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恰幅
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かっぷく
ふりがな文庫
“
恰幅
(
かっぷく
)” の例文
と、
揉手
(
もみで
)
をするのです。筋肉質の確りした中老人で、柔弱だったという伜の菊次郎に此べて、これはまた、武家あがりと言った
恰幅
(
かっぷく
)
です。
銭形平次捕物控:321 橋場の人魚
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ちらりとFさんの
恰幅
(
かっぷく
)
のいい肩が見え、その陰からまたしても
閃
(
ひら
)
めくやうに、姉さまの白い顔がこちらを振り返つたやうな気がしました。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
恰幅
(
かっぷく
)
のいいその和服姿から、往年のほっそりしたクララをただちに思い出すことはむずかしかったが、その横顔は
紛
(
まご
)
う方なき照子だった。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
大きな頬髯をたくわえた堂々たる
恰幅
(
かっぷく
)
の巡査が、三角帽をいただき、佩剣を吊って、橋のたもとに立っているのが眼についた。
鼻
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
弁当箱も大きいが、男の
恰幅
(
かっぷく
)
もすばらしい筋肉で出来上っていた。
硬緊
(
かたじま
)
りに肥えて、骨太で、
上背丈
(
うわぜい
)
がある。年頃は三十二、三という見当。
醤油仏
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
断って置きますが、私は頑健岩の
如
(
ごと
)
き
恰幅
(
かっぷく
)
ではありましたけれども、身の丈は五尺二寸ばかりで、先ず小男の部だったのです。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ことに、いま栄三郎と立ち合っている
恰幅
(
かっぷく
)
のいい侍はその首領とみえて、剣手体置きすべてが世のつねの盗人とは思われない。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
若くて、
恰幅
(
かっぷく
)
がよくて、運動好きのこの先生は、広い校庭に
遊動円木
(
ゆうどうえんぼく
)
や、
廻転塔
(
かいてんとう
)
など、つぎつぎに運動器械を
据
(
す
)
えつけて子供を喜ばせていた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
礼拝堂の
勤行
(
ごんぎょう
)
をおこなうために、彼はたいへんな費用をかけて、信心ぶかい、堂々たる
恰幅
(
かっぷく
)
の家庭牧師をやとっている。
ジョン・ブル
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
のち三年にして
関脇
(
せきわけ
)
の栄位を修め、
恰幅
(
かっぷく
)
貫禄
(
かんろく
)
ならびにその
美貌
(
びぼう
)
から、一世の人気をほしいままにしたということでした。
右門捕物帖:12 毒色のくちびる
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
デップリと肥満した、五十余りの未亡人はいかにも大貴族の大奥様らしく、大柄の堂々たる
恰幅
(
かっぷく
)
をしているが、顔色がひどく、冴えないように思われる。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
お母様が一度
御挨拶
(
ごあいさつ
)
をなすったので知りました。
著物
(
きもの
)
は持っていられません。女中でも取りに行くのでしょう。
恰幅
(
かっぷく
)
のいい、
赭
(
あか
)
ら顔の五十位の人でした。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
その伯父の両隣に伯母と牧田が坐っているのですが、これが又二人共
痩形
(
やせがた
)
で、殊に牧田は人並はずれた小男ですから、一層伯父の
恰幅
(
かっぷく
)
が引立って見えます。
黒手組
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
玄象道人は頭を
剃
(
そ
)
った、
恰幅
(
かっぷく
)
の
好
(
い
)
い老人だった。が、
金歯
(
きんば
)
を
嵌
(
は
)
めていたり、巻煙草をすぱすぱやる所は、一向道人らしくもない、下品な
風采
(
ふうさい
)
を具えていた。
奇怪な再会
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「誕生で思い出しましたが、父は今こそこんな
恰幅
(
かっぷく
)
をしていますけれど、生れた時は月足らずだったそうです」
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
伝兵衛のほうは、
綽名
(
あだな
)
の通り出ッ尻で鳩胸。
草相撲
(
くさずもう
)
の前頭とでもいった色白のいい
恰幅
(
かっぷく
)
。何から何まで反対なので、二人が並ぶと、
実以
(
じつもっ
)
て、対照の妙を極める。
平賀源内捕物帳:山王祭の大像
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
