トップ
>
悦
>
えつ
ふりがな文庫
“
悦
(
えつ
)” の例文
ターネフはひとりで
悦
(
えつ
)
に入っている。実におそろしい破壊計画であった。こういう計画をたてる世界
骸骨化
(
がいこつか
)
クラブの大司令は、鬼か魔か。
爆薬の花籠
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
此間蟒が酒をぶつかけた着物の仕立直しを持つて來た、おみつを、無理に自分の部屋に連れて來させて、野呂は
悦
(
えつ
)
に入つて居るのださうだ。
大阪の宿
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
悦
(
えつ
)
に入った顔である。もう、あの女はどこへ持って行こうが、どうしようが、完全におれのものだと安んじているものらしい。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
池鰹鮒
(
ちりう
)
家の息女お
悦
(
えつ
)
の
方
(
かた
)
、———後の
松雪院
(
しょうせついん
)
は、河内介が多聞山の城に帰ってからまだ半年もたゝない
永禄
(
えいろく
)
元年の三月に、
桐生
(
きりゅう
)
家に
輿入
(
こしい
)
れした。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「それは格好な人がある。私の姉
悦
(
えつ
)
が、今日まで独身にて私の家にいる。それに一軒持たして、幸吉を養子に、同時に戸主にしては
如何
(
いかが
)
でしょう」
幕末維新懐古談:22 徴兵適齢のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
▼ もっと見る
見物に交つた八五郎は、
兩手
(
りやうて
)
を揉み合せて、獨り
悦
(
えつ
)
に入るのを、並んで見て居る平次が何遍
肱
(
ひぢ
)
で突いたかわかりません。
銭形平次捕物控:315 毒矢
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
これは五条の白拍子の、千山というのを胸へ寄らせ、
悦
(
えつ
)
に入っている坊主頭の、河越三河入道をニラメながら
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
日頃田崎と仲のよくない
御飯焚
(
ごはんたき
)
のお
悦
(
えつ
)
は、田舎出の迷信家で、顔の色を変えてまで、お狐さまを殺すはお
家
(
いえ
)
の
為
(
た
)
めに不吉である事を説き、田崎は
主命
(
しゅめい
)
の尊さ
狐
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
氏長はいよいよ
悦
(
えつ
)
に入って、いっしょに歩いたが、しばらくして手を一度ぬこうとしたが、放さない。
大力物語
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
忠作は帳面と算盤を見比べながら、ひとり
悦
(
えつ
)
に
入
(
い
)
るのを、お絹は面白くもない
面
(
かお
)
をして
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
一と二〇で酒を一升買い、〇・三〇で干物とうぐいす豆と
佃煮
(
つくだに
)
を買い、残りはかあさんに渡した。するとかあさんは
悦
(
えつ
)
にいって、岸がんのことを福の神だねえと云ったそうである。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼は
悦
(
えつ
)
に入ると、きまって口数が多くなるのだが、このときはなんとなく控え目にしているようであった。ドミトリイ・フョードロヴィッチのことなどは、おくびにも出さなかった。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
此処
(
ここ
)
が千両だ、と大きな眼を細くして彼は
悦
(
えつ
)
に入る。向うの畑で、本物の百姓が長柄の鍬で、
後退
(
あとしざ
)
りにサクを切るのを
熟々
(
つくづく
)
眺めて、彼運動に現わるゝリズムが何とも云えぬ、と賞翫する。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
そして其奴等の口眞似をして一人で
悦
(
えつ
)
に入つてるんだ、淫賣婦が馴染客に情死を迫られて、迯げ出すところを後から斬り附けられた記事へ、個人意識の強い近代的女性の標本だと書いた時は
我等の一団と彼
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
薔薇
(
ばら
)
の匂いに小鼻をうごめかしては
悦
(
えつ
)
に入ったりするのであった。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
義だ! 貞節だ! などというが、真善の小売りをして
悦
(
えつ
)
に入っている販売人を見よ。人はいわゆる宗教さえもあがなうことができる。それは実のところたかの知れた倫理学を花や音楽で清めたもの。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
つまらぬことを考えて一人で
悦
(
えつ
)
に
入
(
い
)
っていた。
南画を描く話
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
彼は密かに陰険な
悦
(
えつ
)
を洩らして、投げ槍小六と金井一角の両助太刀を誘い出し、かねて足場まで見ておいた柳堤に身を隠した。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
○市中電車の雑沓と動揺に乗じ女客に対して種々なる
戯
(
たわむれ
)
をなすものあるは人の知る処なり。釣皮にぶらさがる女の
袖口
(
そでぐち
)
より脇の下をそつと覗いて独り
悦
(
えつ
)
に
入
(
い
)
るものあり。
猥褻独問答
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
彼は
悦
(
えつ
)
に
入
(
い
)
って、
頤
(
あご
)
のさきを指でひねりまわしながら、室内を見まわした。セザンヌが描いた南フランス風景の額がかかっている。南洋でとれためずらしい貝殻の置き物がある。
脳の中の麗人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
眞砂町の喜三郎は、泥だらけの脇差を振り廻して、すつかり
