むかっ)” の例文
また上士のはいは昔日の門閥を本位に定めて今日の同権を事変と視做みなし、おのずからまた下士にむかって貸すところあるごとく思うものなれば
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
自分が業務を尽さなければ社会から不平をいわれても仕方がない。それを自分の方から社会にむかって不平を言うとは実に乱暴千万だね。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
またその時予がさいむかって、今日福沢諭吉は大丸だいまるほどの身代しんだいに成りたれば、いつにても予が宅に来て数日逗留とうりゅうし、意をなぐさめ給うべしとなり。
(2) 勅令ちょくれいつぎノ会期ニおいテ帝国議会ニ提出スヘシもし議会ニおいテ承諾セサルトキハ政府ハ将来ニむかっノ効力ヲうしなフコトヲ公布スヘシ
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
で船を出る時、船頭にむかって三人分の賃金を払って今僕の外に二人ほど友人が乗り込んでいたから……といって岸に上ってったと書いている。
イエスキリストの友誼 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
いかにも傍観者の言いそうなひややかな言葉である。苦艱くかんにある友にむかって発する第一語において、かく訶詰かきつの態度を取るは冷刻れいこくといわねばならぬ。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
自分が先生にむかって自分の希望のぞみを明言した時に梅子は隣室で聞いていたに違いない、もし自分の希望のぞみを全くいなむ心なら自分が帰る時あんなに自分を慰めるはずはない……
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
根が右にむかって居るのは右へ抜け根が左へむいて居るのは左へ抜けて行くのです(荻)成る程そうう云う訳だろう(大)是が大変な証拠に成るから先ず気永くお聞なさい
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
かつ池辺三山及び村山龍平むらやまりゅうへいむかって露都通信員の派遣を勧告し、その最適任者としての二葉亭の才能人物を盛んに推奨したので、朝日社長村山も終に動かされてその提案に同意した。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
不幸にして余の文学論は十年計画にて企てられたる大事業の上、おもに心理学社会学の方面より根本的に文学の活動力を論ずるが主意なれば、学生諸子にむかって講ずべきほど体を具せず。
『文学論』序 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
例えば彼の在留中、小野おのも立腹したと見え、私にむかって、最早もはや御用も済みたればお前は今からきに帰国するがよろしいとうと、私が不服だ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
また話をするにしても、西洋人にむかっては精神上の話が出来るが、日本人には出来ぬ。情けない事だが、道友会なればこそ、これだけの話も出来るのである。
人格を認知せざる国民 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
神を知らざる時我らに真の恐怖なく、痛烈なる煩悶はない。怖るる事、悶ゆる事、それは神に捉えられた証拠である。そして救拯きゅうじょうと光明へむかっての中道の峠である。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
独楽だから鉄の心棒が斜に上へむかって居ました其証拠は錐を叩き込だ様な深い穴が凹込の真中に有ます(荻)併し頭が其心棒の穴からくだける筈だのに(大)イヤの頭は独楽の為にくだけたのでは無く其実
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「遅くあがって御気毒様、」と来た少女はかろく言った、奥にむかって。
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
朝敵とめいついて、ソコで将軍御親発ごしんぱつとなり、又幕府から九州の諸大名にも長州にむかって兵を出せと云う命令がくだって、豊前ぶぜん中津なかつ藩からも兵を出す。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
新鮮なる萌芽はいよいよ強くいよいよ活溌に断株きりかぶより発生するを見る、余は天上にむかって登りつつあるを知る、日光は余の頭上をてらせり、地はなおその養汁を以て余を養えども
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
その以下の者にむかって自分が軽蔑されたけソレ丈け軽蔑してれば、所謂いわゆる江戸のかたきを長崎でうって、勘定の立つようなものだが、ソレが出来ない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
相模より見る人はいうかくなりと、駿河の人は甲斐の人にむかって汝の富士は偽りの富士なりというべけんや、もしみずから甲斐にゆきてこれを望めば甲州人の言無理ならざるを知るべし
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
下等士族のはいが上士に対して不平をいだ由縁ゆえんは、もっぱら門閥虚威きょいの一事にありて、しかもその門閥家の内にて有力者と称する人物にむかって敵対の意をいだくことなれども
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
白鷺しろさぎのごとく独り曠野に巣を結び、痛切なる悲声、聞くものをして戦慄せしむる動物あり、飜魚まんぼうのごとく大洋中箇々に棲息しただ寂寥を破らんためにか空にむかって飛揚を試むる奇性魚あり
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
家臣の一部分が早く大事の去るをさとり、敵にむかってかつて抵抗を試みず、ひたすら和を講じてみずから家をきたるは、日本の経済において一時の利益を成したりといえども
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
また言葉の称呼しょうこに、長少の別なく子供までも、上士の者が下士に対して貴様きさまといえば、下士は上士にむかってあなたといい、やれといえばいでなさいといい、足軽が平士ひらざむらいに対し
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
以上の立言りつげん我輩わがはいが勝、榎本の二氏にむかって攻撃をこころみたるにあらず。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)