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そのこゑ
此美登利さんは
何を
遊んで
居る、
雨の
降るに
表へ
出ての
惡戯は
成りませぬ、
又此間のやうに
風引かうぞと
呼立てられるに、はい
今行ますと
大きく
言ひて、
其聲信如に
聞えしを
耻かしく
御米は
灯に
背いてゐたから、
宗助には
顏の
表情が
判然分らなかつたけれども、
其聲は
多少涙でうるんでゐる
樣に
思はれた。
今迄仰向いて
天井を
見てゐた
彼は、すぐ
妻の
方へ
向き
直つた。
ティウトンのヨハンネスと
答へる
其声が
透きとほるやうで、
聞いてゐて、
心持が
好くなる。