきはかなきものの矢を待ちて翼をひくく地に低るべきにあらざりき 五八—六〇
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
都の人も見ぬをうらみに聞え侍るを、我が身をさなきより、人おほき所、あるは道の長手ながてをあゆみては、必ず二五五のぼりてくるしき病あれば、二五六従駕みともにえ出で立ち侍らぬぞいとうれたけれ。
晝貌は晝もあはれや容貌みめ清きをさなどちゐて草に坐りぬ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
汝よくかれらを見かれらに耳を傾けなば、顏やをさなき聲によりてよくこれをさとるをえむ 四六—四八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
延若の政岡が風炉ふろ先きの屏風にひしと身を寄せて忍び泣きをしてゐると、「をさなけれども天然に太守の心備はつ」た筈の延宝の鶴千代が、この頃の寒さに、ついこらへかねて小便しゝたくなつた事だ。
昼貌は昼もあはれや容貌みめ清きをさなどちゐて草に坐りぬ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
敵なりや、をさな
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
敵なりや、をさな
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
をさなきは
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)