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憂身
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うきみ
ふりがな文庫
“
憂身
(
うきみ
)” の例文
「マーメイド・タバン」の一隅で詩作に
耽
(
ふけ
)
ったり、手製の望遠鏡で星を眺めたり、浮気な恋に
憂身
(
うきみ
)
を
窶
(
やつ
)
したりしているのであった。
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
ひとくちに言うと、先生は、道徳は進歩するものか退歩するものかという、一見、迂遠な学問に
憂身
(
うきみ
)
を
窶
(
やつ
)
していられるのである。
犂氏の友情
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
鎌倉府内では、月十二回の上覧闘犬があり、武家やしきでさえ闘犬を養って、それを美食で肥えさすのに、
憂身
(
うきみ
)
をやつさぬ者は少ないとか。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私の知っている兄弟で、弟の方は家に
引込
(
ひっこ
)
んで書物などを読む事が好きなのに
引
(
ひ
)
き
易
(
か
)
えて、兄はまた
釣道楽
(
つりどうらく
)
に
憂身
(
うきみ
)
をやつしているのがあります。
私の個人主義
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
まだ其上に
腕車
(
くるま
)
やら自転車やらお馬やらお馬車やら折々は
故
(
わざ
)
と手軽に甲斐々々しい洋服出立のお
歩行
(
ひろひ
)
で何から何まで一生懸命に
憂身
(
うきみ
)
を
扮
(
やつ
)
された。
犬物語
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
(著)
▼ もっと見る
事の始めはくだくだしければ言はず、何れ
若氣
(
わかげ
)
の春の駒、止めても止まらぬ戀路をば行衞も知らず踏み迷うて、
窶
(
やつ
)
す
憂身
(
うきみ
)
も誰れ故とこそ思ひけめ。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
堕落して行く藩閥と政党を横目に
睨
(
にら
)
んで、これを脅威し、戦慄せしめつつ、無けなしの
銭
(
ぜに
)
を掻き集めては朝鮮、満蒙等の大陸的工作に
憂身
(
うきみ
)
を
窶
(
やつ
)
して来た。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
都のお勤めからは手前もいよいよ身を引潮の
漁
(
いさ
)
り歌と云うわけで、……何となくすずろな
憂身
(
うきみ
)
をやつしておりました最中だったもんで、何と申しますか
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
ある薩摩の殿様に、九十を過ぎても色々の道楽に
憂身
(
うきみ
)
を
窶
(
やつ
)
さないでは居られないやうな達者な人があつた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
彼はその
偽
(
いつはり
)
と
真
(
まこと
)
とを思ふに
遑
(
いとま
)
あらずして、遣る方も無き
憂身
(
うきみ
)
の憂きを、
冀
(
こひねがは
)
くば跡も留めず語りて
竭
(
つく
)
さんと、弱りし心は雨の柳の、漸く風に揺れたる
勇
(
いさみ
)
を
作
(
な
)
して
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
と、
桂子
(
かつらこ
)
の館で笑い上戸の稽古に、
憂身
(
うきみ
)
をやつしている一人の男の、その笑い方を知っているだけに、小次郎の笑い方は堂に入っていて、なかなか立派なものであった。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
あの源様にたいして妙なこころを動かし、色のたてひきに
憂身
(
うきみ
)
にやつしているらしいとのこと。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
つらからば一筋につらかれ、とてもかくても
憂身
(
うきみ
)
のはてはとねぢけゆく心に、神も仏も敵とおもへば、恨みは誰れに訴へん、
漸々
(
やうやう
)
尋常
(
なみ
)
ならぬ道に
尋常
(
なみ
)
ならぬ思ひを馳せけり。
琴の音
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
嘘の白々しい説明に
憂身
(
うきみ
)
をやつしているが、俗物どもには、あの
間隙
(
かんげき
)
を埋めている悪質の虚偽の説明がまた、こたえられずうれしいらしく、俗物の讃歎と
喝采
(
かっさい
)
は、たいていあの辺で起るようだ。
