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熨斗目
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のしめ
ふりがな文庫
“
熨斗目
(
のしめ
)” の例文
と評判の
悪垂
(
あくたれ
)
が、いいざまに、ひょいと歯を
剥
(
む
)
いて
唾
(
つば
)
を吐くと、べッとりと袖へ。これが
熨斗目
(
のしめ
)
ともありそうな、柔和な人品穏かに
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
松の内の登城ですから、無論式服、
熨斗目
(
のしめ
)
の
裃
(
かみしも
)
に
長袴
(
ながばかま
)
、袴の
括
(
くく
)
りは大玄関の板敷へ上がるとすぐに下ろして
裾
(
すそ
)
を曳くのが通例でした。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
平島羽二重の
熨斗目
(
のしめ
)
に、精巧織の袴をつけている人もあったし、木綿の絣を着流しに、跣足の尻端折で、ぴたぴた歩いて来た人もあった。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
肩裾
(
かたすそ
)
と称して、芝居で見る
熨斗目
(
のしめ
)
の着物などとは反対に、わざわざ肩と裾の部分を
縫取
(
ぬいと
)
りして丈夫にしたのである。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
頭は
茶筅髷
(
ちゃせんまげ
)
に
熨斗目
(
のしめ
)
の着物、腰みの、唐人姿の乙姫さまが、やいのやいのというもてなしに
腎虚
(
じんきょ
)
寸前、ホームシックになり、帰りてみれば「色即是空」。
江戸前の釣り
(新字新仮名)
/
三遊亭金馬
(著)
▼ もっと見る
黒羽二重
(
くろはぶたえ
)
の
熨斗目
(
のしめ
)
の紋附に羽織袴を着けて立った姿は、縁側一杯に照らす麗かな日をまともに浴びて黒い
七子
(
なゝこ
)
の羽織地が
銀沙
(
ぎんすなご
)
のようにきら/\光って居る。
少年
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
無地
熨斗目
(
のしめ
)
の、拜領物らしい振袖、
袴
(
はかま
)
は脱いで疊んであり、横顏の端麗さは非凡でした。平次はフト、この少年には見覺えがあると思つたのも無理はありません。
銭形平次捕物控:314 美少年国
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
上着が空色の
熨斗目
(
のしめ
)
で日暮方という
代物
(
しろもの
)
、昼時分という
鳶八丈
(
とびはちじょう
)
の取合せが乙じゃあございませんか。
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
団十郎の
扮
(
ふん
)
した高時の頭は円く、薄玉子色の
衣裳
(
いしょう
)
には、黒と白との
三
(
み
)
つ
鱗
(
うろこ
)
の模様が、
熨斗目
(
のしめ
)
のように附いていました。立派な御殿の
廂
(
ひさし
)
の
蔀
(
しとみ
)
を下した前に坐っています。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
それでも葛籠を明けて中から出る品物がえらい紋付や
熨斗目
(
のしめ
)
や
縫
(
ぬい
)
の
裲襠
(
うちかけ
)
でもあると、
斯
(
こ
)
う云う貧乏長屋に有る物でないと云う処から、
偶然
(
ひょっと
)
して足を附けられてはならんから
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
それから
熨斗目
(
のしめ
)
麻上下、大小たばさんだ山岡
主計
(
かずえ
)
、お証拠お預かりの宰領である。白木柄の薙刀一振を、紫の袱紗で捧げ持ち、前後に眼を配っている。つづいて血祭坊主が行く。
首頂戴
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
熨斗目
(
のしめ
)
の上下こそつけね、すべての服装が第一公式のお武家ふうでしたものでしたから、うるさいことにまた伝六が、血のめぐりのよろしくないところを遺憾なく発揮いたしました。
右門捕物帖:09 達磨を好く遊女
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
照葉狂言は嘉永の頃大阪の
蕩子
(
とうし
)
四、五人が創意したものである。大抵能楽の
間
(
あい
)
の狂言を模し、
衣裳
(
いしょう
)
は
素襖
(
すおう
)
、
上下
(
かみしも
)
、
熨斗目
(
のしめ
)
を用い、
科白
(
かはく
)
には
歌舞伎
(
かぶき
)
狂言、
俄
(
にわか
