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恍
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とぼ
ふりがな文庫
“
恍
(
とぼ
)” の例文
「へへへ、そんなに
恍
(
とぼ
)
けなくたって、どうせそのうちに御披露があるんでしょうから……」と言って、為さんは少し膝を進めて
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
「ざまア見ろ、そんなすッ
恍
(
とぼ
)
けたことを言ってやがるから、しょうべん組などに出しぬかれるのだ。おい、俺の面をどうする」
顎十郎捕物帳:05 ねずみ
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
と
恍
(
とぼ
)
けて訊いてやりますと、母は今度は両袖の口を指先で掴んで背中が
痒
(
かゆ
)
いように左右に引いて、上体をやけのように身揺ぎ一つさせると同時に
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
恍
(
とぼ
)
けてもゐなければ笑ツてもゐない、何か物思に沈むでゐるのでなければ、一生懸命になツてゐるか威張ツてゐるか、大概此の型に
定
(
きま
)
ツてゐるから
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
と
恍
(
とぼ
)
けた顔。この
大業
(
おおぎょう
)
なのが
可笑
(
おかし
)
いとて、店に
突立
(
つッた
)
った
出額
(
おでこ
)
の小僧は、お千世の方を向いて、くすりと遣る。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
と
恍
(
とぼ
)
け顔に言
淀
(
よど
)
んで、見れば手に提げた
菎蒻
(
こんにゃく
)
を庭の
隅
(
すみ
)
へ置きながら
蹣跚
(
よろよろ
)
と其処へ倒れそうになりました。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
お
恍
(
とぼ
)
けなすっちゃいけませんね、多分あなた方が甲州から連れておいでになったんだろうと思いますが、ただ、ああして預かりっぱなしにしてお置きなさるのか
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「そんなにお
恍
(
とぼ
)
けなさらずと、知っておられるなら知っていると、正直に云って下さるがよい」
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
『は。もう夜が明けたかなんて
恍
(
とぼ
)
けて……。』と少し笑つて、『皆先生のお蔭で御座います。』
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
嫂のこの
恍
(
とぼ
)
け
方
(
かた
)
はいかにも嫂らしく響いた。そうして自分にはかえって
嬌態
(
きょうたい
)
とも見えるこの不自然が、
真面目
(
まじめ
)
な兄にはなはだしい不愉快を与えるのではなかろうかと考えた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
殺し
兼
(
かね
)
る者かと云ば段右衞門何穀平を殺したと
馬鹿
(
ばか
)
を云へ彼の穀平を殺せし者は
杉戸屋
(
すぎとや
)
富右衞門とて既に御仕置に成たり
然
(
しか
)
るに
汝
(
おの
)
れ今さら何を
吐
(
ぬか
)
す
恍
(
とぼ
)
けをるか
此女
(
このあま
)
めと
叱
(
しか
)
り付るを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
それが今ごろどうして来たのか、珍らしい人が来たものだと、わざと
恍
(
とぼ
)
けていた。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
青年は食事などよりも、もっと他に心を充していることがあるらしい様子で、ぼんやり娘の食物の皿を眺めおろしていた。その
恍
(
とぼ
)
けた大きな眸とぶつかった時、智子は少なからず狼狽した。
或る母の話
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
彼は飽までも
恍
(
とぼ
)
けた
真面目
(
まじめ
)
な顔をして、なほも続けた。
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
半「いかんよ
恍
(
とぼ
)
けちゃアいかんよ、知っているよ」
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「をかしな兄さん、
恍
(
とぼ
)
けとるのね、」
父の帰宅
(新字旧仮名)
/
小寺菊子
(著)
伯母さんがそら
恍
(
とぼ
)
けて出ていつて
銀の匙
(新字旧仮名)
/
中勘助
(著)
(
恍
(
とぼ
)
けることも名人)
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「いや、これは恐縮。……ご
腹立
(
ふくりゅう
)
では恐れいるが、しかし、どうもチト
恍
(
とぼ
)
けているな。……ひょろ松、お前そう思わないか」
顎十郎捕物帳:15 日高川
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「
然
(
さ
)
うだツたかな。」と
空
(
そら
)
ツ
恍
(
とぼ
)
けるやうに、ちらと空を
仰
(
あほ
)
ぎながら、「とすりや、そりや
俺
(
おれ
)
がお前を
擇
(
えら
)
んだのぢやない、俺の若い血がお前に
惚
(
ほ
)
れたんだらう。」
青い顔
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
「御父さんは上りにくいもので御座ますから、あんな酔った振をして、
恍
(
とぼ
)
けて参ったんで御座ます」
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
『ハ。モウ夜が明けたかなんて
