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しゃ
ふりがな文庫
“
斜
(
しゃ
)” の例文
一眼の悪いせいか、
鬱陶
(
うっとう
)
しげに、やや顔を
斜
(
しゃ
)
にして物をいうのも、正成の癖である。濃い眉毛と、高い隆鼻が、横顔では、よけい目立つ。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
滑稽とも悲惨ともいいようのない真面目くさったようすで
斜
(
しゃ
)
にかまえ、
賭博場
(
カジノ
)
の
玉廻し
(
クルウビエ
)
そっくりの声色で「
みなさん、張り方をねがいましょう
(
フェート・ウォ・ジュウ・メッシュウ
)
」
黒い手帳
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
だから、右門は表へ出ると、いまかいまかというように十手を
斜
(
しゃ
)
に構えながら、気張っていた伝六を顧みて、くつくつと笑いながらいいました。
右門捕物帖:05 笛の秘密
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
その向うには何でも
適中
(
あた
)
るという評判の足
萎
(
な
)
え
和尚
(
おしょう
)
さんが、丸々と肥った
身体
(
からだ
)
に、浴衣がけの
大胡座
(
おおあぐら
)
で
筮竹
(
ぜいちく
)
を
斜
(
しゃ
)
に構えて、大きな眼玉を
剥
(
む
)
いていた。
いなか、の、じけん
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「何じゃいし。」と振向くと、……亭主いつの間にか、神棚の
下
(
もと
)
に、
斜
(
しゃ
)
と構えて、帳面を
引繰
(
ひっく
)
って、苦く
睨
(
にら
)
み
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
倉地は右の肩を小山のようにそびやかして、上体を
斜
(
しゃ
)
に構えながら葉子をにらみつけた。葉子はその目の前で海から出る夏の月のようにほほえんで見せた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
鞭
(
むち
)
を
斜
(
しゃ
)
に構えて、気取ったお辞儀をすると、金ピカ猛獣使いは、舞台の隅にしりぞいて、道具方に合図をした。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「イヤ、これはどうも恐れいった。お奉行様が小倉の袴の股立ちをとって、六尺棒を
斜
(
しゃ
)
にかまえて、夜風に吹かれて立ってるかッてンだ。相当
奇抜
(
きばつ
)
な娘だナ、こいつは」
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
見台を前にして、
張扇
(
はりおうぎ
)
でなく普通の
白扇
(
はくせん
)
を
斜
(
しゃ
)
に構えたところなんぞも、調子が変っている。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
なが年の
苦界
(
くがい
)
づとめを、はっきりとひとの眼に告げる
痩
(
や
)
せ細った身体を
斜
(
しゃ
)
にかまえて
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
曲彔
(
きょくろく
)
に
拠
(
よ
)
る住持の三要は正面に
控
(
ひか
)
え、東側は大衆大勢。西側に昭青年一人。問答の声はだんだん高くなって行きます。衣の袖を
襷
(
たすき
)
に結び上げ、
竹箆
(
しっぺい
)
を
斜
(
しゃ
)
に構えた僧も二三人見えます。
鯉魚
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
枝は
頑固
(
がんこ
)
で、かつて
曲
(
まが
)
った事がない。そんなら
真直
(
まっすぐ
)
かと云うと、けっして真直でもない。ただ真直な短かい枝に、真直な短かい枝が、ある角度で衝突して、
斜
(
しゃ
)
に構えつつ全体が出来上っている。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
呂昇は無頓着に三絃取って
斜
(
しゃ
)
に構え、さっさと語り出した。
咽喉
(
のど
)
をいためて
療治
(
りょうじ
)
中だと云うに、相変らず美しい声である。少しは加減して居る様だが、調子に乗ると吾を忘れて
声帯
(
せいたい
)
が
震
(
ふる
)
うらしい。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
聞いて横から飾り十手を
斜
(
しゃ
)
に構えながら、ここぞとばかりしゃきり出たのは、だれならぬおしゃべり屋の伝あにいです。
右門捕物帖:26 七七の橙
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
はなやかな下着を浴衣の所々からのぞかせて、帯もなくほっそりと途方に暮れたように身を
斜
(
しゃ
)
にして立った葉子の姿は、男の目にはほしいままな刺激だった。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
月江も三日月
形
(
なり
)
の短い
刃
(
やいば
)
を
斜
(
しゃ
)
にかまえて、寄らばと強く身を守りました。——しかし、彼女がそうして
刃
(
は
)
向えば刃向うほど、血を見た情炎の男は狂うばかりです。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、ひどく色気のある眼つきで
斜
(
しゃ
)
に顎十郎の顔を見あげる。顎十郎は恐悦しながら盃を取りあげ
顎十郎捕物帳:16 菊香水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
