双生児ふたご)” の例文
双生児ふたご現場不在証明アリバイは極めて不完全なものであったし、何よりも悪いことには、訊問が被害者の戸川そめ子の問題に触れる度に
石塀幽霊 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
世間の双生児ふたごにはめづらしい一つの胞衣えなに包まれて居たのでしたよ、などとこんな話を口の中でした瑞樹みづきの顔をのぞかうとするのでしたが
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
相談がまとまると、私達は何よりも先ず、神田の洋食屋の二階の、額の中へ隠して置いた、系図帳と双生児ふたごの日記のことが気掛りであった。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「おや、まだ何か出てくるぞ」ムクムクムクとせりあがってきたのは、始めの怪球と形も色も同じの双生児ふたごのようなやっぱり大怪球だった。
○○獣 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それで双生児ふたごと云えば、さしずめ tt とか ff とかæとか云うような、文字的な解釈を誰しも想像したくなるものだ。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
双生児ふたご以上の、くどいようですが、——カフェ時代の房枝では有りませんか? して更に私の疑惑を深めた所作と言うのは
陳情書 (新字新仮名) / 西尾正(著)
「どっこい、お品さんは尋常なをあげる娘さんじゃなかったはずだ。二千両ありゃ当分の暮しに困るまい、双生児ふたご宗次の女房は悪くないぜ」
中村半次郎様と私とは、お話にきいた事のある夫婦児めおとごだったに違いない。一人はお母様に似て、一人はお父様に似た双生児ふたごだったに違いない。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
双生児ふたごということはよく聞くことだし、川島の知人の範囲にも一組はあるのだが、三つ児というのは見たこともないし、あまり聞いたこともない。
植物人間 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
そして、むかしこの町の庄屋に双生児ふたごがあって非常に仲がわるく、兄弟が争った末についに弟は家に火をけた。そのため町は焼土と化して全滅した。
抱茗荷の説 (新字新仮名) / 山本禾太郎(著)
双生児ふたごの兄弟に聞かせ、ある夜木村博士を自分の家へおびき寄せて殺し、死体を薬品で処置して、その代わりに双生児ふたごの兄弟を替え玉として帰らせました。
紫外線 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
第一回に男の子を二人、二回めに女の子と男の双生児ふたご、三回めがあの乳を飲んだ赤児で、これは離縁してから百日ほどにしかならないということであった。
百足ちがい (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
自身、その企業家サボタージュと双生児ふたごの性質を持っている民主化へのサボタージュをやっている政府が、どのような決定的方法を執り得るというのだろう。
私たちの建設 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
ラプンツェルは、そのおとこおんな双生児ふたごんで、この沙漠さばくなかに、かなしいおくってたのです。
それでもちろん私は独逸ドイツにいるそやつの双生児ふたご兄弟を憶出おもいだして、それから手がかりをたどって——
双生児ふたごのようなこの谷の区分は、前者を飯田松川、後者を片桐松川とする土地の呼称に従うのが一番賢明な方法だろう。われわれは片桐から入って飯田に抜けたのである。
二つの松川 (新字新仮名) / 細井吉造(著)
同じ傾向から殆んど双生児ふたごのやうにして産み出した作物のうちに、私はある線路番人のことを写した。毎日主人の子供をおぶつて鉄道の踏切のところを通る下婢かひのことを書いた。
突貫 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
さもなければ、陳東海に双生児ふたごの兄弟でもあって、二人で諜合しめしあわせてッたことかも知れない。
あそこにはらみ女が通るが、あの腹の大きいことはどうだ、あんなにえらく膨れているのは双生児ふたごが這入っているのかも知れぬ、腹を断ち割って見てやりたいなと仰っしゃって
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
さっきからこのさわぎなので、長屋は、奥の紙屑拾いのおかみさんが双生児ふたごを産んだ時以来の大騒動。でも、みんなこわいものだから、遠く長屋の入口にかたまって、中へはいってこない。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
一人の乙女は水泡みなわといい、もう一人の乙女は水藻みずもと云った。彼女らは珍らしい双生児ふたごであった。そうして彼女らは先祖代々、ここの神殿の祭司たるべく、運命づけられている人達であった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
三番目の抽出ひきだしから出たのは二人のをなごの子の物ばかりで、色のめたメリンスの単衣ひとへが五六枚、外へこゝ双生児ふたごの娘が生れた時、美奈子がなにがし書店に頼んでお伽噺を書かせて貰つて其の稿料でこしらへた
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
それもなかなか急には得られなかった。そのうちにも、子供は引きつづき生まれた。十一歳、七歳、三歳——そのほか、間に亡くなった二人、なおその上に、ちょうど折りしくも双生児ふたごが生まれた。
答『一体いったい普通ふつうじゃ、双生児ふたごなどはめったにない……。』
「あたしも、双生児ふたごかも知れないんだって……」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「今度は、双生児ふたごに致そうかの」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
