ひき)” の例文
眩しがる二ひきのキヤリコの金魚は、多少怪訝の動作を鰭の角々のそよぎに示しながら、急に代つた水の爽快さを楽しむらしかつた。
花は勁し (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
すぐそれをなます、から揚げ、汁、蕃椒煮とうがらしにといろいろ料理させたが、ものの二ひきとは食べきれたものではない。あと四、五尾は笹に通して
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
博士は彩色の飾文字かざりもじを散らした聖典を見つめてゐて、たまに眼を放てば、うつすり曇る水盤の中に泳ぐ二ひきの魚のきんあかとを眺めるのみだ。
欝金草売 (旧字旧仮名) / ルイ・ベルトラン(著)
この頃は七之助が商売から帰ってくる時に、その盤台にかならず幾ひきかのさかなが残っているのを、近所の人達が不思議に思った。
半七捕物帳:12 猫騒動 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そして、鵜が四五ひきの魚をのどに入れたと思うころを見はからって、鵜匠は手縄てなわいて舟に曳き寄せ、ぐいとその喉を絞ってうおるのであった。
赤い土の壺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
差し出たことだが、一ぴきか二ひきで足りるものなら、お客は幾人だか、今夜の入用いりようだけは私がその原料を買ってもいいから。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『イヤそれだれだつて道具だうぐります。如何いく上手じやうずでも道具だうぐわるいと十ぴきれるところは五ひきれません。』
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
前へ突出つきだしたり後へ引たり爾々そう/\つまり二本一緒の毛へよりを掛たり戻したりするのですソレ奇妙でしょう二本の毛が次第/\に右と左へズリ抜るでしょう丁度二ひきの鰻を
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
肥った山鼠モルモット白鷓鴣しろやっこ松鶏らいちょうと並んで、長い鉄ぐしにささって火の前に回っており、竈の上には、ローゼ湖の二ひきの大きなこいとアロズ湖の一尾のますとが焼かれていた。
三時にうちへ帰ったが、家で遊んで又何か壊すと悪いから、乃公は釣魚つりに出掛けた。いつかぶくぶくしそこなった水車の傍へ針を下したが、はやが二ひきれたばかりだ。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
少年は餌の土団子つちだんごをこしらえてくれた。自分はそれを投げた。少年は自分の釣ったうおの中からセイゴ二ひきを取って、自分に対して言葉は少いが感謝の意は深く謝した。
蘆声 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
廻し二日三日と音信おとずれの絶えてない折々は河岸かしの内儀へお頼みでござりますと月始めに魚一ひきがそれとなく報酬の花鳥使かちょうしまいらせそろの韻をんできっときっとの呼出状今方貸小袖を
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
所へ魚釣うをつり帰途かへりらしい子供が一人通りかゝつた。手には小鮒こふなを四五ひきげてゐる。青木氏は懐中ふところ写生帖スケツチブツクから子供の好きさうなを一枚引き裂いて、それと小鮒の二尾程とかへつこをした。
「五ひきばかし掛るには掛りましたが、皆なだまされて了いました」
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私はその歯をって海へ投げ込んだ時、あたかも二ひきの大きいふかが蒼黒い背をあらわして、船を追うように近づいて来た。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そんな人は宿の大きなバケツを魚籃びくのかわりに持っていて、のぞいてみると時たま小さなふなを一二ひき釣っていたり、四五寸ある沙魚はぜを持っていたりする。
蟇の血 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
まもなく、宿の板前や男衆に桶をかつがせ、見ごとな金鱗きんりん金鯉きんごい十数ひきをすくい入れて二人は帰ってきた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
続いてまた二ひき、同じようなのがはりに来た。少年はあせるような緊張した顔になって、うらやましげに、また少しは自分の鉤に何も来ぬのを悲しむような心を蔽いきれずに自分の方を見た。
蘆声 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「一桶二十五ひき一荷いっか五十尾一日五荷は運べると言っていましたよ。五荷というと五々二百五十尾、大変な儲けですな。しかし二人がかりだし、死ぬのも余程あるだろうし、汽車賃も往復五回で……」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
おまきさんの家に猫がたくさん飼ってある時分には、その猫に喰べさせるんだと云って、七之助さんは商売物のおさかなを毎日幾ひきずつか残して、家へ帰っていたんです。
半七捕物帳:12 猫騒動 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
なんでも春で、きれいなたいさわらなどがぴちぴちしていたことを覚えている。友人はその魚を仲買人の手から数ひき買って帰り、それをじぶんで料理して、私に御響応ごちそうした後で
妖影 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それから続いて自分は二ひきのセイゴを得たが、少年は遂に何をも得なかった。
蘆声 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
さっきから二ひきほど釣ったといって、松島さんは岸の方へ引っ返して来て、ブリキの缶のなかから大小の魚をつかみ出して見せてくれたので、親戚の者もわたくしものぞいていました。
鰻に呪われた男 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)