苦悩の年鑑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
足一
度
(
たび
)
学校を去りて実際社会に出ると、書籍などは一切束ねてしまって振り向いて見ず、その癖不健全なる娯楽には随分
憂身
(
うきみ
)
を
窶
(
やつ
)
して、これがために身心の打ち壊れるを知らず、とかくする
中
(
うち
)
我輩の智識吸収法
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
極楽
(
ごくらく
)
から
剰銭
(
つりせん
)
を
取
(
と
)
る
年
(
とし
)
で、
城
(
じやう
)
ヶ
沼
(
ぬま
)
の
女
(
をんな
)
の
影
(
かげ
)
に
憂身
(
うきみ
)
を
窶
(
やつ
)
すお
庇
(
かげ
)
には、
動
(
うご
)
く、
働
(
はたら
)
く、
彫刻物
(
ほりもの
)
は
活
(
い
)
きて
歩行
(
ある
)
く……
独
(
ひと
)
りですら/\と
天守
(
てんしゆ
)
へ
上
(
あが
)
つて、
魔物
(
まもの
)
の
閨
(
ねや
)
に
推参
(
すゐさん
)
する、が、
張
(
はり
)
も
意地
(
いぢ
)
も
着
(
つ
)
いて
居
(
を
)
るぞ
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
いや、何もむりに、訊こうたあいわねえよ。当節のお大名や旗本たちが、ただのお部屋様や妾遊びにも飽いて、
遊廓
(
くるわ
)
通いや蔭間買いに
憂身
(
うきみ
)
を
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
とにかくそんなに
憂身
(
うきみ
)
を
窶
(
やつ
)
してどうするつもりか分らん。第一、足が四本あるのに二本しか使わないと云うのから贅沢だ。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
其の御心の強さに、
彌増
(
いやま
)
す思ひに堪へ難き重景さま、世に時めく身にて、
霜枯
(
しもがれ
)
の
夜毎
(
よごと
)
に只一人、
憂身
(
うきみ
)
をやつさるゝも戀なればこそ、横笛樣、
御身
(
おんみ
)
はそを哀れとは
思
(
おぼ
)
さずか。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
それで、この頃のお殿様は、ただただ鳰鳥のご機嫌を取ることばかりに
憂身
(
うきみ
)
をやつし、あの鳰鳥の申すことと云えば、どのような無理でも、難題でも、おきき遊ばすのでございます。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その春挙氏も、この頃ではすつかりそんな遊びを
止
(
よ
)
して一週に一度京都絵画専門学校へ出て来る外は、おとなしく
江州
(
がうしう
)
膳所
(
ぜぜ
)
の別荘に引籠つて、石集めといふもの好きな道楽に
憂身
(
うきみ
)
を
窶
(
やつ
)
してゐる。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
撮影し続けたものであろう……堂々たる大学教授の身分でありながら、斯様な鼠と同様の所業に
憂身
(
うきみ
)
をやつすとは、何という
醜体
(
しゅうたい
)
であろう……と諸君は定めし不審に思われるで御座いましょうが
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そういう仲間にいれば、自分もまた、生涯その醜い争いに
憂身
(
うきみ
)
をやつしていなければ、たちまち、他から
陥
(
おと
)
しいれられてしまう。どうして、そういう所に、人間の安住があろうか。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
秋萩
(
あきはぎ
)
の
葉末
(
はずゑ
)
に置ける露のごと、
空
(
あだ
)
なれども、中に寫せる月影は
圓
(
まどか
)
なる望とも見られぬべく、今の
憂身
(
うきみ
)
をつらしと
喞
(
かこ
)
てども、戀せぬ前の
越方
(
こしかた
)
は何を樂みに暮らしけんと思へば、涙は此身の命なりけり。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
日
(
ひ
)
の
心地
(
こゝち
)
、いまの
憂身
(
うきみ
)
に
白羊宮
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
、
薄田淳介
(著)
尾羽
(
をば
)
は
憂身
(
うきみ
)
をさへぎりて
白羊宮
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
、
薄田淳介
(著)
吾世の祕密、——
憂身
(
うきみ
)
の
泣菫詩抄
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
憂
常用漢字
中学
部首:⼼
15画
身
常用漢字
小3
部首:⾝
7画
“憂身”で始まる語句
憂身独