大きな黒い鞄を掛けたグロテスクな郵便屋の双生児ふたごがポストの側からだんだんこちらへやって来る! だが、不思議にもその双生児ふたご
石塀幽霊 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
双生児ふたごの片ッ方か何かとを、見ず知らずの赤の他人同志のまま、わざわざ精神病患者にして、或る念の入った錯覚に陥れて
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「そうです。似ているというよりも、双生児ふたごのように、いやそれよりも写真のようにといった方がいいでしょうが、この正太君そっくりなんです」
人造人間エフ氏 (新字新仮名) / 海野十三(著)
妹になつては居るのだけれど姉のやうな心持で双生児ふたごの一人をかばふことを何時いつ何時いつも忘れませんでしたね、大抵の病気は二人が一緒にしましたね
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ところが、この場合はすこぶる表象的な意味があって、それが、母胎内における双生児ふたごの形を指しているのだったよ。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
私は双生児ふたごの一方として生れましたので、私の殺した男というのは、名前は兄ですが、私と同時に、母の胎内から生れ出た、ふたごの片割れだったのです。
いくら双生児ふたごでも、あんなによく似た双生児は、滅多にあるものでは無く、よしや有ったにしても、礼子の懐具合から言えば、少し贅沢ぜいたく過ぎる位な服装を
しかし、木村博士は独身であって、両親もなく、誰も博士に双生児ふたごの兄弟があることを知りませんでした。
紫外線 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
双木文造は女の双生児ふたごもうけたこと、そして太虚寺の雪海和尚がまえの年の冬に大往生をとげたことなど、いろいろ思いがけない変化を聞いたことは収穫であった。
百足ちがい (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
双生児ふたごというのは、少しは滑稽味もあるけれど、しかしソックリ同じかおかたち体つきの少女が、ずらりと十人も並ばれて見ると、中野は何かしら圧迫感を覚えるばかりだった。
地図にない島 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
庭窪の蘇州庵で無残な利七の死にざまを見たとき、何等かの方法でやれぬこともないと思い、また、ひょッとしたら陳東海の双生児ふたごの兄弟が諜合しめしあわせてやったことかとも考えていたが
もちろん独逸ドイツの官憲にも照会いたしましたが、奇妙な事には、こやつにはルイ・ベッケルという双生児ふたごの兄弟があって、それは我々になかなか深い縁があるのでございますがな、実は
「お葉や、わたしも、そうだった。今のわたしの身分といったら、曲独楽使いの太夫なのだよ! ……荏原屋敷の娘、双生児ふたごのお嬢様と、自分から云ってはなんだけれど、可愛らしいのと幸福なのとで、人に羨まれたわたしたち二人が、揃いも揃って街の芸人に!」
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
真実の私の過去は、やはり呉一郎と双生児ふたごで、幼い時に何かの理由で別れ別れになっていたその片割かたわれかも知れないのだ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
なにあれは、わしの双生児ふたごでもなんでもない。海外を放浪中ほうろうちゅう、わしに生きうつしなところから、何かの役に立つだろうと思って、ひろってきた男じゃ。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
三郎が京の茅野ちのさんのところへ行つてからもう十五日になる、花樹はなき何時いつ行つたのであらうなどヽ考へながら私は引き離された双生児ふたご瑞樹みづき枕許まくらもとへ坐ります。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
そして秋森家の双生児ふたごは殆んど決定的な犯人として警察署へ収容され、事件は一段の落着を見せはじめた。
石塀幽霊 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
双生児ふたごかも知れないぜ。君は知らなくても、君には赤ん坊の時分に分れた双生児があるのじゃないかい」
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「皆さん、殺されたのは本当の木村博士ではありません。おそらく、木村博士の双生児ふたごの兄弟でしょう」
紫外線 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
エホバがみ半陰陽ふたなりなりき。初めに自らいとなみて、双生児ふたごを生み給えり。最初にはらより出でしは、女にしてエヴと名付け、次なるは男にしてアダムと名付けたり。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
白日の幽霊を見たような恐ろしい恐怖から解放されると、不思議な神業かみわざ——こんなにもよく似た双生児ふたごの妹の思わぬ出現に、すっかり度胆を抜かれてしまったのです。
和助は去年の春に結婚し、今年の夏に女の双生児ふたごができたので、家が狭いのを苦にしていた。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
……つまり双生児ふたご
顎十郎捕物帳:01 捨公方 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
双生児ふたごででもなければ、こんなによく似た男が二人いる筈はないと思うでしょう。ね、思うでしょう。そこですよ、そこに我々人間の大きな弱点があるのです。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)