“奥様（おくさん）” の例文
旧字：奧樣
「そらよ、こっちが旦（だん）の分。こりゃお源坊のだ。奥様（おくさん）はあらが可い、煮るとも潮（うしお）にするともして、天窓（あたま）を噛（かじ）りの、目球（めだま）をつるりだ。」
婦系図 (新字新仮名) ／ 泉鏡花(著)
「あないに何処も彼処（かしこ）も白おしたら晴れがましおしてなあ。………あんさんとこの奥様（おくさん）みたい綺麗（きれ）おしたらよろしおすけど。………」
蓼喰う虫 (新字新仮名) ／ 谷崎潤一郎(著)
彼家（あそこ）じゃ奥様（おくさん）も好い方（かた）だし御隠居様も小まめにちょこまかなさるが人柄（ひと）は極く好い方だし、お清様（さん）は出戻りだけに何処（どこ）か執拗（ひねく）れてるが
竹の木戸 (新字新仮名) ／ 国木田独歩(著)
チと山木の奥様（おくさん）を見傚（みなら）ふ様にツて言はれるんですよ、御一家（ごいつけ）皆（みん）な信者で在（い）らつしやいまして、慈善事業と言へば御関係なさらぬはなく
火の柱 (新字旧仮名) ／ 木下尚江(著)
『奥様（おくさん）、其様（そんな）に御心配無く——猪子君は私が御預りしましたから。』と弁護士が引受顔なので、細君も強ひてとは言へなかつた。
破戒 (新字旧仮名) ／ 島崎藤村(著)
「もしか自身に奥様（おくさん）やお嬢さんがあるとして、君はその人達（ひとだち）がそんな酷（ひど）い目に遭つてるのを平気で辛抱してゐられるかね。」
茶話：02 大正五（一九一六）年 (新字旧仮名) ／ 薄田泣菫(著)
私（あたし）だって彼様（あん）な窮屈な処（とこ）へ行（い）くよか、芝居へ行った方が幾ら好（い）いか知れないけど、石橋さんの奥様（おくさん）に無理に誘われて辞（ことわ）り切れなかったンだもの。
平凡 (新字新仮名) ／ 二葉亭四迷(著)
そして、先生の奥様（おくさん）といふ人は、矢張好い人で、優しい、美しい（但し色は少し黒いけれど、）親切な方です。……
足跡 (新字旧仮名) ／ 石川啄木(著)
乃公は最早（もう）可（よ）かろうと思って、衣嚢（かくし）の中から先刻（さっき）捕えて置いた小鼠を出してテーブルの上に置いた。乃公が手を放すか放さぬ中に鼠は奥様（おくさん）に飛付いた。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) ／ 佐々木邦(著)
「なにを下らん、認める認めンもないじゃないか。奥様（おくさん）の御遺骸でなくて、一体誰の死体だと言うんだ」
湖畔 (新字新仮名) ／ 久生十蘭(著)
これは何うも心得ませんでしたが、奥様（おくさん）の仰しゃるには御亭主はない、とこう仰しゃってでございました……がそりゃア困りましたね、何うも貴女（あなた）、然（そ）う云う嘘を
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) ／ 三遊亭円朝(著)
それから、今度の事件でもっとも不思議なのは、これは奥様（おくさん）もとっくにお気づきだと思いますが、犯人が彼自身の犯行を公衆の面前にさらけ出そうとしている点です。
一寸法師 (新字新仮名) ／ 江戸川乱歩(著)
「あなた、本当に奥様（おくさん）は無いの？」
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) ／ 近松秋江(著)
「奥様（おくさん）、お暑いですね。」
巴里より (新字旧仮名) ／ 与謝野寛、与謝野晶子(著)
「御無沙汰を致しまして済みません。奥様（おくさん）もお変りがございませんで、結構でございます。先生は相変らず……飲酒（めしあが）りますか。」
婦系図 (新字新仮名) ／ 泉鏡花(著)
「奥様（おくさん）！　奥様！」いうたなり顔の色変えてるのんで、「分ってる、分ってる、光子さんやろ」いいながら自分で玄関い出て行ことして
卍 (新字新仮名) ／ 谷崎潤一郎(著)
奥様（おくさん）が今日御出席下ださいましたことは教会に取つて、何と云ふ光栄で御座いませう、御多用の御体で在（い）らつしやいますから
火の柱 (新字旧仮名) ／ 木下尚江(著)
『はゝゝゝゝ、奥様（おくさん）が私を御存じなんですか。』と言つて丑松は少許（すこし）調子を変へて、『しかし、それが奈何（どう）しました。』
破戒 (新字旧仮名) ／ 島崎藤村(著)
唯一度、信吾は対手を「奥様（おくさん）」と呼んで見た。清子は其時俯（うつむ）いて茶を注（つ）いでゐたが、返事はしなかつた。また顔も上げなかつた。信吾は女の心を読んだ。
鳥影 (新字旧仮名) ／ 石川啄木(著)
下女迄が私の部屋を覗込んでお糸さんが見えないと、奥様（おくさん）は、なぞといって調戯（からか）うようになる。
平凡 (新字新仮名) ／ 二葉亭四迷(著)
「だが、一生涯こちらの奥様（おくさん）とここに御厄介になる約束をしてしまつたもんですからね。」
茶話：02 大正五（一九一六）年 (新字旧仮名) ／ 薄田泣菫(著)
