恍然うっとり)” の例文
宇津木兵馬は、ひとり温泉の中に仰向けになって悠々ゆうゆうと浸って、恍然うっとりと物を考えているところへ、不意に後光がころげ込んで来ました。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
堀は、内儀の、白味がちな目をみつめていると、しんとした気になって、からだを羽毛か何かで撫でられているような恍然うっとりした気もちになってしまうのだった。
(新字新仮名) / 室生犀星(著)
やさしく云われてますますおそれ、恍然うっとりとして腕を組みしきりに考え込む風情ふぜい、正直なるが可愛らし。
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
わたしらのような子供でも実に恍然うっとりとして足をめずにはいられなかった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「恋慕」を聞き、すががきを聞き、「岡崎女郎衆」を聞いているうちに、いつかは知らず恍然うっとりとして、夢とうつつの境に抱き込まれました。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)