悦
(
えつ
)
に入つて居ります。
銭形平次捕物控:099 お篠姉妹
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
するとかあさんは
悦
(
えつ
)
にいって、岸がんのことを福の神だねえと云ったそうである。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それを見たとき、勝平は煮えたぎっている湯を、飲まされたような、
凄
(
すさま
)
じい気持になっていた。ニヤリ/\と
悦
(
えつ
)
に入っているらしいわが子の顔が、アリ/\と目に見えるように思った。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
自然の容色のまだ衰えないことを、ひとり
悦
(
えつ
)
に
入
(
い
)
っているようです。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
弁馬はこう自嘲すると共に、すぐ明け方の夢の中から、お
悦
(
えつ
)
の
眸
(
め
)
と、角三郎の顔だけを脳膜にぼんやり映し出していた。
御鷹
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
瑠璃子の今宵に限って、温かい態度に、勝平は心から
悦
(
えつ
)
に入っているのだった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
平次はすつかり
悦
(
えつ
)
に入つて、呆氣に取られて居るガラツ八を顧みました。
銭形平次捕物控:014 たぬき囃子
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
何の気もつかず掘ると、手に従って赤貝や潮吹や馬鹿貝や
蛤
(
はまぐり
)
がぞくぞく取れるので、大いに
悦
(
えつ
)
に入って
漁
(
あさ
)
っていると、そこへ
俄然
(
がぜん
)
豆腐屋の
喇叭
(
らっぱ
)
のようなものを吹き立てて、偉大なる壮漢が現われた。
青べか日記:――吾が生活 し・さ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ネッドはひとりで
悦
(
えつ
)
に入っていた。
火星探険
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
とかれは、ふと思いついた胸中の
奇策
(
きさく
)
に、ニタリと
悦
(
えつ
)
をもらしたが、そのとき、なんの気なしに
天井
(
てんじょう
)
を見あげるや
否
(
いな
)
、かれは、全身の血を氷のごとく
冷
(
つめ
)
たくして
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「百兩の茶碗、五十兩の茶入。こいつは何んとか言ふ坊さんがのたくらせた
蚯蚓
(
みゝず
)
で、こいつは
天竺
(
てんぢく
)
から渡つた水差しだと、獨りで
悦
(
えつ
)
に入つて居るうちはよかつたが、——人の怨みは怖いね、親分」
銭形平次捕物控:144 茶碗割り
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
兄はひとりで
悦
(
えつ
)
に
浸
(
ひた
)
っていました。
崩れる鬼影
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ご主君の方はその青い
艶
(
つや
)
やかな
若入道
(
わかにゅうどう
)
の
頭
(
つむり
)
から
額
(
ひたい
)
へかけてぼうと上気をみせながら、どこかには残忍な
悦
(
えつ
)
を持った眼が生き生きと
獣
(
けもの
)
めくまで主膳を見すえているのだった。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
八五郎はすつかり
悦
(
えつ
)
に入つて、揉手などをして居ります。
銭形平次捕物控:174 髷切り
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
と署長は一人で
悦
(
えつ
)
に
入
(
い
)
っていた。
人間灰
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
天下の色男はわしかしらと、長い
顎
(
あご
)
を抑えてニヤリと
悦
(
えつ
)
に入った先生は、買物に入った女房を店の外で待っている男のように、そこで再び彼女が出て来るのを待っている。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
八五郎はすっかり
悦
(
えつ
)
に入って、揉手などをして居ります。
銭形平次捕物控:174 髷切り
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
方丈の客は、やがてお通も見えたもので、曲がりかけていたお
冠
(
かんむり
)
もやや直り、
悦
(
えつ
)
に入って、
酒杯
(
さかずき
)
もかさね、あから顔のどじょう
髯
(
ひげ
)
に対立して、眼じりもおもむろに下がって来た。
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これでいいと、ひとりで読みなおして、ひとりで
悦
(
えつ
)
に
入
(
い
)
っていた。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
画匠が大作を描き上げたときのような
悦
(
えつ
)
に入って独り手を打った。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ひどく独りで
悦
(
えつ
)
に入っていた。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“悦”の解説
悦(えつ)は、漢姓の一つ。『鄭通志』、商の武丁に仕えた大臣が姓とした。北魏の時代に昌黎郡を本貫とする鮮卑族の姓として、悦綰、悦寿、悦真の名前が見える。昌黎悦氏は鮮卑の二字姓であった悦力氏を漢風に一字姓の悦氏に改めたものだと言われている。2023年においても、河北省や山西省、四川省で言い伝えられている。また、総人口1億人の稀姓とされた。
(出典:Wikipedia)
悦
常用漢字
中学
部首:⼼
10画
“悦”を含む語句
喜悦
大悦
法悦
恐悦
悦喜
光悦
愉悦
悦服
御喜悦
大恐悦
底悦喜
宗悦
悦気
不悦
打喜悦
満悦
悦楽
怡悦
本阿弥光悦
大満悦
...