渺々べう/\)” の例文
た※渺々べう/\としてはてもない暗夜やみなかに、雨水あめみづ薄白うすじろいのが、うなぎはらのやうにうねつて、よどんだしづかなみが、どろ/\と線路せんろひたしてさうにさへおもはれる。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
雪いまだきえず、山々はさら也田圃たはた渺々べう/\たる曠平くわうへい雪面せつめんなれば、枝川えだかはは雪にうづもれ水は雪の下を流れ、大河といへども冬の初よりきしの水まづこほりて氷の上に雪をつもらせ
手間取てまどり大森おほもりの邊りに來りし頃ははやこくなれば御所刑場おしおきばあたりは往來わうらいの者も有まじとおも徐々そろ/\來懸きかゝりしに更と云殊に右の方は安房あは上總かづさ浦々うら/\まで渺々べう/\たる海原うなばらにして岸邊を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おそる/\搖籃ゆれかごから半身はんしんあらはして下界げかいると、いま何處いづこそら吹流ふきながされたものやら、西にしひがし方角ほうがくさへわからぬほどだが、矢張やはり渺々べう/\たる大海原おほうなばら天空てんくう飛揚ひやうしてるのであつた。
渺々べう/\たる人間眼を以て説明し得べからざるものを世に存在せしむるなり。
各人心宮内の秘宮 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
「べらぼうめ、飛越とびこしたぐらゐの、ちよろがはだ、また飛返とびかへるに仔細しさいはあるめえ。」と、いきつて見返みかへすと、こはいかに、たちま渺々べう/\たる大河たいがつて、幾千里いくせんりなるやはてず。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
中洲なかずと、箱崎はこざきむかうにて、隅田川すみだがは漫々まん/\渺々べう/\たるところだから、あなたおどろいてはいけません。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
若草わかくさながら曠野ひろの一面いちめん渺々べう/\としてはてしなく、かすみけてしろ/″\と、亥中ゐなかつきは、さしのぼつたが、葉末はずゑかるゝわればかり、きつね提灯ちやうちんえないで、時々とき/″\むらくものはら/\とかゝるやうに
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
みち一面いちめん渺々べう/\しろ野原のはらりました。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)