トップ
>
側目
>
わきめ
ふりがな文庫
“
側目
(
わきめ
)” の例文
今までは生活の不如意に堪えながら
側目
(
わきめ
)
もふらずに努力の一路を進んで来たのが、いくらかの成効に恵まれて少し心がゆるんでくる。
柿の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
かくて彼は、
日々
(
にちにち
)
の波を分けておのれの小舟を進めながら、
側目
(
わきめ
)
もふらず、じっと
舵
(
かじ
)
を握りしめ、目的の方へ眼を見据えている。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
書架の上から淡黄色な紙表紙の書籍を取出して来て、自分の心をその方へ向けた。そして
側目
(
わきめ
)
もふらずに新しい言葉の世界へ行こうとした。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
小脇に弓矢をかかへしまま、
側目
(
わきめ
)
もふらず走り過ぎんとするに。聴水は
連忙
(
いそがわ
)
しく呼び止めて、「
喃々
(
のうのう
)
、黒衣ぬし待ちたまへ」と、声を
掛
(
かく
)
れば。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
側目
(
わきめ
)
もふらず
稼
(
かせ
)
いでいるのは、この木の株根に執着があるわけではなく、こうして幾つもの株根を掘り起すことの目的は、この土地を開墾する
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
しかし彼女は
側目
(
わきめ
)
も振らずに(しかも僕に見られてゐることをはつきり承知してゐながら)
矢張
(
やは
)
り
毬
(
まり
)
をつき続けてゐた。
本所両国
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
其上をあちこち跳びながら伝って行く面白さに、
側目
(
わきめ
)
もふらず登って行く。沢が急に狭くなって左右に崖が現われる。
北岳と朝日岳
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
大きい声では言へないが、余り
延々
(
のび/\
)
にしておくと、さういふ女でも、いつの間にか
側目
(
わきめ
)
を振る事を覚えるものだから。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
おかみさんは弁当の包を解き大きな握飯を両手に持ち
側目
(
わきめ
)
もふらず貪り初めたが、婆さんは身を折曲げ
蹲踞
(
しやが
)
んだ膝を両手に抱込んだまゝ黙つてゐるのに気がつき
買出し
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
真っ暗な
川岸
(
かし
)
伝いに両国へ若い女の夜道は楽ではありませんが、お静は
側目
(
わきめ
)
もふらずに急ぎます。
銭形平次捕物控:088 不死の霊薬
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
母娘
(
おやこ
)
は
顏
(
かほ
)
をみあはせましたが、
寂
(
さび
)
しさうにその
何方
(
どちら
)
からも
何
(
なん
)
とも
言
(
ゆ
)
はず、そして
※
(
かな/\
)
のうしろ
姿
(
すがた
)
がすつかり
見
(
み
)
えなくなると、またせつせと
側目
(
わきめ
)
もふらずに
織
(
を
)
り
出
(
だ
)
しました。
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
僕はもう観察修行は犠牲にして、
側目
(
わきめ
)
もふらず受験準備に
没頭
(
ぼっとう
)
し始めた。不思議なもので、勉強していると入れるような心持がする。怠けていると駄目なような気分になる。
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
西寺の横の坂を、
側目
(
わきめ
)
も振らず上つて行く。胸の上に堅く組合せた
拳
(
こぶし
)
の上に、冷い冷い涙が、頬を伝つてポタリポタリと落つる。「神様、神様。」と心は続け様に叫んで居る。
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
そうして真っ直ぐに前方を見ると、面紗の女とダンチョンとが木立の繁った
暗所
(
くらがり
)
の方へ、
側目
(
わきめ
)
もふらず歩いて行く。程よい間隔を中に保って、ラシイヌはその後を追って行った。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
こう
一言
(
ひとこと
)
言ったきり、相変らず夜は縄をない昼は山刈りと土肥作りとに
側目
(
わきめ
)
も振らない。弟を深田へ縁づけたということをたいへん
見栄
(
みえ
)
に思ってた
嫂
(
あによめ
)
は、省作の無分別をひたすら
口惜
(
くや
)
しがっている。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
側目
(
わきめ
)
も振らずに積みあげて来た
傾ける殿堂
(新字旧仮名)
/
上里春生
(著)
翌朝、眼がさめると、おきまりの迎え酒
一献
(
いっこん
)
、それからまた
側目
(
わきめ
)
もふらず昨日のつづき、本草学の研究に一心不乱なる道庵先生を見出しました。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
が、お蓮はそんな物には、全然
側目
(
わきめ
)
もふらないらしい。ただ心もち
俯向
(
うつむ
)
いたなり、さっさと人ごみを縫って行くんだ。
奇怪な再会
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
側目
(
わきめ
)
も振らず、じつとそれに見とれてゐた大観氏は、舞がすむと里栄を