五十がらみの肉付きのいい
恰幅
(
かっぷく
)
に、くすんだ色の半纏姿が頼もしく似合っている柳美館だった。
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
軍属らしいと思ったら報道班員だと言う。仔熊のような眼をもった、
恰幅
(
かっぷく
)
のいい男だった。今は海軍の
糧秣
(
りょうまつ
)
係の仕事をして居るらしかった。宇治はその男の名に記憶があった。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
事実、湯島で会ったときより、はるかに
恰幅
(
かっぷく
)
も大きくひとがらに威も付いた。老中第一人というにふさわしい容態であるのに、この甲斐に対してはこらえ性がなくなるらしい。
樅ノ木は残った:02 第二部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
台所に湯気をあげている
銅薬缶
(
あかやかん
)
の大きいのを見て、天ぷらやの屋台に立っていた、
恰幅
(
かっぷく
)
のいい、額の長く光った、金物問屋の旦那さんの顔を、あんぽんたんまでが思出して、一緒に笑った。
旧聞日本橋:23 鉄くそぶとり(続旧聞日本橋・その二)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
外国の
恰幅
(
かっぷく
)
のよい男達の和服姿が、我々よりも立派に見えるに極っている。
日本文化私観
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
姉の方もまた自分の夢想を持っていた。ある御用商人、ある金持ちで
恰幅
(
かっぷく
)
のいい
糧秣係
(
りょうまつがか
)
り、あるいかにもお人よしの
夫
(
おっと
)
、ある成金、またはある県知事、そういうものを
蒼空
(
そうくう
)
のうちに夢みていた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
職長ぐらいな年配と
恰幅
(
かっぷく
)
の労働者。組合事務所の役員らしいカラーにネクタイをした男。なかに、黒いボヘミヤン・ネクタイをふっさり下げた長髪の男さえ混った。みんなフランス語の演説だった。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
恰幅
(
かっぷく
)
のよい長身に両手をだらりと垂らし、投出して行くような足取りで、一つところを何度も廻り返す。そうかと思うと、
紙凧
(
かみだこ
)
の糸のようにすっとのして行って、思いがけないような遠い売場に
佇
(
たたず
)
む。
老妓抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
小相撲
(
こずもう
)
ぐらい
恰幅
(
かっぷく
)
のある、節くれだった若い衆でしたが……
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
三十二三の痩せぎすながら見事な
恰幅
(
かっぷく
)
。少し
月代
(
さかやき
)
が伸びて、青白い顔も凄みですが、身のこなし、眼の配り、何となく尋常ではありません。
銭形平次捕物控:027 幻の民五郎
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
細川家に召抱えられて、豊前の小倉に居を定めてから、彼の
恰幅
(
かっぷく
)
や容子には、一倍と尾ヒレがついて来たように見られた。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
骨細のきゃしゃなあんどんをひきつけて坐っている町人のひとり……五十がらみのがっしりとした
恰幅
(
かっぷく
)
、色黒——鍛冶富!……鍛冶屋富五郎である。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
尤
(
もっと
)
も美代子さんのところでは家中が
皆
(
みんな
)
大きな存在だ。お父さんは東都義太夫界の
重鎮
(
じゅうちん
)
、
豊竹鐘太夫
(
とよたけかねだゆう
)
、内容から言っても
恰幅
(
かっぷく
)
見ても、決して小さい存在でない。
心のアンテナ
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
いや、威風ばかりではない。その気品、水ぎわ立った
恰幅
(
かっぷく
)
、直参なればこそ自ら溢れ出る威厳です。
旗本退屈男:04 第四話 京へ上った退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
草相撲
(
くさずもう
)
の
前頭
(
まえがしら
)
のような
恰幅
(
かっぷく
)
のいいからだをゆすりながら近づいて来て、この場のようすを眺めて
顎十郎捕物帳:11 御代参の乗物
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「的場へは済生学舎の書生さんたちが来ます。私がこんな
恰幅
(
かっぷく
)
をしているものですから、雲岳女史などいって
親
(
したし
)
んでくれます」などといって、はつは
嬉
(
うれ
)
しそうにしていました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
相手は
無頓着
(
むとんちゃく
)
にこう云いながら、
剃刀
(
かみそり
)
を当てたばかりの
顋
(
あご
)
で、沼地の画をさし示した。流行の茶の背広を着た、
恰幅
(
かっぷく
)
の
好
(
い
)
い、消息通を以て自ら任じている、——新聞の美術記者である。
