岩屋いわや)” の例文
矢張やは歴史れきし名高なだか御方おかただけのことがある。』わたくしこころなかひとりそう感心かんしんしながら、さそわるるままに岩屋いわや奥深おくふかすすりました。
「あなたがたはいったいどうしてこんなところへいらしったのです。ここはおに岩屋いわやで、これまでよそから人間にんげんたことはありません。」
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
安政二年の淡路津井港改築、同六年から文久元年にいたる同郡阿万あま村の大灌漑工事、津名郡岩屋いわやの築港工事など、すべてその手になった。
志士と経済 (新字新仮名) / 服部之総(著)
神前への供米くまい、『しず岩屋いわや』二冊、それに参籠用の清潔で白い衣裳いしょうなぞを用意するくらいにとどめて、半蔵は身軽にしたくした。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
朝の光がこずえからしらじらとさしていた。大きな岩があって岩屋いわやらしい入口が眼についた。刀を差した人はその中へ入って往った。
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
女神は、命のあまりの乱暴さにとうとういたたまれなくおなりになって、あめ岩屋いわやという石室いしむろの中へおかくれになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「おまえがそれほどいさましい男だというんなら、いっしょにおれたちの岩屋いわやへきて、とまってみろ。」
ここには今でも安倍貞任あべのさだとうの母住めりと言い伝う。あめるべき夕方など、岩屋いわやとびらとざす音聞ゆという。小国、附馬牛つくもうしの人々は、安倍ヶ城のじょうの音がする、明日あすは雨ならんなどいう。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そのまた向うには、——オルガンティノは、今更のように、彼の眼を疑わずにはいられなかった。——そのまた向うには夜霧の中に、岩屋いわやの戸らしい一枚岩が、どっしりと聳えているのだった。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
わたくし岩屋いわや修行しゅぎょうというのは、つまりうした失敗しっぱいとお叱言こごとりかえしで、自分じぶんながらほとほと愛想あいそきるくらいでございました。
日ごろ忘れがたい先師の言葉として、篤胤あつたねの遺著『しず岩屋いわや』の中に見つけて置いたものも、その時半蔵の胸に浮かんで来た。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「ではこの川についてどんどんのぼっておいでなさい。すると川のふちに十七八のむすめがいますから、その子にたずねて、おに岩屋いわやへおいでなさい。」
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それではいよいよ、天安河あめのやすのかわ河上かわかみの、あめ岩屋いわやにおります尾羽張神おはばりのかみか、それでなければ、その神の子の建御雷神たけみかずちのかみか、二人のうちどちらかをおつかわしになるほかはございません。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
しかし茨木童子などは我々の銀座を愛するように朱雀大路すざくおおじを愛する余り、時々そっと羅生門へ姿をあらわしたのではないであろうか? 酒顛童子も大江山の岩屋いわやに酒ばかり飲んでいたのは確かである。
桃太郎 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
わたくし最初さいしょ修行場しゅぎょうば——岩屋いわやなかでの物語ものがたりずこのへんでくぎりをつけまして、これからだい二のやま修行場しゅぎょうばほううつることにいたしましょう。
たまたまきこりにえばみちき、おに岩屋いわやのあるという千丈せんじょうたけひとすじにざして、たにをわたり、みねつたわって、おくおくへとたどって行きました。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
先師平田篤胤の遺著『しず岩屋いわや』をあの王滝の宿で読んだ日のことは、また彼の心に帰って来た。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あめ岩屋いわや
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
田村麻呂たむらまろはこのいきおいにって、達谷たっこくいわやというおおきな岩屋いわやの中にかくれている、高丸たかまる仲間なかま悪路王あくろおうというあらえびすをもついでにころしてしまいました。
田村将軍 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しず岩屋いわや』、『西籍概論さいせきがいろん』の筆記録から、三百部を限りとして絶版になった『毀誉きよ相半ばする書』のような気吹いぶきの深い消息までも、不便な山の中で手に入れているほどの熱心さだ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
文字どおりの「しず岩屋いわや」だ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)