末裔まつえい)” の例文
この緒方三郎惟義というのは、ただ者ではない、恐ろしい者の末裔まつえいである。その昔、豊後国のある片田舎に住む夫婦に、一人娘がいた。
彼はヴァン・ウィンクル家の末裔まつえいだったが、彼の祖先は、騎士道はなやかなりしピーター・スタイヴァサントの時代に武名をとどろかし
按吉は、時々深夜の物思いに、ふと、俺はどうも社楽斎の末裔まつえいじゃないかなどと考えて、心細さが身に沁むようになっていた。
勉強記 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
コゼットは死に絶えた一家のただひとりの末裔まつえいとなり、彼の娘ではなくて、もひとりのフォーシュルヴァンの娘となった。
中根さん、カインの末裔まつえいを読んだかと云う。私は東京の生活が荒れているので、そんな静かなものは読んではいられない。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
われは漢の相国しょうこく曹参の末裔まつえいたり。——とは、曹操みずからの称えていたことだが、事実はだいぶ違うようである。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は弓矢ゆみやをとる身か、またその矢に當つて死ぬ身かになつた東方のマホメットの末裔まつえいそのまゝに見えるのであつた。やがてイングラム孃が現はれて來た。
また本領の土地を捨てるが悲しさに、他の一人は止まって農となり、その末裔まつえいは多く名主または庄屋となった。
名字の話 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
70 ファレイドゥーン——かつてのピシダーデイ王朝の末裔まつえいとしてイランを再興したと伝えられる勇士。
ルバイヤート (新字新仮名) / オマル・ハイヤーム(著)
つて我が国に数多く帰化し、我々の祖先とともに大伽藍を建立こんりゅうした人々の末裔まつえい——。大和の春を思うたびに私の心に浮ぶのは、このかなしい零落の姿である。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
ヘドッコになってしまった江戸児の末裔まつえいは、誰もがそうであるように、辛辣しんらつ軽口かるくちで自家ざんぶをやる。
昔臣連の大貴族として勢力を持ったものの末裔まつえいが、おのおの数町の田をうけてわずかに家名を存続し
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
自分の国の敗戦も、自分の身体の栄養低下も、実感としては何も知らなかった子供たちは、カインの末裔まつえいの土地で、「イグアノドンの唄」をうたって、至極御機嫌ごきげんであった。
『何うぞお願い致します。私の家は今は東京で商売をやっていますが、先祖は代々近江にいて、清和源氏せいわげんじ末裔まつえいでございます』とかと、系図までさらけ出して血相を変えていた。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
父のいわゆる何とかいう氏族うじぞく末裔まつえいに当るということを対手あいてにわからせようと努めた。
尋常六年生の私が国木田独歩の「正直者」や森田草平の「煤煙」や有島武郎の「カインの末裔まつえい」などを読み耽つて、危く中学校へ入り損ねたのも、ここの書棚をあさつたせゐであつた。
木の都 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)
しかも長門、犯信ゆえに栄誉ある大阪城代の職をあやまったとは言え、さすがに名家の末裔まつえい、横紙破りの問題起した風雲児だけのものがあって、態度、おちつき、貫禄共に天晴れでした。
こうして、メディチ家の血系、妖妃ようひビアンカ・カペルロの末裔まつえい、神聖家族降矢木ふりやぎの最後の一人紙谷伸子のひつぎは、フィレンツェの市旗に覆われ、四人の麻布をまとった僧侶の肩に担がれた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そのつい鼻の先の所に、一冊の本がページを開いたまま落ちていました。それは彼女の批評にれば「今の文壇で一番偉い作家だ」と云う有島武郎たけおの、「カインの末裔まつえい」と云う小説でした。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
又、神の子、仏の末裔まつえいであると信じ、宗教への情熱が、人間の中心となり、宗教家は人間の最高の者として、尊敬され、十字軍がしばしば起り、みかどは、自らを三宝さんぽうやっこと称された時代があった。
大衆文芸作法 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
羅馬貴族であるエトラスケール人たるペレニウス一族の末裔まつえいなり、と考える時に、充分首肯のできる話でありまして、たびたび繰り返して申し上げますとおり、当時の羅馬人は非常に優雅であり
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
私はいまは全く死語と化したと云っていい、かの江戸っ子という種族の末裔まつえいであって、その出生よりして趣味感覚は都会風に洗煉せんれんせられ、私は巧まずして弁舌爽やかであり、また座談にも長じている。
