津軽つがる)” の例文
旧字:津輕
青森県のままごと方言は色々あるが、だいたいに南部なんぶ領はオフルメヤコ、津軽つがる領はオヒルマイコまたはジサイコナコというのがひろい。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
文字がよく示しますように、日本の一番奥のはては陸奥むつの国であります。県庁は青森市に在りますが、津軽つがる氏の居城は弘前ひろさきでありました。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
浜には津軽つがる秋田あきたへんから集まって来た旅雁りょがんのような漁夫たちが、にしん建網たてあみの修繕をしたり、大釜おおがまけをしたりして、黒ずんだ自然の中に
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
背後うしろを青森行の汽車が通る。まくらの下で、陸奥湾むつわん緑玉潮りょくぎょくちょうがぴた/\ものいう。西には青森の人煙ゆびさす可く、其うしろ津軽つがる富士の岩木山が小さく見えて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
時は八月の九日午後二時——三時、ところは横浜を北へ去る少くとも五百海浬かいりの海上、今やまさに津軽つがる海峡の中間を進行しつつある観光船高麗丸の後甲板こうかんぱん
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
隣郷りんがう津軽つがる唐糸からいとまへぢずや。女賊ぢよぞくはまだいゝ。鬼神きじんのおまつといふにいたつては、あまりにいやしい。これをおもふと、田沢湖たざはこ街道かいだう姫塚ひめつかの、瀧夜叉姫たきやしやひめうらやましい。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
船はいま黒いけむりを青森の方へ長くひいて下北半島しもきたはんとう津軽つがる半島の間を通って海峡かいきょうへ出るところだ。みんなは校歌をうたっている。けむりのかげなみにうつって黒いかがみのようだ。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
青森地方、即ち南部なんぶ津軽つがるからも、はるかに九州のこの僻地へきちまで、数名の門弟が来ている。
淡窓先生の教育 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
甲府こうふ市の妻の実家に移転したが、この家が、こんどは焼夷弾しょういだんでまるやけになったので、私と妻と五歳の女児と二歳の男児と四人が、津軽つがるの私の生れた家に行かざるを得なくなった。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
僕の父の話によれば、この辺、——二つ目通りから先は「津軽つがる様」の屋敷だつた。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
未明に出帆しゅっぱんしたのに、夕方になってもまだ津軽つがる海峡沖を抜け切らなかった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
北海道も石狩いしかり平野から奥へすすむと山国同様だが私はその地方は殆んど知らない。朝夕に津軽つがる海峡を眺めて暮してきたので、周囲の全部が山また山という風景に接すると異様な感じを与えられる。
南𧮾なんけい東遊記とういうきを見るに、南𧮾東遊して津軽つがるに居たる時、六七日も風雨つゞきしうち、所の役人丹後の人やると旅店毎やどやごとにきびしくたづねしゆゑ、南𧮾あるじにそのゆゑを問ひければ、あるじいふやう
面つゝむ津軽つがるをとめや花林檎はなりんご
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
津軽つがるの海を思へば
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
東は津軽つがるの岬端から、西は島根県の一部にまで、同じ風の名が今もほぼ一続きに行われ、言葉がきれいなために時々は歌謡の中に入って
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
津軽つがるは今林檎りんご王国の栄華時代である。弘前の城下町を通ると、ケラをて目かご背負うた津軽女つがるめも、草履はいて炭馬をひいた津軽男も、林檎い/\歩いて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
南𧮾なんけい東遊記とういうきを見るに、南𧮾東遊して津軽つがるに居たる時、六七日も風雨つゞきしうち、所の役人丹後の人やると旅店毎やどやごとにきびしくたづねしゆゑ、南𧮾あるじにそのゆゑを問ひければ、あるじいふやう
それが北へ行って南部領になると、これを略してセンコキ、津軽つがるの農村ではもっと略して、ヘンコキと謂う人も多かった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
津軽つがる海峡を四時間にせて、余等を青森から函館へ運んでくれた梅ヶ香丸は、新造の美しい船であったが、船に弱い妻は到頭酔うて了うた。一夜函館埠頭ふとうきと旅館に休息しても、まだ頭が痛いと云う。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そのふうが遠い田舎にはまだ伝わっていて、秋田地方ではこれをチヂミサシ、津軽つがるは一般にこれをコギンとっている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
元の形に近いものから列記すると、同じ陸中でも上閉伊郡にはヒボトが有るのに、和賀わか郡には外南部や津軽つがる・秋田の一部とともに、これをヒブトと謂う者がある。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
はじめ出奔しゅっぽんせしと思ひしに、其者そのものの諸器褞袍おんぽうも残りあれば、それとも言はれずと沙汰さたせしが、一月ひとつきばかりありて立帰れり。津軽つがるを残らず一見して、くわしきこと言ふばかり無し。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
たとえば津軽つがるあじさわの柱かつぎ、筑前ちくぜん博多のセンザイロウなどはまだ子どもの管轄に属している。そんな話をけば珍しがるだろうが、東京人の中でも小さなをかかえゆさぶって
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
きたる秋のみのりをうらなう点は、津軽つがるの山中の滝とも似ていた。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)