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広漠
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こうばく
ふりがな文庫
“
広漠
(
こうばく
)” の例文
旧字:
廣漠
あるひは
大
(
だい
)
なる
夜泊
(
やはく
)
の船の林なす
檣
(
ほばしら
)
の
間
(
あいだ
)
に満月を浮ばしめ、その
広漠
(
こうばく
)
たる空に一点あるかなきかの
時鳥
(
ほととぎす
)
、または一列の
雁影
(
がんえい
)
を以てせよ。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
満洲の
広漠
(
こうばく
)
たる野には、遅い月が昇ったと見えて、あたりが明るくなって、ガラス窓の外は既にその光を受けていた。
一兵卒
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
だが、その瞬間から、彼の脳裏に何か焦点ははっきりとしないが、
広漠
(
こうばく
)
たる空間を横切る新しい女の幻影が
閃
(
ひらめ
)
いた。
火の唇
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
これから語ろうとする詳しい話のなかで、私のために、
広漠
(
こうばく
)
とした罪過の砂漠のなかにいくつかの小さな宿命のオアシスを、捜し出してもらいたいのだ。
ウィリアム・ウィルスン
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
わが魂は人跡いたらぬ森林と
広漠
(
こうばく
)
たる草原とに飛ぶ。万物みな美である。
蠅
(
はえ
)
は光のうちを飛び、太陽に
蜂雀
(
ほうじゃく
)
はさえずる。わが輩を抱け、ファンティーヌ!
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
▼ もっと見る
石狩の大平原につらなる白楊の木と、牛の飼料を貯蔵しておく石造の塔の眺めは
広漠
(
こうばく
)
としていい。ああいう荒涼たる風景はもとよりここではのぞまれない。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
そしてそれらの真実な幻像は、彼女にあっては、架空的な追憶が加わるために変形されてしまった。彼女はそういう
広漠
(
こうばく
)
たる世界のうちにおぼれる気がした。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
橋本と余と荷物とは、この
広漠
(
こうばく
)
な
畠
(
はたけ
)
の中を、トロに揺られながら、
眩
(
まぶ
)
しそうに動いた。トロは
頑丈
(
がんじょう
)
な細長い涼み台に、鉄の車を着けたものと思えば
差支
(
さしつか
)
えない。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
同時に
西比利亜
(
シベリア
)
の無限の富、驚くべき
広漠
(
こうばく
)
なる不毛の土地も
均
(
ひと
)
しく世界に開いて、種々の法令を設けて外国の事業家を妨げるということを禁ずることが必要である。
東亜の平和を論ず
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
沢山
(
たくさん
)
の短いトンネルと雪
除
(
よ
)
けの柱の列が、
広漠
(
こうばく
)
たる灰色の空と海とを、
縞目
(
しまめ
)
に区切って通り過ぎた。
押絵と旅する男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
やがて
天塩
(
てしお
)
に入る。
和寒
(
わっさむ
)
、
剣淵
(
けんぶち
)
、
士別
(
しべつ
)
あたり、牧場かと思わるゝ
広漠
(
こうばく
)
たる草地一面
霜枯
(
しもが
)
れて、六尺もある
虎杖
(
いたどり
)
が黄葉美しく此処其処に立って居る。所謂
泥炭地
(
でいたんち
)
である。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
中国はその
広漠
(
こうばく
)
たることヨーロッパに比すべく、これを貫流する二大水系によって分かたれた固有の特質を備えている。
揚子江
(
ようすこう
)
と
黄河
(
こうが
)
はそれぞれ地中海とバルト海である。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
一つの風景を、もやのふかい空のもとにある、しめった、
肥沃
(
ひよく
)
な、
広漠
(
こうばく
)
とした熱帯の沼沢地を、島と
泥地
(
でいち
)
と
泥
(
どろ
)
をうかべた水流とから成っている、一種の原始のままの
荒蕪
(
こうぶ
)
地を見た。
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
劫初
(
ごうしょ
)
以来人の足跡つかぬ白雲落日の山、千古斧入らぬ
蓊鬱
(
おううつ
)
の大森林、
広漠
(
こうばく
)
としてロシアの田園を
偲
(
しの
)
ばしむる大原野、魚族群って白く泡立つ無限の海、ああこの大陸的な未開の天地は
初めて見たる小樽
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
さすがに相沢の
言
(
こと
)
を偽りなりともいいがたきに、もしこの手にしも
縋
(
すが
)
らずば、本国をも失い、名誉を
挽
(
ひ
)
きかえさん道をも絶ち、身はこの
広漠
(
こうばく
)
たる欧州大都の人の海に葬られんかと思う念
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
大洋の中にいると同様に、わたしたちの日は遠い
秋霧
(
あきぎり
)
の中に消えている地平線まで
届
(
とど
)
いていた。ひたすら
広漠
(
こうばく
)
と
単調
(
たんちょう
)
が広がっている
灰色
(
はいいろ
)
の野のほかに、なにも目をさえぎるものがなかった。