傍
(
そば
)
に呼んで、咎め立でもするやうに訊いた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
そして一しおの濃さを加えた中禅寺湖畔の秋色も、また心を惹くに足らぬとように
側目
(
わきめ
)
もくれず道を急いだ。
秋の鬼怒沼
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
竹村君は小僧が皿を包むのをもどかしそうに待っていたが、包を受取ると急いで表へ飛び出した。そうして
側目
(
わきめ
)
も振らずにいきなり電車へ飛び込んでしまった。
まじょりか皿
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
おかみさんは弁当の包を解き大きな握飯を両手に持ち
側目
(
わきめ
)
もふらず貪り初めたが、婆さんは身を折曲げ
蹲踞
(
しゃが
)
んだ膝を両手に抱込んだまま黙っているのに気がつき
買出し
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
男子と生まれて王侯となるのは目覚ましいことでもございますし願わしい限りでもございますが、さて王侯になって見たら
側目
(
わきめ
)
で見たほどには楽しくもなく嬉しくもないかも知れません。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
頭を下げ、
側目
(
わきめ
)
もふらず、
脚燈
(
フートライト
)
に沿うて、
急
(
せ
)
き込んだ足取りで歩いていった。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
私は
側目
(
わきめ
)
もふらずに、
錯々
(
せつせ
)
と自分の道を歩き始めた時がありました。そこまで御話しなければ、斯の手紙を書き始めた最初の目的は達したとも言へません。しかし今はそれをする時がありません。
幼き日:(ある婦人に与ふる手紙)
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
元よりその間も平太夫の方は、やはり花橘の枝を肩にして、
側目
(
わきめ
)
もふらず
悄々
(
しおしお
)
と歩いて参ったのでございます。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
千葉県知事折原
己
(
き
)
一
郎
(
らう
)
氏が、以前福岡県知事を勤めてゐた頃、ある宴会で目もとの
可愛
(
かあい
)
らしい芸者が
側目
(
わきめ
)
もふらず、じつと自分の顔に見とれてゐるのに気がついた。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
雲間を洩れる夕日の光も木立に遮られて、其力ない影はもう原にはとどかなかった。子供のように
側目
(
わきめ
)
もふらず苔桃の実を摘んでいた私達は、急に寒さの加わるのを覚えて立ち上った。
秋の鬼怒沼
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
兵馬はそれを
側目
(
わきめ
)
に見ただけで、その夜のうちに恵林寺まで急がねばなりません。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
青銅で造った大形の
龕燈
(
がんどう
)
を、両手で重そうに捧げた後から、
稚子輪
(
ちごわ
)
に髪を結って十五、六の美童が、銀の鈴を振りながら、
側目
(
わきめ
)
も振らず歩いて来、その後から具足をつけた二人の武士に
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
最後に僕の繰り返したいのは僕も亦今後
側目
(
わきめ
)
もふらずに「話」らしい話のない小説ばかり作るつもりはないと云ふことである。僕等は誰も皆出来ることしかしない。
文芸的な、余りに文芸的な
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
もしまた女が
側目
(
わきめ
)
も振らないで、真直に歩いてゐるやうだつたら、それこそ飛んだ掘り出し物だから、すぐその足で結婚を申込む位に
機敏
(
すばしこ
)
く立ち廻らなければならない。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
此林中にも
亦
(
また
)
縞栗鼠が多く、風雨にも
拘
(
かかわ
)
らず、人の近付く気配に、岩の下から走り出したり、木の洞から駆け下りたりして、
側目
(
わきめ
)
も振らず一心に登っている私を幾度
駭
(
おどろ
)
かしたことであったか。
木曽駒と甲斐駒
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
いつぞや
油小路
(
あぶらのこうじ
)
の
道祖
(
さえ
)
の神の
祠
(
ほこら
)
の前でも、ちらと見かけた事があったが、その方は
側目
(
わきめ
)
もふらず、文をつけた橘の枝を力なくかつぎながら、もの思わしげにたどたどと屋形の方へ歩いて参った。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
契月氏は
家
(
うち
)
を出る時にはいつもかう言つて言ひわけをした。実際大阪はいい
土地
(
ところ
)
だ。
商人
(
あきんど
)
の都で、
側目
(
わきめ
)
もふらず、いつも忙しく暮してゐるので、
画家
(
ゑかき
)
が人に隠れてスケツチをするのに丁度都合がいい。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
“側目”の意味
《名詞》
注意して見ること。注視。
(出典:Wiktionary)
側
常用漢字
小4
部首:⼈
11画
目
常用漢字
小1
部首:⽬
5画
“側”で始まる語句
側
側女
側室
側面
側衆
側用人
側杖
側仕
側近
側役