現場げんじょう)” の例文
私たちは時を移さず現場げんじょうへ急行しました。死体はそのままになっておりましたから、俊夫君は非常に喜んで捜索に取りかかりました。
墓地の殺人 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
一、現場げんじょうには見分けられる程の足跡もなく、短剣の外には別段遺留品もなく、その短剣の柄には、一ヶの指紋すら発見出来なかった。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
と云うのは、現場げんじょうドアと鍵でとざされていたにもかかわらず、艇内をくまなく探しても、八住を刺した凶器が発見されなかったのである。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
下田が気をきかして非常に事務的にたち働いたために、現場げんじょうは少しも乱されず、死体は発見されたときのままに保存されていた。
誰が何故彼を殺したか (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
「先生、強い道具でとおっしゃっても、それを見ていた人間の話によると、道具はおろか、現場げんじょうには犬一匹いなかったそうです」
○○獣 (新字新仮名) / 海野十三(著)
元来が荒事あらごとに慣れない、無類の臆病者の吉之介は兇行後、現場げんじょうの恐ろしさにふるえ上がって一旦は逃げ出して附近の安宿に泊った。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
だから彼が突然、その悲劇の現場げんじょうへ行くといい出したことは、私にとっては予期していたことでありまた希望していたことでもあったのだ。
署長は関係者以外のものを全部庭内ていないに去らしめ門の内外には巡査を配置して絶対に出入でいりを厳禁し、直ちに兇行現場げんじょう及証拠品の調査を開始した。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
それから講師が現場げんじょうを調べて見ると、そこには賊の刃物が落ちていた。く研究すると、これは古代の羅馬人ローマじんが持っていた短いけんたぐいであった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
軽舸はしけで擦れ違ったのは八五郎でした。河へ飛込んだ親分の身を案じて、西両国の橋番所に駆け付けると、船を出して貰って現場げんじょう——橋の下——へ漕がせたのです。
さあ、これで一通りこの方は済んだつもりだ。ひとつ、これから殺人の現場げんじょうを調べて見ようじゃあないか。
カンカン虫殺人事件 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
マチアとボブとは、わたしが現場げんじょうにいなかったという証人しょうにんになって、わたしを助けることができようか。
多分たぶんそちのるであろうとおもうが、かくも一おう現場げんじょうってるとしようか……。』
「樹の枝をな」と坊さんは気難しげに云った、そして兇行の現場げんじょうの見える窓の方に向いた。
然しついに答えは無かった。——船の位置だけでも先に聞いて置けば宜かったと思うが、もう今更いまさらどうにも仕様がない。ただ、出来るだけ早く現場げんじょうへ行って、危急の友を救うことである。
流血船西へ行く (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
主君対馬守のお供をして、この日光の現場げんじょうへ向け、江戸を発足したのでした。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
警官達は、斎藤老人から、大体の事情を聞取ると、兎も角現場げんじょうを検分することにして、老人の案内で、二階の書斎へと上って行った。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
現場げんじょうに犯人の使用した兇器又は遺留品があって、しかも指紋が不明であるといったような場合、この条件反射による犯人鑑定法は
新案探偵法 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
警察へ行ってみると、現場げんじょうはまだそのままにしてあるということだった。場所を教えてもらうと、彼は直ぐ警察の門を飛び出した。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
熱海あたみ予審判事、警視庁の戸山第一捜索課長以下鑑識課員、大森署より司法主任綿貫わたぬき警部補以下警察医等十数名現場げんじょうに出張し取調とりしらべを行ったが
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そのうちに、地方裁判所の一行も現場げんじょうへ到着した。八時半頃になって、署長と検事とが立会たちあいで証拠人の仮審問がはじまった。
誰が何故彼を殺したか (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
彼の計画は簡単でただ立会検事の格でその現場げんじょうを見ていさえすればいいのだ。彼は直ちに人の居ない玄関から食堂へ入った。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
僕はこの推理の延長から、殺人の現場げんじょうを直感する。それは旋盤工場である。旋盤工場はあの鉄工場の一部にあるはずだ。其処そこの裏手の屑捨場くずすてばまで歩けば、もうそれで充分だ。
カンカン虫殺人事件 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
が、かく其儘そのままでは済まされぬ。巡査の率いる一隊は、森に沿うて山路やまみちを北に登る事となった。市郎の一隊は現場げんじょうを中心として、附近の森や野原や村落をあさる事となった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その一つは、泰軒先生をうながして、一路穴埋めの現場げんじょうへいそぐチョビ安。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
五人の人間ひととが、一直線の線路の上で消えて無くなろうとは! そうだ、もう一時間経っても確とした報知がないなら、僕はコリンス方面監察といっしょに現場げんじょうへ急行しなければならないだろう。
わたしの友人たちはわたしが現場げんじょうがいなかったという証言しょうげんをしたけれども、検事けんじは、いや、寺へ行って共犯者きょうはんしゃに出会って、それから「大がしの宿屋やどや」へかけて行く時間はじゅうぶんあったと言った。