沼地
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
会場なぞで、この堂々たる
恰幅
(
かっぷく
)
の未亡人が着けていたら、誰でもほんものと見誤ったかも知れぬ。ふだん見慣れている当主夫妻でさえ、母親の騒ぎ出すまでは、気が付かなかったという。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
半白
(
はんぱく
)
の坊主頭に、あから顔にひげのない、大商人らしい
恰幅
(
かっぷく
)
の人物だが、彼はまるで、お嬢さんの見張り番ででもあるように、彼女の一挙一動を見守りながら、そのあとをつけ廻していた。
黒蜥蜴
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
恰幅
(
かっぷく
)
のよい長身に両手をだらりと垂らし、投出して行くような足取りで、一つところを何度も廻り返す。そうかと思うと、
紙凧
(
たこ
)
の糸のようにすっとのして行って、思いがけないような遠い売場に
佇
(
たたず
)
む。
老妓抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
よく肥った、見事な
恰幅
(
かっぷく
)
、そのくせポトポト
澪
(
こぼ
)
れるような
艶
(
なまめ
)
かしさ、踊りで鍛えた二十三の美女は、全く形容のしようもない妾型の女でした。
銭形平次捕物控:074 二度死んだ男
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
と、黒地に
蔦
(
つた
)
つなぎを白抜きした狩衣はその背を初めて客と対等にして、でんと太鼓腹の
恰幅
(
かっぷく
)
を向けてみせた。
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お忍びらしい覆面、無紋の着流しに
恰幅
(
かっぷく
)
のいいからだをつつんだ武士だ。いかにも、大身らしいようす。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
恰幅
(
かっぷく
)
がいいというだけの一外交官の細君なんか、格別なんだとも思っていない。
だいこん
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
女中共は太って
恰幅
(
かっぷく
)
の好い一番年配の団さんを主人と思い、痩せた三輪さんとお父さんをお取り巻きの店員と信じ切っている。その証拠には何等の躊躇もなく先ず団さんからお給仕を始めた。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
熊と呼ばれた土佐犬は、いかにもその名にふさわしい
恰幅
(
かっぷく
)
である。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
色の浅黒い
恰幅
(
かっぷく
)
の立派な青年で、一本調子で突っかかったような物の言い方をするところなどは、決して人に好感を持たせる
質
(
たち
)
の人間ではありません。
銭形平次捕物控:105 刑場の花嫁
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
すると二人の
背後
(
うしろ
)
へいつの間にか近づいていた馬蹄の音があって、その馬上から
恰幅
(
かっぷく
)
のよい四十がらみの侍が
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
若わかしい、
恰幅
(
かっぷく
)
のいい庄吉だった。驚くべく夢とは関係のない、およそ現実な存在だった。
あの顔
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「ナカ/\
恰幅
(
かっぷく
)
の好い人ですな。二十貫ぐらいあるでしょう」
冠婚葬祭博士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
御母堂
(
ごぼどう
)
が、
恰幅
(
かっぷく
)
のいい、大きな身体をゆするようにして
キャラコさん:06 ぬすびと
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
薄い唇、
睡
(
ねむ
)
そうな眼、
甲
(
かん
)
の高い声、
恰幅
(
かっぷく
)
はなかなかよく、そればかりは
曾
(
かつ
)
て二本差したこともあるらしい人柄です。
銭形平次捕物控:282 密室
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
色の浅黒い、
薄
(
うす
)
あばたの男だった。——然し、
恰幅
(
かっぷく
)
は賛五郎よりもずっと
逞
(
たくま
)
しくて、堂々として見えた。
死んだ千鳥
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
つづいて、音もなくふすまがすべって、
恰幅
(
かっぷく
)
のいい
忠相
(
ただすけ
)
の姿が、うす闇をしょってはいってきた。老人の眼は、あわただしく、この夜の訪問者の手もとへゆく。が、忠相は何も持っていない……。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
“恰幅”の意味
《名詞》
恰幅(かっぷく)
身体の格好。体つき。
(出典:Wiktionary)
恰
漢検準1級
部首:⼼
9画
幅
常用漢字
中学
部首:⼱
12画
“恰”で始まる語句
恰好
恰
恰度
恰当
恰腹
恰形
恰服
恰々
恰人
恰好事