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相容
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あいい
ふりがな文庫
“
相容
(
あいい
)” の例文
想うに
貨殖
(
かしょく
)
に長じた富穀と、人の物と我物との別に重きを置かぬ、
無頓着
(
むとんじゃく
)
な枳園とは、その性格に
相容
(
あいい
)
れざる所があったであろう。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
然るが故に社会百般の現象時として甚だ
相容
(
あいい
)
れざるが如きものありといへども
一度
(
ひとたび
)
その
根柢
(
こんてい
)
に
窺
(
うかが
)
ひ
到
(
いた
)
れば必ず一貫せる脈絡の存するあり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
案内記が系統的に完備しているという事と、それが読む人の感興をひくという事とは全然別な事で、むしろ往々
相容
(
あいい
)
れないような傾向がある。
案内者
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
他と自分とを水と油の関係に置いて分離し、新理想主義の極致たる、世界人類を以て連帯責任の共存生活体と見る精神と
相容
(
あいい
)
れないものです。
激動の中を行く
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
いかに自分の意見と
相容
(
あいい
)
れぬ
法螺
(
ほら
)
を吹かれても、またその法螺が、単に自分を誘致するためにする打算的の法螺であっても
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
いや、この二つの快不快は全然
相容
(
あいい
)
れぬものではない。
寧
(
むし
)
ろ
鹹水
(
かんすい
)
と淡水とのように、一つに
融
(
と
)
け
合
(
あ
)
っているものである。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
さて、そんなわけで、理論的にも実際的にも、マルクシズム=共産主義と、絶対的平和主義とはまったく
相容
(
あいい
)
れない。
清水幾太郎さんへの手紙
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
国体と
相容
(
あいい
)
れない、ある種の思想を抱懐していた、という臆説さえ一部には流布され、信じられていた位である。
霧の蕃社
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
是を中心に組織せられ経営せられ、それと
相容
(
あいい
)
れない地方の慣行は、少なくとも説明のしにくいものになった。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
もしも、あのドスト氏が、罪と罰をシノニムと考えず、アントニムとして置き並べたものとしたら? 罪と罰、絶対に相通ぜざるもの、氷炭
相容
(
あいい
)
れざるもの。
人間失格
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
兵器の進歩と、戦争の惨状を軽減せんとする企てとは、明らかにこれ
今代
(
きんだい
)
に於ける国際関係中、一の大なる矛盾である。両者到底
相容
(
あいい
)
るべからざるものである。
世界平和の趨勢
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
持明院統と、大覚寺統とは、帝位をはさんで、その臣下まで、真二つに対立し、百年、
相容
(
あいい
)
れぬ間である。
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
二つの
相容
(
あいい
)
れない心は、どちらかがどちらかを
斃
(
たお
)
さねば
止
(
や
)
まないような状態にまでなっていた。私はこれを知っていた。私は父のところを去ろうと思っていた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
体を動かしているということも、眠っているという考えとは
相容
(
あいい
)
れないものであった。——静かに、しかし絶えず同じ調子で、体を左右にゆすっているのである。
アッシャー家の崩壊
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
彼は節子と自分の間に見つけた新しい心が、その真実が、長いこと自分の考え苦しんで来た
旧
(
ふる
)
い道徳とは
相容
(
あいい
)
れないものであることを知って来た。人生は大きい。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
狂信的なイスラム教(回教)と
相容
(
あいい
)
れないばかりか、これを
冒涜
(
ぼうとく
)
する性質さえ持っていたために、ペルシアにおけるイスラム教勢力が衰えた最近代にいたるまでは
ルバイヤート
(新字新仮名)
/
オマル・ハイヤーム
(著)
それが当年
六十路
(
むそじ
)
あまりのおばアさんとは、
反目
(
はんもく
)
嫉視
(
しっし
)
氷炭
(
ひょうたん
)
相容
(
あいい
)
れない。何ということ無しにうつらうつらと面白く無い日を送って、そして名の知れない重い枕に
就
(
つ
)
いた。
白い光と上野の鐘
(新字新仮名)
/
沼田一雅
(著)
元来試験官と受験者は
氷炭
(
ひょうたん
)
相容
(
あいい
)
れない。先方は意地悪い小面倒なことを
択
(
え
)
りに択って訊くのだから、
此方
(
こっち
)
も、そら、先刻の英語の
句
(
フレーズ
)
のように、出来る丈け高く命を売るのさ
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
一から十までが干渉好きの親分肌の矢野次郎の実業
一天張
(
いってんばり
)
の方針と
相容
(
あいい
)
れるはずはなかった。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
また今日往々宗教の目的を個人的救済にあるかに考え、国家道徳と
相容
(
あいい
)
れないかの如く思うのも、宗教の本質を知らないからである。宗教の問題は個人的安心にあるのではない。
絶対矛盾的自己同一
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
老子とその徒および揚子江畔自然詩人の先駆者
