引越ひつこし)” の例文
えゝ、すつかり片付かたづけちまいました。其代り、うもほねが折れましたぜ。なにしろ、我々の引越ひつこしちがつて、大きな物が色々いろ/\あるんだから。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
荷物にもつといふは大八だいはちたゞひとくるまきたりしばかり、兩隣りやうどなりにおさだめの土産みやげくばりけれども、いへうち引越ひつこしらしきさわぎもなく至極しごく寂寞ひつそりとせしものなり。
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
頼み置て其身は神田三河町二丁目千右衞門店なる裏長屋うらながや引越ひつこし浪々らう/\の身となり惣右衞門七十五歳女房お時五十五歳せがれぢう五郎二十五歳親子三人かすかに其日を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
引越ひつこしをする時は是非手伝に来て呉れ」とたのんだ。丸で約束の出来たいへが、とうからある如き口吻である。さうしてすぐ帰つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
尋ねけるに是は四年あとに江戸表へ引越ひつこしたりと言にぞ吾助はたの木蔭こかげあめもる心地こゝちして尚も種々と聞合するに當時は江戸本郷邊に呉服物ごふくものの見世を出し當所より織物類おりものるゐ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
忌々いま/\しく思ひ仁田村の八と云ふ獵人かりうどたく引越ひつこしる處へ手先のかう八と云ふ者此事を嗅付かぎつ郡代役所ぐんだいやくしよへ引行入牢させけるをあに九郎右衞門聞こみ流石さすが憫然あはれに思ひ内々ない/\取繕とりつくろひを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
でもね、屏風びやうぶひとのこつてゐますよ。此間このあひだ引越ひつこしときに、いて、こりやそうさんのだから、今度こんだついでがあつたらとゞけてげたらいだらうつて、やすがさうつてゐましたつけ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あたまうへには廣告くわうこく一面いちめんわくめてけてあつた。宗助そうすけ平生へいぜいこれにさへかなかつた。何心なにごゝろなしに一番目ばんめのをんでると、引越ひつこし容易ようい出來できますと移轉會社いてんぐわいしや引札ひきふだであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
三千代みちよの声は、此時このとき急に生々いき/\きこえた。代助は引越ひつこしの事を丸で忘れてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
一日いちにちびればびただけ窮屈きゆうくつげたやう何所どこかでした。小六ころくにも丁度ちやうどそれとおなはゞかりがあつたので、られるかぎり下宿げしゆくにゐるはう便利べんりだとむねめたものか、つい一日いちにち/\と引越ひつこしさきおくつてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)