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其聲
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そのこゑ
愛ちやんはこれを
見て
哄笑しました、しかし
其聲を
聞きつけられては
大變だと
思つて
急いで
復た
森の
中へ
駈け
戻りました。
又子供の
咽喉を
見るので
口を
開かせたりする
時に、
子供が
泣叫び、
小さい
手を
突張つたりすると、
彼は
其聲で
耳がガンとして
了つて、
眼が
廻つて
涙が
滴れる。
此美登利さんは
何を
遊んで
居る、
雨の
降るに
表へ
出ての
惡戯は
成りませぬ、
又此間のやうに
風引かうぞと
呼立てられるに、はい
今行ますと
大きく
言ひて、
其聲信如に
聞えしを
耻かしく
御米は
灯に
背いてゐたから、
宗助には
顏の
表情が
判然分らなかつたけれども、
其聲は
多少涙でうるんでゐる
樣に
思はれた。
今迄仰向いて
天井を
見てゐた
彼は、すぐ
妻の
方へ
向き
直つた。
乃で
愛ちやんは
恰度お
稽古の
時のやうに
前掛の
上へ
兩手を
組んで、それを
復習し
初めました、が
其聲は
咳嗄れて
變に
聞え、
其一語々々も
平常と
同じではありませんでした。
はいと
云つて
立つたが、
其聲が
泣いた
後の
聲の
樣であつた。