屈原
(
くつげん
)
の思想は、同時代北方作家の無趣味な道徳思想とは全く
相容
(
あいい
)
れない一種の理想主義である。老子は西暦紀元前四世紀の人である。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
弟がある小雑誌の音楽批評を担任することになったので、以前よりも多少よい席に、しかしはるかに
相容
(
あいい
)
れない聴衆の間に、二人はすわっていた。舞台のそばの管弦楽席であった。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
あるいは東、あるいは西といえば
如何
(
いか
)
にも両者の間に
懸隔
(
けんかく
)
あるように
聞
(
きこ
)
ゆる。文章家はかくの如き文字を用いて
相容
(
あいい
)
れざる
差
(
さ
)
を示す。かの有名な
詩篇
(
しへん
)
の内にも西と東の
隔
(
へだ
)
たる如く
云々
(
うんぬん
)
とある。
東西相触れて
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
この第二および第三の徴表は、第一の徴表たる「媚態」と一見
相容
(
あいい
)
れないようであるが、はたして真に相容れないであろうか。さきに述べたように、媚態の原本的存在規定は二元的可能性にある。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
元来政治的にも思想的にも国粋的ユダヤ主義者たるパリサイ人とは
相容
(
あいい
)
れない反対派であったが、今イエス・キリストの権威ある出現により、この両派が手を握ってイエスに対し共同の敵となり
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
しかもその併立せるものが一見反対の趣味で
相容
(
あいい
)
れぬと云う事実も認め得るかも知れぬ——批評家は反対の趣味も同時に
胸裏
(
きょうり
)
に蓄える必要がある。
作物の批評
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
いわば「両雄の胸に
秘
(
かく
)
された私の
情
(
じょう
)
」は——
今生
(
こんじょう
)
相容
(
あいい
)
れぬ敵——と尊氏を呼んでいた正成の方にもあった。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
つまり二つの種類のちがったイーゴイストはこの点で到底
相容
(
あいい
)
れる事ができなかったのであろう。
備忘録
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
況
(
いわ
)
んや当時の友だちは一面には
相容
(
あいい
)
れぬ死敵だった。彼は彼の頭脳を武器に、絶えず彼等と格闘した。ホイットマン、自由詩、創造的進化、——戦場は
殆
(
ほとん
)
ど
到
(
いた
)
る所にあった。
大導寺信輔の半生:――或精神的風景画――
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
枕山は年いまだ四十に至らざるに
蚤
(
はや
)
くも時人と
相容
(
あいい
)
れざるに至ったことを悲しみ、それと共に後進の青年らが
漫
(
みだり
)
に時事を論ずるを聞いてその
軽佻
(
けいちょう
)
浮薄なるを
罵
(
ののし
)
ったのである。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
なにかひどく
異様
(
ウトレ
)
なところ——たとえそれをやった奴が人間のなかでもっとも凶悪な奴と想像してみても、なにか人間業という普通の考え方とはまるで
相容
(
あいい
)
れないもの——があることを
モルグ街の殺人事件
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
そして元老の頭というものは到底国民の自由思想と一致する見込のないものである。家庭における現在の姑と若夫婦との思想も元老と国民とのそれのように全く
相容
(
あいい
)
れないものかも知れない。
姑と嫁について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
もうとっくに大同団結を
遂
(
と
)
げている様子で、さきに日本に亡命して来た康有為一派の改善主義は、孫文一派の民族革命の思想と
相容
(
あいい
)
れず、康有為はひそかに日本を去って欧洲に旅立ったらしく
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
秀麿だって、ヘッケルのアントロポゲニイに連署して、それを自分の告白にしても好いとは思っていない。しかしお父う様のこの詞の奥には、こっちの思想と
相容
(
あいい
)
れない何物かが潜んでいるらしい。
かのように
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
要するに
相容
(
あいい
)
れない為めに相容れないのである。
心のアンテナ
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
こういうふうに、互いに
相容
(
あいい
)
れうる範囲内でのあらゆる段階に分化された諸相がこの狭小な国土の中に包括されているということはそれだけでもすでに意味の深いことである。
日本人の自然観
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
写生文家もこう極端になると全然小説家の主張と
相容
(
あいい
)
れなくなる。小説において筋は第一要件である。文章に苦心するよりも背景に苦心するよりも趣向に苦心するのが小説家の当然の義務である。
写生文
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「——わが殿尊氏とは、
永劫
(
えいごう
)
、
相容
(
あいい
)
れぬ敵だと仰せなされますか」
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
将来の有声映画製作者にとってはこの二つの
対蹠的
(
たいせきてき
)
な現象の分析的研究が必要となるであろう。この二つのものはしかし必ずしも互いに
相容
(
あいい
)
れないものではないように私には思われるのである。
映画雑感(Ⅰ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
相
常用漢字
小3
部首:⽬
9画
容
常用漢字
小5
部首:⼧
10画
“相”で始まる語句
相
相手
相違
相応
相好
相撲
相談
相槌
相貌
相模