恍
(
とぼ
)
けて……。』と少し笑つて、『
皆
(
みんな
)
先生のお蔭で御座います。』
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
いかにも
恍
(
とぼ
)
けたような、
滑稽
(
こっけい
)
な感じで、
恰
(
あたか
)
も汽車が今日の見合いを交ぜっ返してでもいるような、………それと云うのが、いつもいつも、雪子の縁談とか見合いの日とか云うと
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「先生、
恍
(
とぼ
)
けちゃいけません、それだからワザワザお聞き申しに来たのですよ」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
灰汁
(
あく
)
がぬけると見違えるような意気な芸者になったりするかと思うと、十八にもなって、
振袖
(
ふりそで
)
に鈴のついた
木履
(
ぽっくり
)
をちゃらちゃらいわせ、陰でなあにと
恍
(
とぼ
)
けて見せる
薹
(
とう
)
の立った半玉もあるのだった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
物産学の
泰斗
(
たいと
)
で
和蘭陀
(
オランダ
)
語はぺらぺら。日本で最初の電気機械、「
発電箱
(
エレキテル・セレステ
)
」を模作するかと思うと、
廻転蚊取器
(
マワストカートル
)
なんていう
恍
(
とぼ
)
けたものも発明する。
平賀源内捕物帳:萩寺の女
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
丁度そこへ来て、座りもせず、御辞儀もせず、
恍
(
とぼ
)
け
顔
(
がほ
)
に立つた小娘は、斯細君の二番目の児である。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
勘定のだらしのないのは、大抵のこの
稼業
(
かぎょう
)
の女の金銭問題にふれたり、手紙を書いたりするのを、ひどく
億劫
(
おっくうう
)
がる習性から来ているのであったが、わざと
恍
(
とぼ
)
けてずるをきめこんでいるのも多かった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「
恍
(
とぼ
)
けるなよ、我々が行くところへ来い」
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
恍
(
とぼ
)
けた、愛らしいともいうべきしぐさであるにもかかわらず、なぜか、それが私の心をうった。妙に心に残る情景だった。
海豹島
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
と
恍
(
とぼ
)
け顔に聞いて見る。書記は愚痴を酒の
肴
(
さかな
)
というような風で、初対面の者にも聞かせずにはいられない男ですから——碌々源の言うことも耳に止めないで、とんちんかんな
挨拶
(
あいさつ
)
。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「あれはワニちゃんでしょう。知っているくせに、
恍
(
とぼ
)
けるのはおやめなさい。洋館にいたシュラー・ハークネスのことよ」
我が家の楽園
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
丁度其中には、例の種牛も
恍
(
とぼ
)
け
顔
(
がほ
)
に交つて居た。見れば角は紅く血に染つた。驚きもし、
呆
(
あき
)
れもして、来合せた人々と一緒になつて取押へたが、其時はもう疲れて居た
故
(
せゐ
)
か、別に
抵抗
(
てむかひ
)
も為なかつた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
パラオ組は泣き寝入り、濠洲側はすっ
恍
(
とぼ
)
けているから世間には知れないが、なんぞかんぞでずいぶん殺されるらしいな。
三界万霊塔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
その時、爺さんが
恍
(
とぼ
)
けた顔を出して
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
……なにもかも承知のくせに、すッ
恍
(
とぼ
)
けてあたしを
嬲
(
なぶ
)
ろうとしたって、そううまくはゆきませんのさ。
顎十郎捕物帳:01 捨公方
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
などと、天照皇大神を
祀
(
まつ
)
った大神棚を背にして、偉そうなことをいって
恍
(
とぼ
)
けていた。
我が家の楽園
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
とても
恍
(
とぼ
)
けているわけにゆかなくなり、われながら、少しばかりムキになって
犂氏の友情
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
ジャッキーなんていって
恍
(
とぼ
)
けている、ウィルソンという男は、もとGHQの保健福祉局で、つまらない仕事をやっていたけど、じつは、陸軍省とかの情報少佐で、すごい権力のバックをもっている
あなたも私も
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「冗談なら、やめていただきましょう。ひとが真剣になっているときに、おひゃらかししたりするものではありません。出鱈目をいうなら、マニラにいるくらいのことでもいって、
恍
(
とぼ
)
けておきなさい」
我が家の楽園
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
恍
(
とぼ
)
けた手紙
顎十郎捕物帳:16 菊香水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
恍
漢検1級
部首:⼼
9画
“恍”を含む語句
恍惚
恍然
恍惚境
恍乎
見恍
空恍
寝恍
寝恍顔
恍惚郷
聞恍
淑奇恍惚
恍爾
恍然魅了
恍焉
恍気
大恍
恍惚感
恍呆
恍々惚々
寐恍