)
、踊等の
状
(
さま
)
をも交え取った。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
女にしても見まほしい
腮
(
あぎと
)
から
横鬢
(
よこびん
)
へかけて、心持ち青々と苦味走ったところなぞ、
熨斗目
(
のしめ
)
、
麻裃
(
あさがみしも
)
を着せたなら天晴れ何万石の若殿様にも見えるであろう。俺ほどの男ぶりに満月が惚れぬ筈はない。
名娼満月
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「
熨斗目
(
のしめ
)
」の腰に織り出してある横縞や、「
取染
(
とりぞめ
)
」の横筋はいずれも宝暦前の趣味である。しかるに、宝暦、
明和
(
めいわ
)
ごろから縦縞が流行し出して、文化文政には縦縞のみが専ら用いられるようになった。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
と、早水と萱野の二人は、その日の
裃
(
かみしも
)
熨斗目
(
のしめ
)
のまま、駒に飛び乗って、町へと鞭を打った。そして八ツ山口の問屋場から
早駕
(
はや
)
を仕立てさせ
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
脚絆
(
きゃはん
)
を堅く、
草鞋
(
わらじ
)
を
引〆
(
ひきし
)
め、背中へ十文字に
引背負
(
ひっしょ
)
った、四季の
花染
(
はなぞめ
)
の
熨斗目
(
のしめ
)
の
紋着
(
もんつき
)
、
振袖
(
ふりそで
)
が
颯
(
さっ
)
と
山颪
(
やまおろし
)
に
縺
(
もつ
)
れる中に、女の
黒髪
(
くろかみ
)
がはらはらと
零
(
こぼ
)
れていた。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
派手な
熨斗目
(
のしめ
)
の着物を着たり、特に春団治は、初代二代ともに気違いじみた着物を着ていた。
噺家の着物
(新字新仮名)
/
三遊亭金馬
(著)
和綴
(
わとじ
)
のかなり厚い一冊物で、表紙は茶色の
熨斗目
(
のしめ
)
模様、じゃばらの糸で綴じてあり、綴目の上下に紫色の切れが張ってあって『心の種』と書いてあります。
橘守部
(
たちばなもりべ
)
の著なのです。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
その
背後
(
うしろ
)
には季節に
適
(
かな
)
わせた、八橋の景が飾ってあり、その前に若い娘太夫が、薄紫
熨斗目
(
のしめ
)
の振袖で、金糸銀糸の刺繍をした
裃
(
かみしも
)
、
福草履
(
ふくぞうり
)
を穿いたおきまりの姿で、巧みに縄をさばいていた。
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
藍
(
あい
)
の
長上下
(
なががみしも
)
、黄の
熨斗目
(
のしめ
)
、小刀をたしなみ、
持扇
(
もちおうぎ
)
で、舞台で名のった——脊の低い、肩の四角な、堅くなったか、
癇
(
かん
)
のせいか、首のやや
傾
(
かし
)
いだアドである。
木の子説法
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
濃化粧の顔、高島田、金糸銀糸で
刺繍
(
ぬいとり
)
をした
肩衣
(
かたぎぬ
)
、そうして
熨斗目
(
のしめ
)
の紫の振袖——そういう姿の女太夫の、曲独楽使いの
浪速
(
なにわ
)
あやめが、いまその舞台に佇みながら、口上を述べているのであった。
仇討姉妹笠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
これは
熨斗目
(
のしめ
)
の
紋着振袖
(
もんつきふりそで
)
という、田舎に
珍
(
めずら
)
しい
異形
(
いぎょう
)
な
扮装
(
なり
)
だったから、不思議な若殿、
迂濶
(
うかつ
)
に物も言えないと考えたか、
真昼間
(
まっぴるま
)
、狐が化けた? とでも思ったでしょう。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私がと言っては
可笑
(
おかし
)
いでしょう。
裾模様
(
すそもよう
)
の
五
(
いつ
)
ツ
紋
(
もん
)
、
熨斗目
(
のしめ
)
の派手な、この頃聞きゃ
加賀染
(
かがぞめ
)
とかいう、菊だの、
萩
(
はぎ
)
だの、桜だの、花束が
紋
(
もん
)
になっている、時節に構わず、
種々
(
いろいろ
)
の花を
染交
(
そめま
)
ぜてあります。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
熨
漢検1級
部首:⽕
15画
斗
常用漢字
中学
部首:⽃
4画
目
常用漢字
小1
部首:⽬
5画
“熨斗目”で始まる語句
熨斗目麻裃
熨斗目裃