持前もちまへ)” の例文
其れを知らぬ程の良人をつとでは無いが、持前もちまへ負嫌まけぎらひな気象と妻をいたはる心とから斯う確乎きつぱりした事を云ふのであると美奈子は思つて居る。
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
チッバ 無理往生むりわうじゃう堪忍かんにん持前もちまへ癇癪かんしゃくとの出逢であひがしらで、挨拶あいさつそりあはぬゆゑ、肉體中からだぢゅう顫動ふるへるわい。引退ひきさがらう。
それともはやし雜木ざふきはまだ持前もちまへさわぎをめないで、路傍みちばたこずゑがずつとしなつておしなうへからそれをのぞかうとすると、うしろからも/\はやしこずゑが一せいくびす。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
見ては居られぬが私しの持前もちまへゆゑ是非ぜひなく彼の人々をかくまひしに相違さうゐ御座なく候何れ双方さうはうたゞしの上は明白に相分り申べく殊に只今の御用人中は非道ひだうの者共にて殿へ惡智慧わるぢゑ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
またもとの俗骨ぞくこつにかへり、われも詩を作ることを知りたるならば、へたながらも和韻わゐんと出かけて、先生をおどろかしたらんものをとまけだましひ、人うらやみ、出来できことをコヂつけたがる持前もちまへ道楽だうらくおこりて
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
奧樣おくさまはおせいをりふしふさしようにもおあそばすし眞實しんじつわるときくらところいてらつしやるがお持前もちまへふたらば、んなにか貴孃あなた吃驚びつくりいたしまして、んでもこと、それは大層たいそう神經質しんけいしつ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その人の心の持前もちまへといふやうな事になる。
気質と文章 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
なんぢゃ? 薔薇ばらはなは、ほかんでも、おなじやうにがする。ロミオとても其通そのとほり、ロミオでなうても、てゝも、その持前もちまへのいみじい、たふととくのこらう。