可愛かあゆ)” の例文
そばには可愛かあゆちご寐姿ねすがたみゆ。ひざの上には、「無情の君よ、我れを打捨て給ふか」と、殿の御声おこゑありあり聞えて、外面そともには良人をつともどらん、更けたる月に霜さむし。
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一度も談話はなしした事もなく、ただ一寸ちょいと挨拶をするくらいに止まっていた、がその三人の子供が、如何いかにも可愛かあゆいので、元来が児好こずきの私の事だから、早速さっそく御馴染おなじみって
闥の響 (新字新仮名) / 北村四海(著)
姉樣ねえさま御覽ごらんれよかし、おまへめられなばれとてもうれしきものをと可愛かあゆふに、おもひある一層いつそうたのもしく樣々さま/″\機嫌きげんりて、姉樣ねえさまさだめし和歌うたはお上手じやうずならん
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
因果いんぐわふくめしなさけことばさても六三ろくさ露顯ろけんあかつきは、くびさしべて合掌がつしやう覺悟かくごなりしを、ものやはらかにかも御主君ごしゆくんが、げるぞ六三ろくさやしき立退たちのいてれ、れもあくまで可愛かあゆ其方そち
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
姉さんと呼ばるれば三之助はおととのやうに可愛かあゆく、此処へ此処へと呼んで背をで顔を覗いて、さぞととさんが病気で淋しくらかろ、お正月も直きに来れば姉が何ぞ買つて上げますぞえ
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ねえさんとばるれば三すけおとゝのやうに可愛かあゆく、此處こゝ此處こゝへとんでかほのぞいて、さぞとゝさんが病氣びやうきさびしくらかろ、お正月せうぐわつきにればあねなんつてげますぞえ
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いろいろの人がちよつと好い顔を見せて直様すぐさまつまらない事に成つてしまふのだ、傘屋のせんのお老婆ばあさんも能い人で有つたし、紺屋こうやのお絹さんといふ縮れつ毛の人も可愛かあゆがつてくれたのだけれど
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其身そのみもほろりとし、可愛かあゆこといふてかしたまふな、鎌倉かまくらきてかへらぬとはれがひしか、それこそはうそにて、一寸ちよつとあそびにき、そのうちにかへつてまするほどに、おとなしうちてたまはれ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)