消息しょうそく)” の例文
「しかし博士は十四、五年前にどうしたわけか行方不明になったままで、その後消息しょうそくを聞いたことはなかった、するともしや……」
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
すいれんの花を見て、去年花前がきたのも秋であったことを思いだす。この日、主人は細君より花前の上について意外いがい消息しょうそくを聞いた。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
女は早速庫裡くりへ行って、誰かに子供の消息しょうそくを尋ねたいと思いました。しかし説教がすまない内は、勿論和尚にも会われますまい。
捨児 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
失望湾は左門洞から約二十キロメートルの距離きょりにある、これは万一のばあい、左門洞の一同と消息しょうそくを通ずるにしごく容易よういである。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
小太郎山こたろうざんへんいらい、そちの消息しょうそくがたえていたので、若君わかぎみをはじめ一とうの人たちが、どれほど、しんぱいしていたかわからぬ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして彼女かのじょは、はなをかいでいるうちに、ふとおとうとのことをおもしたのです。おとうと外国がいこくへいって幾年いくねんにもなるが、消息しょうそくえていました。
ある冬の晩のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
先日行衛ゆくえ不明で、もし来たら留めて置いてくれと照会があった角谷すみや消息しょうそくが分かった。彼は十八日の夜、大森停車場附近で鉄道自殺を遂げたのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それをしてくれた富子という自転車屋の娘は、そのあと結婚して東京でくらしていたのだが、はがきさえも品切れがちの戦争中に消息しょうそくもたえ、そのままになっている。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
それに、投書家交際づきあいをすることが好きで、地方文壇の小さな雑誌の主筆とつねに手紙の往復をするので、地方文壇消息しょうそくには、武州行田ぶしゅうぎょうだには石川機山きざんありなどとよく書かれてあった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
叔父の家へは消息しょうそくさえしない。
顎十郎捕物帳:07 紙凧 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
いずれかれらの消息しょうそくは、りこうな、敏捷びんしょうなのねずみによって、たずされて、ぶなのさかなたちにもわかることでありましょう。
縛られたあひる (新字新仮名) / 小川未明(著)
侯の消息しょうそくは依然として不明ですわい。その夜、侯がいつになく酒もたしなまれず、あおい顔をして溜息ためいきばかりをついていられたのを思い出します
暗号音盤事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「わしも、お身に会ったなら、何ぞ消息しょうそくが聞かれようかと、それ一念で、山牢の柵を破ってまいったのじゃ。して、わしに告げたいこととは」
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そう云う消息しょうそくに通じている洋一は、わざと長火鉢には遠い所に、黙然もくねんと新聞をひろげたまま、さっき田村たむらに誘われた明治座の広告を眺めていた。
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
少年連盟は以前に倍した一致協力ちきょうりょくですすんだ、四五日がすぎた、だが海蛇うみへびなどの悪漢の消息しょうそくはようとしてわからない、黒雲が頭をおしつけるように、一同は不安と恐怖きょうふのあいだに
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
此世から消え失せたかの様に、二人の消息しょうそくははたと絶えた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
思いがけないところで、大九郎にあった竹童は、かれの口から、その伊那丸いなまる消息しょうそくをくわしく知ることができた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
というのは、隆夫少年の父親である一畑治明いちはたはるあき博士は、ヨーロッパの戦乱地でその消息しょうそくをたち、このところ四カ年にわたって行方不明のままでいるのだ。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
おどっている人形にんぎょうは、こうして、二人ふたりともだちの消息しょうそくることができました。一つは、外国がいこくへゆき、一つはおじょうさんのうちに、らしていることがわかった。
三つのお人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それから翌日の午後六時までお君さんが何をしていたか、その間の詳しい消息しょうそくは、残念ながらおれも知っていない。何故なぜ作者たるおれが知っていないのかと云うと——正直に云ってしまえ。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「ゴルドン君、ぼくはひとりで、ドノバン君が発見したというセルベン号のある海岸へいってみようと思う。いつまでも不安な状態じょうたいであるより、なにかしっかりした消息しょうそくをつかまえたいんだ」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
その消息しょうそくられなかったので、やむをえず伊那丸いなまるとのやくそくもあるので、いちじ断念だんねんして、参会さんかいしたのであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「たいへんだッ。ええ、クイーン・メリー号の消息しょうそくがわかったという大号外! いま出ました大号外!」
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それは、ふたりのともだちの消息しょうそくがわからないということよりも、なかでいちばんうつくしいのは、はなひかりであると、がいったというなら、自分じぶんは、まったく無視むしされたためです。
三つのお人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
牧野の口調くちょうや顔色では、この意外な消息しょうそくも、満更冗談とは思われなかった。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
技師長「君は、いやにそのへん消息しょうそくに詳しいんだね。いいのがいるのだろう、姐御の中に……」
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)
けれど、自分じぶん消息しょうそくは、どうしたら、あのふたりの人形にんぎょうらせることができましょう?
三つのお人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それが彼の姿を見ると、皆一度に顔を挙げながら、何か病室の消息しょうそくを尋ねるような表情をした。が、慎太郎は口をつぐんだなり、不相変あいかわらず冷やかな眼つきをして、もとの座蒲団ざぶとんの上にあぐらをかいた。
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
氏は英仏連合軍の中に在りて、自ら偵察機ていさつきを操縦して参戦中なりしが、ダンケルクの陥落かんらく二日前、フランス軍の負傷者等を搭載とうさいしパリに向け離陸後消息しょうそくを絶ちしものなり。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
にん行方ゆくえや、それをすくいにた、五つのあかいそりの消息しょうそくづかって、人々ひとびとは、みんな海辺うみべあつまりました。もとよりうみうえは、かがみのようにこおって、めずらしくひかりけてかがやいています。
黒い人と赤いそり (新字新仮名) / 小川未明(著)
なにしろその後、烏啼の消息しょうそくがさっぱり分らないので、油断ゆだんはならないとのことであった。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
無電技師はどこへ行ったか、消息しょうそくはまったく不明であった。第一この船底無線電信室というのは、遭難の場合に最後に使う無電室なのであるから、器械もかんたんでそまつであった。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
探険隊の消息しょうそくを心配して日本から有力な飛行隊が大挙して飛んできたので、大月大佐以下は生命をすくわれた上、この大きな土産みやげ空魔艦を捕虜とともに飛行隊へ手わたすことができて
大空魔艦 (新字新仮名) / 海野十三(著)