トップ
>
手焙
>
てあぶり
ふりがな文庫
“
手焙
(
てあぶり
)” の例文
『來ないのは來ないでせうなア。』と、校長は獨語の樣に意味のないことを言つて、卓の上の
手焙
(
てあぶり
)
の火を、煙管で突ついてゐる。
足跡
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
道場の前を通つて、下男部屋を覗くと、
大痕痘
(
おほあばた
)
の熊吉が、庭の掃除をすませ、
手焙
(
てあぶり
)
を股火鉢にして、これだけは贅澤らしい煙草を
燻
(
くゆ
)
らせてをります。
銭形平次捕物控:106 懐ろ鏡
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
床間
(
とこのま
)
には百合の花も在らず
煌々
(
こうこう
)
たる
燈火
(
ともしび
)
の下に座を設け、
膳
(
ぜん
)
を据ゑて
傍
(
かたはら
)
に
手焙
(
てあぶり
)
を置き、茶器
食籠
(
じきろう
)
など
取揃
(
とりそろ
)
へて、この一目さすがに旅の
労
(
つかれ
)
を忘るべし。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
田口はこの答を聞いて、
手焙
(
てあぶり
)
の胴に当てた手を動かしながら、
拍子
(
ひょうし
)
を取るように、指先で
桐
(
きり
)
の
縁
(
ふち
)
を
敲
(
たた
)
き始めた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そして、金網のかかった
手焙
(
てあぶり
)
——桐の胴丸に、天の橋立の高蒔絵したのを、抱えこむように、身体を曲げて
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
▼ もっと見る
走るように書院に入ってきて
褥
(
しとね
)
につくと、甲斐守は
手焙
(
てあぶり
)
にもよらず、いきなり
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
博士は「玉の處へ
手焙
(
てあぶり
)
を
持
(
も
)
て來て置け」と言付けた。
半日
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
『来ないのは来ないでせうなア。』と、校長は
独語
(
ひとりごと
)
の様に意味のないことを言つて、
卓
(
つくゑ
)
の上の
手焙
(
てあぶり
)
の火を、煙管で
突
(
つつ
)
いてゐる。
足跡
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
道場の前を通って、下男部屋を覗くと、
大痘痕
(
おおあばた
)
の熊吉が、庭の掃除をすませ、
手焙
(
てあぶり
)
を股火鉢にして、これだけは
贅沢
(
ぜいたく
)
らしい煙草を
燻
(
くゆ
)
らせております。
銭形平次捕物控:106 懐ろ鏡
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
やがて
名宛
(
なあて
)
を
認
(
したた
)
め終ると、「ただ通り一遍の
文言
(
もんごん
)
だけ並べておいたらそれで好いでしょう」と云いながら、
手焙
(
てあぶり
)
の前に
翳
(
かざ
)
した手紙を
敬太郎
(
けいたろう
)
に読んで聞かせた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
深雪が、顔を上げると、拝領物を飾る棚、重豪公の手らしい、横文字を書いた色紙、金紋の手箪笥、琴などが、綺麗に
陳
(
なら
)
んでいた。そして、その前で、梅野は、紙張りの
手焙
(
てあぶり
)
へ、手をかざしていた。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
「いろんな物に、抱き茗荷が附いて居るが、他には、羽二重の紋服と、
蒔繪
(
まきゑ
)
の
手焙
(
てあぶり
)
に向ひ鶴の紋が附いて居ますよ」
銭形平次捕物控:302 三軒長屋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
宗助
(
そうすけ
)
は
暗
(
くら
)
い
座敷
(
ざしき
)
の
中
(
なか
)
で
默然
(
もくねん
)
と
手焙
(
てあぶり
)
へ
手
(
て
)
を
翳
(
かざ
)
してゐた。
灰
(
はひ
)
の
上
(
うへ
)
に
出
(
で
)
た
火
(
ひ
)
の
塊
(
かた
)
まり
丈
(
だけ
)
が
色
(
いろ
)
づいて
赤
(
あか
)
く
見
(
み
)
えた。
其
(
その
)
時
(
とき
)
裏
(
うら
)
の
崖
(
がけ
)
の
上
(
うへ
)
の
家主
(
やぬし
)
の
家
(
うち
)
の
御孃
(
おぢやう
)
さんがピヤノを
鳴
(
なら
)
し
出
(
だ
)
した。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
平は、こう一言云って、
手焙
(
てあぶり
)
の火を、いじりながら
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
宗助は暗い座敷の中で
黙然
(
もくねん
)
と
手焙
(
てあぶり
)
へ手を
翳
(
かざ
)
していた。灰の上に出た火の
塊
(
かた
)
まりだけが色づいて赤く見えた。その時裏の
崖
(
がけ
)
の上の
家主
(
やぬし
)
の家の御嬢さんがピヤノを鳴らし出した。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
湯呑
(
ゆのみ
)
のような深い
茶碗
(
ちゃわん
)
に、書生が番茶を一杯
汲
(
く
)
んで出した。
桐
(
きり
)
を
刳
(
く
)
った
手焙
(
てあぶり
)
も同じ書生の手で運ばれた。柔かい
座蒲団
(
ざぶとん
)
も同じ男が勧めてくれただけで、女はいっさい出て来なかった。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
宗助
(
そうすけ
)
と
小六
(
ころく
)
が
手拭
(
てぬぐひ
)
を
下
(
さ
)
げて、
風呂
(
ふろ
)
から
歸
(
かへ
)
つて
來
(
き
)
た
時
(
とき
)
は、
座敷
(
ざしき
)
の
眞中
(
まんなか
)
に
眞四角
(
まつしかく
)
な
食卓
(
しよくたく
)
を
据
(
す
)
ゑて、
御米
(
およね
)
の
手料理
(
てれうり
)
が
手際
(
てぎは
)
よく
其上
(
そのうへ
)
に
並
(
なら
)
べてあつた。
手焙
(
てあぶり
)
の
火
(
ひ
)
も
出掛
(
でがけ
)
よりは
濃
(
こ
)
い
色
(
いろ
)
に
燃
(
も
)
えてゐた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
宗助
(
そうすけ
)
と
小六
(
ころく
)
が
手拭
(
てぬぐい
)
を下げて、
風呂
(
ふろ
)
から帰って来た時は、座敷の真中に真四角な食卓を
据
(
す
)
えて、
御米
(
およね
)
の手料理が
手際
(
てぎわ
)
よくその上に並べてあった。
手焙
(
てあぶり
)
の火も出がけよりは濃い色に燃えていた。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
親爺は刻み
烟草
(
たばこ
)
を吹かすので、手のある長い烟草盆を前へ引き付けて、時々灰吹をぽんぽんと
叩
(
たた
)
く。それが静かな庭へ響いて
好
(
い
)
い音がする。代助の方は金の吸口を四五本
手焙
(
てあぶり
)
の中へ並べた。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼女が最後に私の書斎に
坐
(
すわ
)
ったのはその次の日の晩であった。彼女は自分の前に置かれた
桐
(
きり
)
の
手焙
(
てあぶり
)
の灰を、
真鍮
(
しんちゅう
)
の
火箸
(
ひばし
)
で突ッつきながら、悲しい身の上話を始める前、黙っている私にこう云った。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
手
常用漢字
小1
部首:⼿
4画
焙
漢検1級
部首:⽕
12画
“手”で始まる語句
手
手拭
手前
手巾
手繰
手許
手向
手綱
手際
手燭