“恍然”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
うつとり36.8%
うっとり26.3%
こうぜん21.1%
くわうぜん5.3%
おっとり5.3%
ぼつ5.3%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
靜子は眼を細くして、恍然うつとりと兄の信吾の事を考へてゐた。去年の夏は、休暇がまだ二十日も餘つてる時に、信吾は急に言出して東京に發つた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
宇津木兵馬は、ひとり温泉の中に仰向けになって悠々ゆうゆうと浸って、恍然うっとりと物を考えているところへ、不意に後光がころげ込んで来ました。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
さながら人間の皮肉を脱し羽化うかして広寒宮裏こうかんきゅうりに遊ぶ如く、蓬莱ほうらい三山ほかに尋ぬるを用いず、恍然こうぜん自失して物と我とを忘れしが
良夜 (新字新仮名) / 饗庭篁村(著)
涙に満てる梅子の眼は熱情に輝きつ、ありし心の経過一時に燃え出でて恍然くわうぜんとして夢路を辿たどるものの如し
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
けれどその笑いがいかにも罪がなく、無邪気であった。で、何処か私の死んだ婆さんに似た処があって恍然おっとりした処がある。私は、この老婆は果して罪のない老婆であろうか。
老婆 (新字新仮名) / 小川未明(著)
随分不器量なだつたが、ミハイロは女に掛けては贅沢でないから、此娘このこが道具を持つてそばへ来た時から全然すつかり気に入つてしまつて、頭巾の蔭からぢろりかほを見られた時には、何だか恍然ぼつとなつた……はて
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)