今朝こんちょう)” の例文
「ご快気の由、めでたい。今朝こんちょう、出陣と聞しめされ、天機もことのほかおうるわしく拝された。尊氏の首をみる御殊勲の日をお待ち申すぞ」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし彼は膝を進ませると、病人の耳へ口をつけるようにして、「御安心めされい。兵衛殿の臨終は、今朝こんちょうとら上刻じょうこくに、愚老確かに見届け申した。」
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「雪のごとき、玉のごとき、乳の下を……串戯じょうだんにしろ、話にしろ、ものの譬喩たとえにしろ、聞いちゃおられん。私には、今日こんにち今朝こんちょうよりの私には——ははははは。」
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これは開闢かいびゃく以来の大仇討、昨夜本所松坂町吉良上野介様のやしきへ討入った浅野浪士の一党四十七人、しゅうあだ首級しるしを揚げて、今朝こんちょう高輪の泉岳寺へ引上げたばかり
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
昨日さくじつといい、今日こんにちといい、御役の方々、御苦労に存じます。大かた斯うであろうと察しまして、今朝こんちょうは読経して、皆さま方のお出でをお待ち申して居りました」
半七捕物帳:66 地蔵は踊る (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
先生は更にわがかたには見向きもしたまはず破笠子を相手に今朝こんちょう巴里パリー川上かわかみ(壮士役者音二郎が事なり)より新聞を郵送しきたれりとて巴里劇界の消息を語出かたりいだされぬ。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
はア一昨日いっさくじつは余程お悪いようでございましたが、昨日さくじつよりいたして段々御快気におもむき、今朝こんちょうなどはおかゆを三椀程召上りました、其の上お力になる魚類を召上りましたが
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ながらく失礼つかまつった。今朝こんちょうはまたこの真剣勝負、さっそく御承引あってかたじけない」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「閣下、今朝こんちょうは有難うございました。お忙しいところをお煩わせ申上げて、恐縮に存じます」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そうして今朝こんちょう七時半頃、右手のリウマチスが再発致しました旨の、偽りの欠勤届をしたためておりました折柄、タキシー運転手姿の樫尾が、転がるように駈け込んで参りまして
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
れは留蔵とめぞうならんといえば、先生、それそれその森田もりた留蔵……それよりだん、新旧の事に及ぶうち、予今朝こんちょうの時事新報にいでたる瘠我慢やせがまんせつに対する評論ひょうろんについてと題する一篇に
為めに呼吸促迫し、更に今朝こんちょう浦幌にて僅に粥二椀を喰したるままにて、豊頃にては昼飯ひるはんを喰せざるを以て、追々空腹を覚え、殊に歩行は遅くして、三時頃に至り彼の小屋に着したり。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
(一)喇嘛が行衛をくらませたのは昨晩中のことであって、今朝こんちょうそれを発見した。
喇嘛の行衛 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その他今日こんにちの市場に出たる皆の衆、どなたも承知あれ、今朝こんちょう九時と十時の間にブーズヴィルの街道にて手帳を落とせし者あり、そのうちには金五百フランと商用の書類を入れ置かれたり。
糸くず (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
昨夕ゆうべも手紙を書きましたが、今日もまた今朝こんちょう以来の出来事を御報知します。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ところが昨日、問合わせてあった名古屋の実家から、まだ帰らぬという返事を受けとる、その今朝こんちょう、例の新聞記事です。どうも飛んだことが起ったのではないかと非常に心を痛めている次第です。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
浜村屋の屋号すかしの薄葉うすように、肉の細い草書くさがきで、今朝こんちょう、参詣旁々かたがた、遠眼なりともお姿を拝見いたしたく、あわれとおぼしめし、六ツ半ごろ、眼にたつところにお立ち出でくだされたく、と書いてある。
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
今朝こんちょう私が戴きました薬は、どうした薬でございましょうか」
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「早い訳じゃ。今朝こんちょう西大寺さいだいじを出立したばかりで」
備前天一坊 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
受けた為め気が転倒したのかと私しは思いますが目「いや其様な筈は有りませんたとい一時は気が転倒したにもせよ夫は少し経てばおさまります、藻西太郎は一夜眠た今朝になっても矢張り自分が犯したと言張ッて居ますから」此言葉にて察すれば目科は今朝こんちょう余の室を
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
『……オオ、そうそう、今朝こんちょうでした。今、茶を注ぎながら思い出したのだが、ここの家主、中島五郎作が見えましてな』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今朝こんちょうの注進によれば、畑六郎左衛門は湊の城を出て金津河合江口の城々を攻め落としたとある。由良越前は西方寺の城を出て、和田江守深町の庄を奪ったという。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
さて今朝こんちょう、此の辺からは煙も見えず、音も聞えぬ、新停車場ステエションただにんり立つて、朝霧あさぎりこまやかな野中のなかして、雨になつたとき過ぎ、おうな住居すまいけ込んだまで
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「そうです。今朝こんちょう九時半頃でしたか」
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
今朝こんちょうのご参詣のあと、わがおやかたには、ふしぎな奇瑞きずいにお会いなされた。あまりのありがたさゆえ、それを皆へも告げ知らせる。まずは次の一ぶんを聞け」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
将軍家が江戸表へ御下向ごげこうのことは、今朝こんちょう支配がしらから改めて触れ渡された。この上はしょせん長逗留は相成るまい。遅くも来月の十日頃までには、一同京地を引き払うことになるであろう。
鳥辺山心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
送っているようでは心許こころもとない。ありのままを、夏侯楙駙馬へご報告申しておくゆえ、後詰あるもなきも、随意になさるがよい。それがしは先を急ぎますから、今朝こんちょうお暇を申す
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大目付副使おおめつけふくし、ふたりの上使が立てられ、すでに今朝こんちょうは大阪を出発した筈——もう多くの弁にも及ぶまい、すなわち、陰謀露顕いんぼうろけん、惜しむべし、蓬庵公ほうあんこう以来の阿波二十五万六千石
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……申しあげます。悦之進どのがただいま、もどりましてございまする。昨夜ゆうべ、変事とともに、無断に出たことやら、今朝こんちょう、夜明けてから立帰りました罪を、ひどく申し訳ない儀と」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ウ、ウム」と膝をのりだして——「今朝こんちょうも諸方から来ている書類に目を通しているのだが、ひとつとしてかくたる手がかりはない。ところで、何かそちの手で、めぼしいことがあがったか」
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今日以後、正成と連れ立つ者は、さいごまで、正成との同行を悔いとせぬ者だけにかぎる。簿しるしした以外の武士でも、帰るが望みという者あれば、こころよく、今朝こんちょう、放ちやるがいい。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
俊秀としひで、わしに代って、今朝こんちょうのことを、そちから全軍の者に話してくれまいか」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今朝こんちょうは、師にお願いがあって、参じたのでございます」と、いった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——さて今朝こんちょう、ここにある総兵力は、どれほどか」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)