おまけに、こう
斜
(
しゃ
)
にかまえて、延べ鏡のような刀身を陽にすかして、ためつすがめつしているようすが、どうも十郎兵衛をこの上ない眼ききのように見せるからたまらない。
寛永相合傘
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
何事ならんと
馳
(
は
)
せ集まった者共を前に置いて、先生は
薬研
(
やげん
)
の軸を
斜
(
しゃ
)
に構え
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
十手を
斜
(
しゃ
)
に握りとったあいきょう者を先頭にして、なぞのかぎを追う主従ふたりは、その場から点々と残されている粂五郎の足跡を拾いはじめました。
右門捕物帖:27 献上博多人形
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
車夫は葉子を助けようにも
梶棒
(
かじぼう
)
を離れれば車をけし飛ばされるので、
提灯
(
ちょうちん
)
の
尻
(
しり
)
を
風上
(
かざかみ
)
のほうに
斜
(
しゃ
)
に向けて目八
分
(
ぶ
)
に上げながら何か大声に後ろから声をかけていた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
けれど彼はただ顔を
斜
(
しゃ
)
に向けて威儀だけをつくろッていた。自分は神でないとだけしかいわなかった。
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あの白髪
赭顔
(
しゃがん
)
のおごそかな姿が、鉄扇を
斜
(
しゃ
)
に構えて、そこにすわっていられたものだが。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
白扇を
斜
(
しゃ
)
にかまえて、「志津子さんでしたか、何年前でしたか、いちどお目にかかりました。引揚船で上海からお帰りなったことは聞いていましたが、かけちがってお目にもかかれず」
猪鹿蝶
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
彼は膝を組み直して、一管を
斜
(
しゃ
)
に構えました。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
同時に、伝六が息ばりながら十手を
斜
(
しゃ
)
に構えとって、たちまち音をあげたのは当然でした。
右門捕物帖:25 卒塔婆を祭った米びつ
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
『山岡屋、てめえ、
煙管
(
きせる
)
を
斜
(
しゃ
)
につかんで、何うする気だ。——七百両を
乗
(
のり
)
でゆけば、取り分は半分になる。勿体ねえから嫌だというんだ。おらあ一人であの金を
揚
(
あ
)
げるんだから』
魚紋
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
白扇を
斜
(
しゃ
)
にかまえて、「ああ、志津子さん、何年前でしたか、いちどお目にかかりました。引揚船で、上海からお帰りなったことは聞いていましたが、かけちがってお目にもかかれず」
姦(かしまし)
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
白扇を
斜
(
しゃ
)
に構えて、どなりました。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
と鐚は扇子を
斜
(
しゃ
)
に構え
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
卜斎はなんにも知らず、がんこな
煙管
(
きせる
)
を
斜
(
しゃ
)
にもって、スパリ、スパリ、とふかしている。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と見るや退屈男は、ついと身を泳がして、傍らの捕り手が
斜
(
しゃ
)
に構えていた六尺棒を手早く奪いとるや、さっと狙いをつけて馬腹目ざしながら投げつけたのは咄嗟の早業の棒がらみです。
旗本退屈男:07 第七話 仙台に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
特に、持ち出して来たらしい
白檀骨
(
びゃくだんぼね
)
の
上海
(
シャンハイ
)
扇子を、胸のあたりへ、
斜
(
しゃ
)
に持っている。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
白い
衫衣
(
すずし
)
に、
唐団扇
(
からうちわ
)
を持ち、からだを
斜
(
しゃ
)
に脇息から、藤夜叉の姿を眺めていた。
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お甲は、
床几
(
しょうぎ
)
へ、片手をついて、体を
斜
(
しゃ
)
にして振向きながら
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ぱっと、一僧が、槍を
斜
(
しゃ
)
に持ったまま、躍り出した。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
丈八の蛇矛を
斜
(
しゃ
)
に構えて、かっとにらみつけた。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“斜”の意味
《名詞》
(シャ 主に例句で)正面からずれた位置。
(出典:Wiktionary)
斜
常用漢字
中学
部首:⽃
11画
“斜”を含む語句
傾斜
斜向
斜違
斜面
斜視
左斜
斜陽
傾斜地
狭斜
斜交
斜子
黒斜子
斜上
斜坑
斜後
傾斜面
横斜
斜掛
第二斜檣
緩傾斜
...