執成とりな)” の例文
今更兎角とかく執成とりなしは御聴入れも可無之これなかるべく、重々御立腹の段察入さっしいり候え共、いささか存じ寄りの儀も有之これあり、近日美佐子同道御入来被下間敷候哉ごじゅらいくだされまじくそうろうや
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
番頭久八は大いに驚き主人五兵衞へ段々だん/\詫言わびごとに及び千太郎には厚く異見いけんを加へ彼方あち此方こち執成とりなしければ五兵衞も漸々やう/\いかりを治め此後を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「せめて中旬までとマザーへ執成とりなしを頼みました。しかし責任は負わないと言うんです。帰ったきり未だに手紙も寄越しません」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「お助けお助け! どうぞお助け! 髪を剃られてなるものか! ハテ皆様も見ておらずとお執成とりなしくだされてもよかりそうなものじゃ!」
紅白縮緬組 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
最早罪に伏したので、今までは執成とりなすことも出来なかった小芳が、ここぞ、と見計みはからって、初心にも、たもとの先をつまさぐりながら
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その件について老中への執成とりなしを願い出ましたところ、幕府から内命があって、事情を聞くために柴田外記げきが召されました。
アデェルは馬車にび込んで來ると、私の執成とりなしに對する感謝の意をこめて私に接吻した。が、直ぐに彼の向う側の隅に押込められてしまつた。
そういう言葉に執成とりなされたあとで、年下の芸妓を主に年上の芸妓が介添かいぞえになって、しきりになまめかしく柚木を取持った。
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
はゝかねてそれはあまりに短氣たんきなりあのことば一通ひととほりはきいておりなされませぬかと執成とりなすを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
左様さようじゃによって幸兵衞をきように主人へ執成とりなし、柳に謟諛こびへつらい、体よくいとまを取って、入谷へ世帯を持ち、幸兵衞を同居いたさせ置き、柳と密会を致させたのであろう
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ああ、ありがと、君には済まないね。どうぞヨッちやんに宜しく執成とりなしておくれよ、ね。済まないね。……なんなら、君も来ないか? 一緒にくちを頼んであげるから……」
竹藪の家 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
柳沢出羽守の執成とりなしで、五代、河内守忠挙ただとに遺領と上邸を下され、やっとのことで御詰役になったが、またぞろ柳沢騒動に加担し、事、露見に及んで、病気を言いたててひき籠り
無惨やな (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
で、諸大名ら人〻の執成とりなしで、将軍義澄よしずみの叔母の縁づいている太政大臣九条政基まさもとの子を養子に貰って元服させ、将軍が烏帽子親えぼしおやになって、その名の一字を受けさせ、源九郎澄之すみゆきとならせた。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
急ぎの仕立がまだ縫ひ上つてない場合は千登世に代つて巧く執成とりなしてくれ一日に何遍となく梯子段はしごだんを昇り降りして八百屋酒屋の取次ぎまでしてくれたり、二人は内儀さんの數々の心づくしを思ふと
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
受験生の境遇に真正ほんとうの同情が出来るのはつぶさに受験生の経験を嘗めた者ばかりだ。兄さんの俊一君は常に二郎君の為めに執成とりなし役を勤めている。
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そういう言葉に執成とりなされたあとで、年下の芸妓を主に年上の芸妓が介添になって、しきりになまめかしく柚木を取持った。
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「おまえに試合の模様を話してもしようがない、女はそんなことに気を使う必要はないよ、それより伯父上がひどく御立腹だ。またひとつおまえの執成とりなしを頼むぞ」
備前名弓伝 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
なにとぞ私の貧をあわれみお師匠様にそこをよろしくお執成とりなし下されお目こぼしを願度ねがいたしと云った。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
文「さアうぞ是れへお通り下さりませ、うこそおいで下さいました、定めし其許様そこもとさまのお執成とりなしとは存じますが、何から何まで御配慮下さいまして、千万辱のう存じます」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
誰一人執成とりなしてくれようと云うものはなし、しかたがないので、そっとね、姉様がむじつの罪をせられて——昨夕ゆうべ話したッけ——冤というのは何にも知らない罪を塗りつけられたの。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ぢや、行つてきます。ヨッちやんにくれぐれも宜しく執成とりなしてね。ぢや——」
竹藪の家 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
「あの爐棚の上のは、私が描いたの。」それは水彩の山水で、私の爲めに親切に委員の人たちが執成とりなしてくれたお禮心に私が學監に贈物おくりものにしたもので、それにふちをつけ硝子ガラスを嵌めたものだつた。
「熊野と松本はすんでのことに首になるところだったが、中島さんの執成とりなしで、始末書を入れて漸く繋がった」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それも叔父さまや叔母さまのお執成とりなしで、無事に和田から藤島へ嫁にまいったのでございます
はたし状 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
いゝえ全くお前さえよければ先生は御新造になさる思召おぼしめしがあるのだから、お前がたって…頼みたいと思うなら、骨を折っていように執成とりなすから了簡を決めろといいますから
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何とかお執成とりなしをなされましたらようござりましょうに、忠義顔をして五つのとがを十ほどにも吹聴ふいちょうなされ、いらざることを殿下のお耳へお入れ申して、骨肉のあらそいに油を注ぐようなことを
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
西川さんですか? 御令息ですね? 今朝は取込んでいてまことに失礼申上げました。容態は引続いて良好ですから御安心下さい。何うぞ御両親さまへ宜しくお執成とりなしを願います。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
さて其の歳の暮に春部梅三郎が何ういう執成とりなしを致しましたか、伯父秋月へ話し込むと、秋月が渡邊織江の処へまいりまして相談致すと、もとより推挙致したのは渡邊でございますが
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いずれその中然るべき人を通して御両親へ申入れますから、宜しくお執成とりなしをとまで漕ぎつけたのが一昨日のことで、それから昨日の騒ぎさ。松浦さんは大慌てをして帰ってしまった。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それは誠に思掛おもいがけない有難いこと、私の様な者を先生が仮令たとえ妾にでもなすって下さるなら、私は本当に浮ぶ訳で、べん/\とこんな処にいたくないから、屹度きっと執成とりなしておくれかというと
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
自分は飛鳥山で大藏に恩になって居りますから、片贔屓かたびいきになるようでかえって当人のためにならんからと云って、ひかえ目にして居りますと、秋月の引立で御前体ごぜんてい執成とりなしを致しましたから
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と私は松本さんの為め又自分の為めに再び執成とりなさなければならなかった。
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
名主へ行って話をして、れは外面うわべ瓦落がら/\して、鼻先ばかり悪徒あくとうじみて居りますが、腹の中はそれほどたくみのある奴では無いと、う己が執成とりなして置いたからられる、云はゞ恩人だ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と夫人は執成とりなさざるを得ない。
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)