『房（ふさ）、奥様（おくさん）の出る時何とか言つたかい。』と佐山銀之助（さやまぎんのすけ）は茶の間に入（はひ）ると直（す）ぐ訊（きい）た。
節操 (新字旧仮名) ／ 国木田独歩(著)
矢島の老女史（らうせんせい）や、島田の奥様（おくさん）に能（よ）くお話して御依頼しましたが、何（いづ）れも快く引き受けて下ださいましたから、当分慈愛館で修業なさるのです
火の柱 (新字旧仮名) ／ 木下尚江(著)
「なんでも校長さんの奥様（おくさん）から出たらしいのんです。それはそれはあんたが考えてなさるより十倍も二十倍も陰険やのんですから、気イ附けなさいや」
卍 (新字新仮名) ／ 谷崎潤一郎(著)
医学士（せんせい）の奥様（おくさん）を殺して、願いを叶えてくれるんなら、水天宮様の縁日に、頭（かしら）の乾児（こぶん）と喧嘩をするようにして暴（あば）れ込んで行ったって殺されるものじゃない。
式部小路 (新字新仮名) ／ 泉鏡花(著)
『今日は御年貢（おねんぐ）を納めるやうにツて、奥様（おくさん）も仰（おつしや）りやして——はい、弟の奴も御手伝ひに連れて参じやした。』
破戒 (新字旧仮名) ／ 島崎藤村(著)
『何（な）に心配しないでも可（い）いよ。奥様（おくさん）に急に用が出来たから出たつて言つてお呉（く）れ。』
節操 (新字旧仮名) ／ 国木田独歩(著)
私の学校は、この千早先生一人の学校といつても可（い）い位よ。奥様（おくさん）やお子様（こさん）のある人とは見えない程若い人ですが、男生でも女生でも千早先生の言ふことをきかぬ者は一人もありません。
足跡 (新字旧仮名) ／ 石川啄木(著)
「爺や、御精（ごせい）が出るね。お前こちらの奥様（おくさん）のお宅に長らく御奉公してるの。」
茶話：02 大正五（一九一六）年 (新字旧仮名) ／ 薄田泣菫(著)
「大阪から奥様（おくさん）に電話かかってます」いうのんで、「大阪の誰やねん？」いいますと、「誰ともいやはれへんけど、大急ぎで電話口までいうてはります」
卍 (新字新仮名) ／ 谷崎潤一郎(著)
お前（めえ）さんや、奥様（おくさん）で、私（わっし）に言い憎いって事はありゃしねえ、また私が承って困るって事もねえじゃねえか。
婦系図 (新字新仮名) ／ 泉鏡花(著)
「洋傘（こうもり）は買ったけれども、美代助にくれて来やした。ええ、ぷ、……なあ奥様（おくさん）、一服頂戴して」
旧主人 (新字新仮名) ／ 島崎藤村(著)
『最早（もう）直（ぢ）き奥様（おくさん）がお帰宅（かへ）りになりませう。』と房（ふさ）は驚いて止（と）めるやうに言つた。
節操 (新字旧仮名) ／ 国木田独歩(著)
『真箇（ほんと）よ、奥様（おくさん）。何れ後で。』
鳥影 (新字旧仮名) ／ 石川啄木(著)
「なあ、お定さん、お前許（まいんとこ）の奥様（おくさん）は……あの御盲目（おめくら）さんだって言うが、真実（ほんとう）かい」
旧主人 (新字新仮名) ／ 島崎藤村(著)
奥様（おくさん）は歌が好（すき）で、今でもちょいちょい、加茂川ン許（とこ）へお通いだから、梅岡さんに、——私も歌が習いたい、紅葉（もみじ）の盛り、上野をおひろいのおともをしながら、お師匠さんへ、奥様から
式部小路 (新字新仮名) ／ 泉鏡花(著)
「奥様（おくさん）、おみあが痛いことおへんか？　どうぞ此方（こっち）へお出しやして、………」
蓼喰う虫 (新字新仮名) ／ 谷崎潤一郎(著)
まさか奥様（おくさん）に、とも言えませんから、主人に逢って、——意中を話しますと——
草迷宮 (新字新仮名) ／ 泉鏡花(著)
生命（いのち）に別条はねえんだから騒ぐにゃあ当らねえ、おう、奥様（おくさん）ちょいと、おい、先刻（さっき）のようにお暑うございますとか何とか謂（い）って、その団扇で私（わっち）をば煽いでくんねえ、煽ぎねえよ、さあ煽げ、煽げ
三枚続 (新字新仮名) ／ 泉鏡花(著)
自分の医院の奥様（おくさん）に、ちょいとモルヒネをなんて、から、無法極まる。
式部小路 (新字新仮名) ／ 泉鏡花(著)
もっともその奥様（おくさん）は赤十字だの、教育会、慈善事業、音楽会などいうものに取合って、運動をするのに辻車で押廻すという名代（なだい）のかわりものなんだけれども、怒ったろう、皆（みんな）驚いたろう、乱暴狼藉（ろうぜき）だ
三枚続 (新字新仮名) ／ 泉鏡花(著)
その晩なの、奥様（おくさん）、おかみさんになったんですって。
わか紫 (新字新仮名) ／ 泉鏡花(著)
「貴下（あなた）、まだ奥様（おくさん）はお持ちなさりませんの。」
国貞えがく (新字新仮名) ／ 泉鏡花(著)
「だからやっぱり奥様（おくさん）じゃあないか。」
化銀杏 (新字新仮名) ／ 泉鏡花(著)
「もう、奥様（おくさん）、何時（なんどき）です。」
化銀杏 (新字新仮名) ／ 泉鏡花(著)
「奥様（おくさん）、ただいま。」
化銀杏 (新字新仮名) ／ 泉鏡花(著)