暴虐ぼうぎゃく)” の例文
わたくしそう思いますのよ。女に捨てられて、女を殺すなんて、本当に男性の暴虐ぼうぎゃくだと思いますの。男性の甚だしい我儘わがままだと思いますの。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「病人など捨てて歩け」と、脅しつけたり、白昼人妻に戯れたり、その良人を刺し殺したり、ほしいままな暴虐ぼうぎゃくを加えて行った。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あらゆる暴虐ぼうぎゃくいた身を宮殿をしのぐような六波羅ろくはらの邸宅の黄金こがねの床に横たえて、美姫びきを集めて宴楽えんらくにふけっております。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
実に洪武三十一年八月にして、太祖崩じて後、幾干月いくばくげつらざる也。冬十一月、代王だいおうけい暴虐ぼうぎゃく民をくるしむるを以て、しょくに入りて蜀王と共に居らしむ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そして、時々そんな思い切った出鱈目でたらめな芝居をしては『敵兵の暴虐ぼうぎゃく』とか何とかタイトルをつけて、しこたま興行価値を上げようとたくらんだんだ
兵士と女優 (新字新仮名) / 渡辺温オン・ワタナベ(著)
心のなかで彼をのろうべき苦い理由を持たなかった所がいずこにあったか? 不可解な彼の暴虐ぼうぎゃくから、私はとうとう戦々兢々きょうきょうとして疫病えきびょうから逃げるように逃げた。
しかもあれほど太子を讃仰さんぎょうしたはずの諸臣のほとんどすべてが、遺族の全滅に直面してはただ拱手きょうしゅ傍観、入鹿の暴虐ぼうぎゃくを黙視していたのみであった。人心は無常である。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
日も待たず、そのあけの日の夕暮時、宝の市へ練出す前に、——丸官が昨夜ゆうべ芝居で振舞った、酒の上の暴虐ぼうぎゃく負債おいめを果させるため、とあって、——南新地の浪屋の奥二階。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
軽業お初が——あの強烈暴虐ぼうぎゃくな執念の女鬼めおにが、鉄心庵から、島抜け法印を盛りつぶして、抜け出し、ふたたび浮世に舞い戻って、怖ろしい計画を立てていることにいては
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
姫のこういう美しさは、暴虐ぼうぎゃく荒淫こういんの大物主をさえ、不断に「遠慮」させるのであった。すなわち父親でありながら、娘たる姫に対しては、形を正さざるを得ないのであった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私はむりに伴れて行かれる気がした。暴虐ぼうぎゃく——そんな気さえしたのだ。それでも、私の友人たちのただ一人として、私に同情して妻子たちを引止める方へ応援してくれた人がないのだ。
遁走 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
「手の下の罪人」何という暴虐ぼうぎゃくな言葉だ。誰が罪人なのだ? そして、いったい何人にいかなる権利があってほしいまま鞭打むちうち、苦しめ、虐待をえてするのだ。誰に、そんな権利があるのだ。
子供は虐待に黙従す (新字新仮名) / 小川未明(著)
もとより女ながら一死をして、暴虐ぼうぎゃくなる政府に抗せんと志したるわらわ、勝てば官軍くればぞくと昔より相場のきまれるを、虐待の、無情のと、今更の如く愚痴ぐちをこぼせしことの恥かしさよと
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
信長入洛じゅらくの事、聞き及ぶが如く也。将軍を擁立ようりつし、四民を欺瞞ぎまんせんとするも、政事まつりごとわたくしし、その暴虐ぼうぎゃくぶりは、日をうておおがたいものがある。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、瑠璃子の夫としては、何と云う不倫ふりんな、不似合な配偶だろう。金のために旧知を売った木下にさえ、荘田の思い上った暴虐ぼうぎゃくが、不快に面憎つらにくく感ぜられた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
俊寛 ちょうど暴虐ぼうぎゃくな主人につかえる犬が、幾たびむちで打たれても、今度は、今度はと思って、びるように尾を振っては、あわれみをうような眼つきをして
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
蘇我馬子は皇室に対しても、また太子御自身にとっても、最も血肉的に親しい外戚がいせきであり、それだけに彼一統の暴虐ぼうぎゃくを抑えることは容易ならざることだったに相違ない。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
「あの窈窕ようちょうたるものとさしむかいで、野天で餡ものを突きつけるに至っては、刀の切尖きっさきへ饅頭を貫いて、食え!……といった信長以上の暴虐ぼうぎゃくです。貴老あなたも意気がさかんすぎるよ。」
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
毎夜まいよ一人ひとりおんなころした、暴虐ぼうぎゃくなペルシアのおうさまに、おもしろいはなしをしてきかせて、千あいだ地獄じごくから人命じんめいすくったという、うつくしいむすめ芸術げいじゅつで、将来しょうらいぼくがありたいものだな。
金歯 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「この山一つ、攻めとるのに、何で仰せのよう暴虐ぼうぎゃくをする要がありましょうか。むしろ血も見ずにおとすのが、まことの大将、まことのいくさとぞんじますが」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妾一身を賭して男性の暴虐ぼうぎゃくと我儘とをこらしてやりたいと思いますの。男性に弄ばれて、綿々の恨みをいだいている女性の生きた死骸しがいのために復讐ふくしゅうをしてやりたいと思いますの。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
暴虐ぼうぎゃくなる人」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)