-
トップ
>
-
花染
盛りと
咲亂れ晝と雖も
花明りまばゆきまでの
別世界兩側の引手茶屋も
水道尻まで
花染の
暖簾提灯軒を揃へて
掛列ね萬客の出入袖を
恍惚した
小児の顔を見ると、
過日の四季の
花染の
袷を、ひたりと目の前へ投げて
寄越して、
大口を
開いて笑った。
稽古の窓に向つて
三諦止觀の月を樂める身も、一
朝折りかへす
花染の
香に
幾年の
行業を捨てし人、
百夜の
榻の
端書につれなき君を怨みわびて、亂れ
苦き
忍草の露と消えにし人