メフィスト (新字新仮名) / 小山清(著)
その下層民のかすの中にも、大きな頭をし、ガラスのような眼をし、多くは動物的な顔をし、肥満してずんぐりしてるそれらの者どもの中にも、最も高尚な民族から堕落してきたそれらの末裔まつえいの中にも
古い豪族の末裔まつえいであることは疑えない。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
遠く、平貞盛からの末裔まつえいとして、伊東の伊東祐親と、北条の北条家とで、その勢力は二分していると云ってよい。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
聖武天皇の御代に、三野の國片縣かたあがたの郡、少川のまちに住んでゐた、百人力女が、前の犬に追はれた岐都禰きつね末裔まつえいだが、おのが力をたのんで、往還おうかん商人あきんどの物品を盜む。
春宵戯語 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
カインの末裔まつえいの土地
手配を尽してくれたY氏も来て「やっと今、尊氏の末裔まつえいをつかまえましたよ。つい近所の細川護立ほそかわもりたつさんの別邸内に住んでるんです、すぐお見えになるそうですから」
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朝散太夫ちょうさんだいぶ藤木氏の末裔まつえいチンコッきりおじさんは、三人の兄弟であったが、揃いもそろった幕末お旗本ならずものの見本で、仲兄は切腹、上の兄は他から帰ってきたところを
南は、九州の山岳地帯、北は東北、北陸にまで、ままその末裔まつえい一族という小社会があるのを聞く。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひとりは吉田大納言定房の末裔まつえいの吉田博光氏で、皇太子さまの御成婚に儀進をつとめられた甘露寺掌典長とは、ご親戚か親友か、とにかく、よほど親しいことばがたきの由。
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぎょうしゅんに世をゆずった例と同じもので、天に応じ人に従ったものであるが、玄徳にはその徳もないのにかかわらず、ただ自ら漢朝の末裔まつえいだなどという系図だけを根拠として
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この近江路の要衝ようしょうを占める愛知えち、犬上、坂田の諸郡にまたがる豪族といえば、古くから近江源氏と世に呼ばるる佐々木定綱、高綱らの末裔まつえいの門たるは、改めていうまでもない。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは自称して、中山靖王ちゅうざんせいおう末裔まつえいとはいい給えど、聞説きくならく、その生い立ちは、むしろを織りくつあきのうていた賤夫という。——これを較ぶるに、いずれを珠とし、いずれを瓦とするや。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おおさ、いまでこそ浪々の身だが、昨日までは、五こうの一人楊令公ようれいこう末裔まつえいとして、徽宗きそう現皇帝の旗本にも列せられた武士中の武士だ。もしそれだったら、どうだというのか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遠祖は赤松一族で、平田将監しょうげん末裔まつえいとはあっても、確証はなし、徳川家との縁故もない。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は河東かとうにおける開国ごろの名将呼延賛こえんさん末裔まつえいで、兵略に通じ、よく二本の赤銅あかがねむちをつかい、宇内うだいの地理にもあかるく、梁山泊征討の任には、打ってつけな武人かとおもわれます
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
功がないどころか、見上げたものです。やはり関羽の末裔まつえい関勝だけのものはある
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これは、源氏にゆかりのある一槍です。源家の末裔まつえいたるあなたに贈ろう」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いまから十余年前までの村上氏というものは、北信濃一円を威令して、坂城さかき葛尾くずのおの城を中心に、祖先鎮守府将軍源頼義の一族が末裔まつえいとして、誰も仰ぎ敬う位置に栄えていたものである。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よくぞよくぞ、これまでに励まれた。亡き良持どのがおしたら、いかばかり歓ばれようぞ。——さすがは、桓武帝の末裔まつえいたる御子将門どのよ。わしも、どんなにか、うれしいか知れぬ。よい初春はる
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
流亡平家の末裔まつえいたちの実存を想像するのに充分な気がする。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)