がさ)” の例文
だが、そんな不愉快な日ばかりもなかったのは、若葉の道をじゃがさをさしかけて、連れ立って入湯おゆにゆくような、気楽さも楽しんでいる。
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
じゃがさがはねて、助六すけろくが出るなど、江戸気分なもの、その頃のおもちゃにはなかなか暢気のんきなところがありました。
ると、両方りやうはうからはせて、しつくりむだ。やぶがさつて、なはてをぐる/\とまはつてちやうまる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
町と村との境をかぎった川には、あし白楊やなぎがもう青々と芽を出していたが、家鴨あひるが五六羽ギャアギャア鳴いて、番傘とじゃがさとがその岸に並べて干されてあった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
鉛色なまりいろの谷窪の天地に木々はがさのように重くすぼまって、白いしずくをふしだらに垂らしていた。崖肌は黒く湿って、またその中に水を浸み出す砂の層が大きな横縞よこじまになっていた。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「いいえ、なにね、今そこの日がさの中にちょいとこかし込んだしろもののことですがね」
たとえば塗下駄ぬりげたや、帯や、じゃがさや、刀のさやや、茶托ちゃたくや塗り盆などの漆黒な斑点が、適当な位置に適当な輪郭をもって置かれる事によって画面のつりあいが取れるようになっている。
浮世絵の曲線 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
彼が着いたとき、彼らは庭に出ていて、夏の暑い午後を、丸がさのように茂った秦皮とねりこの下でうつらうつらしていた。手を取り合って青葉だなの下で居眠ってるベックリンの老夫婦に似ていた。
御心配はいりません、てまえがこうもりがさもってますでな。
まざあ・ぐうす (新字新仮名) / 作者不詳(著)
がさを笑ひさしをり春の雨
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
白いカウモリがさにとまり
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
あんずるに、くるまつて、作品さくひんれいするのであらう。厚志かうしあへて、輿こし駕籠かごやぶがさとをえらばぬ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ことに、寺の本堂が狭かったので、中にはいれなかった人々は、じゃがさや絹張りの蝙蝠傘こうもりがさ雨滴あまだれのビショビショ落ちるひさしのところにさしかけて立っていた。読経どきょうは長かった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
ことしの十月十三日の午後彼は上野へ出かける途中で近所の某富豪の家の前を通ったら、玄関におおぜいの男女のはき物やこうもりがさが所狭く並べられて、印絆纏しるしばんてん下足番げそくばんがついていた。
野球時代 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
やぶがささして遊ぶ子秋の雨
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
なにも、やぶがさぐるまほねらせてはこばせずとことよ。平時いつもならかくぢや、おまけ案山子かゝしどもがこゑいて、おむかひ、と世界せかいなら、第一だいゝち前様めえさまざうかついでほふはあるめえ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
村の道をじゃがさが一つ通って行った。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)