地方裁判所検事の一行が到着して、警視庁や所轄警察署の人々と一緒に現場げんじょう検証を開始したのは、それから一時間程のちであった。
悪霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「見舞に行くには及ばぬ。君のような人間が現場げんじょうに立会ったとて役に立つものじゃない。留守をして電話でも聞いていたまえ」
老巡査 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
彼が、犯行の現場げんじょうに集まった群集に対して、警官の到着前に、興奮して演説しようとしたのは、このことを裏書きしている。
誰が何故彼を殺したか (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
「そのことは、まあ、あとでゆっくりお話ししましょう。とにかく、僕に、木村博士殺害現場げんじょう捜査の許可を得てください」
紫外線 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
白昼下はくちゅうかでは、その時、さいわいにも観覧人も少く畜養員や園丁も現場げんじょうに居合わせなかったというとき、又夜間なれば、これはきわめて容易に行われる。
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
プラスビイユ、さようなら、しかし、今後もし現場げんじょうで君を捕まえたらば、御気の毒ながら、捻り潰すよ。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
衛兵はそのむねを届け出たので、隊でも驚いた。司令部でも驚いた。当番のS君は真先に現場げんじょうへ出張した。聯隊長その他も駈付かけつけて見ると、M大尉は軍服を着たままで倒れていた。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一同を寝室の外に立退たちのかしめ、破れたドアを締めて、現場げんじょうを乱さぬ注意をした上、深夜ながら、警視庁に電話をかけて、事の次第を急報した。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
無論、現場げんじょうをしらべてみると、鋼鉄板にあながあいているどころか、弾丸の当ったあともありません。明らかにこれは車内で弾丸を射った証拠しょうこです。
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その轟九蔵との古い関係についても固くなって首を振るばかり……しかし現場げんじょうの説明から、殺す挙動しぐさまで遣って見せたが、一分一厘違わなかったね。
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その他に、現場げんじょうにはこれという発見もなかったので、死体は直ちに大学へ運ばれ、今日十時から法医学教室で解剖が行われることになって居るのである。
呪われの家 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
塚田巡査は町の者共を従え、市郎は我家の職人や下男げなんを率いて、七兵衛老翁じじいに案内させ、前後二手に分れて現場げんじょう駈向かけむかった。夜の平和は破られて、幾十の人と火とが、町尽頭まちはずれの方へ乱れて走った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「止せ止せ、ちゃんと現場げんじょう写真を撮ってしまったのだ。慌てることはない。それよりも、このことをここのうちへ知らせてやろうじゃないか」
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
現場げんじょうにかけつけたためボルク号に代って、こっちが魚雷を喰ったというわけではないかと考えますが、いかがでしょう
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それから僕は北沢家に出張して現場げんじょうの模様をしらべ、なお、遺書の上の血痕をしらべたが、人工的に按排あんばいされた形跡は一つも発見することが出来なかった。
闘争 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
犯行の現場げんじょうは直ぐに判明わかった。裏口から這入ると、田舎一流の一間幅ぐらいの土間が表の通りへ抜け通っている。その右側は土壁で、左側に部屋が並んでいる。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
兎も角急いで現場げんじょうへ行って見たが、案の定、そこには、いくら探しても新しい墓石なんて、影も形もないことが確められた。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
彼女がソッと現場げんじょうを逃げだしたのは、それからだった。——(海原力三うなばらりきぞうが殺人の目的で忍びこんだときは、既に金が重傷を負っていたのちのことだった)
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
犯行の現場げんじょうにも何の手掛かりも発見されず、金庫はアセチレン吹管すいかんで破壊されておりましたが、ただ賊が外部から侵入したことだけは確かだそうであります。
紫外線 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
現場げんじょうを見なければ判然わからないが、その秘密の現金を狙った奴が、わざと老爺じじいに上等の下駄をあつらえて
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
警部の方では、電話で小石川警察に手配を依頼した上、自分も数名の警官を伴い、直ぐ現場げんじょうに自動車を飛ばす筈であった。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
私はかつて法医学教室にいたことがあるが、今のところ、法医学の取り扱うのは死体の解剖だけで、必要以外犯罪の現場げんじょうの鑑定は行わないことになっている。
科学的研究と探偵小説 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
さあ、これでと安心です。警察隊と医者の来るのを待つばかりです。その間に私は現場げんじょうしらべて、事件の手懸てがかりを少しでも多く発見して置きたいと思ったのでした。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)