家なき子:01 (上)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
しかし、練達な彼がぐっとつかえ、語尾が消えるように
嗄
(
かす
)
れてしまったのだ。拳銃が……無意味な銃口をむけている。やがて、
顎
(
あご
)
でぐいぐい引かれて森をでると、したは、
広漠
(
こうばく
)
たる盆地になっている。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
精神が
翔
(
かけ
)
り回って迷い込むような、広い地平線や
広漠
(
こうばく
)
たる平野は少しもなかった。灰色の眼をし、
褪緑
(
たいりょく
)
色の衣をつけ、繊細なきっぱりした顔つきの河であった。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
愛に
聖
(
きよ
)
められた二つの
脣
(
くちびる
)
が、創造のために相接する時、その得も言えぬ
脣
(
くち
)
づけの上には、
星辰
(
せいしん
)
の
広漠
(
こうばく
)
たる神秘のうちに、必ずや一つの震えが起こるに相違ない。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そして、階段を上がって、パッと眼界がひらけたとき、そこに
広漠
(
こうばく
)
たる別の世界があるのです。東京の現実の町を無視して、見渡すかぎりの大平原や
大海原
(
おおうなばら
)
があるのです。
影男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そのベランダへ出ると、明るい
灝気
(
こうき
)
がじかに押しよせて来るようだった。すぐ近くに見おろせる精神科の
棟
(
むね
)
や、石炭貯蔵所から、裏門の
垣
(
かき
)
をへだてて、その向うは
広漠
(
こうばく
)
とした田野であった。
秋日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
生の気配が見えなかった。線のぼやけた無形の
広漠
(
こうばく
)
さだった。すべてが雪の下に眠っていた。ただ
狐
(
きつね
)
だけが夜の森の中に鳴いていた。ちょうど冬の終わりだった。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
枯れた雑草が風に吹かれてすみやかにわきを飛んでいったが、何か追っかけてくるものを恐れて逃げてゆくがようだった。どこを見ても、ただ
広漠
(
こうばく
)
たる痛ましいありさまだった。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
彼にとっては一度妻の脳裏を
掠
(
かす
)
めたイメージは絶えず
何処
(
どこ
)
かの空間に実在しているようにおもえた。と同時にそれは彼自身の
広漠
(
こうばく
)
として心をそそる遠い過去の生前の記憶とも重なり合っていた。
苦しく美しき夏
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
広漠
(
こうばく
)
たる別世界を創作しようと試みたものに相違ないのだ
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
また、
泥
(
どろ
)
で赤く濁ってあたかも土地が歩き出してるようなテヴェレ河のほとり——
大洪水
(
だいこうずい
)
以前の怪物の巨大な背骨みたいな
溝渠
(
こうきょ
)
の
廃址
(
はいし
)
に沿って、
広漠
(
こうばく
)
たるローマ平野の中をさまようた。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
広漠
(
こうばく
)
たる自然も昔は、種々の姿や光や声や忠言や遠景や地平や教訓に満ち満ちていたが、今はもう彼の前にむなしく横たわってるのみだった。すべてが消えうせたように彼には思えた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
船は暴風雨の下に揺られながらみずからの運転に意を注ぎ、水夫と乗客との目にはもはや
溺
(
おぼ
)
るる男の姿は止まらない。彼のあわれなる頭は、
広漠
(
こうばく
)
たる波間にあってただの一点にすぎない。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
彼は今や、年老いて彼の思想には無関心な母親——彼を愛してばかりいて理解してはいない母親と、ただ二人きりであった。彼の周囲は、
広漠
(
こうばく
)
たるドイツの平野、
陰鬱
(
いんうつ
)
なる大洋であった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
人の心を
脹
(
ふく
)
らす熱を、民族の本能的な運命的な伸長力を、幾百万の人を従属させ軍勢を死へ突進せしむる、世界の帝王たる
律動
(
リズム
)
の勝利を、合唱を伴う広い
交響曲
(
シンフォニー
)
に、
広漠
(
こうばく
)
たる音楽の風景画に
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その
靄
(
もや
)
の中には
広漠
(
こうばく
)
たるうねりがあり、
眩
(
まばゆ
)
きばかりの幻影があり、今日ほとんど知られない当時の軍需品があって、炎のような
真紅
(
しんく
)
の毛帽、揺らめいている
提嚢
(
ていのう
)
、十字の負い皮、
擲弾用
(
てきだんよう
)
の
弾薬盒
(
だんやくごう
)
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
永劫
(
えいごう
)
の
広漠
(
こうばく
)
を、じっとながめ、そして「皇帝万歳!」を叫んだ。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
“広漠”の意味
《名詞》
果てしなく広々としていること。また、そのようなさま。
(出典:Wiktionary)
広
常用漢字
小2
部首:⼴
5画
漠
常用漢字
中学
部首:⽔
13画
“広”で始まる語句
広
広場
広東
広重
広々
広間
広小路
広野
広汎
広袖