店口みせぐち)” の例文
平次と八五郎が鍵屋の店口みせぐちけて、お勝手口から入つて行くと、下女の取次に驚いて、主人の源兵衞が頭を出しました。
藏庫くら河岸かしそろつて、揚下あげおろしはふねぐに取引とりひきがむから、店口みせぐちはしもたおなこと煙草盆たばこぼんにほこりもかぬ。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
糸織いとおり小袖こそでかさねて、縮緬ちりめん羽織はおりにお高祖頭巾こそづきんせいたかひとなれば夜風よかぜいと角袖外套かくそでぐわいとうのうつりく、ではつてますると店口みせぐち駒下駄こまげたなほさせながら、太吉たきち
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お葉はゆるんだ帯を結び直して、店口みせぐち有合ありあう下駄を突ッ掛けると、お清はいよいよあやぶんで又抑留ひきとめた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
重吉は店口みせぐちに募集の貼紙はりがみが出してある処を見付け遠慮なく聞いて見るがいいというので、お千代は再び銀座へ出掛けたが表通おもてどおりにはそういう貼紙のしてある店が見当らない。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
二間の障子がすぐはまっている店口みせぐちに腰をかけて、まばらに通る往来ゆききの人を眺めていた。
あたかし、中形ちゅうがた浴衣ゆかた繻子しゅすの帯、雪の如き手に団扇うちわを提げて、店口みせぐち暖簾のれんを分け、月のまゆ差覗さしのぞいて
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
なにをもかへらず店口みせぐちから下駄げたいて筋向すぢむかふの横町よこちようやみ姿すがたをかくしぬ。
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おなじ半帕ハンケチでも、金澤かなざは貸本屋かしほんや若妻わかづまふのが、店口みせぐち暖簾のれんかたけた半身はんしんで、でれりとすわつて、いつも半帕ハンケチくちくはへて、うつむいてせたは、永洗えいせん口繪くちゑ艷冶えんやてい眞似まね
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
下座敷したざしきはいまだにきやくさわぎはげしく、おりき中座ちうざをしたるに不興ぶきようしてやかましかりしおりから、店口みせぐちにておやおかへりかのこゑくより、きやくおきざりに中坐ちうざするといふはうがあるか、かへつたらば此處こゝ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
とまた店口みせぐちへ取って返して、女房は立迎たちむかえる。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)