三助さんすけ)” の例文
湯屋の三助さんすけや床屋の小僧でも今日盛んに使う「趣味」ということばと同じ意味の趣味ならば余りありがたくもないものであるし
離婚について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
前刻さつきから、通口かよひぐちかほして、髯旦ひげだんのうめかたが、まツとほり、小兒こども一寸いつすんみづ一升いつしようわりのぞいて、一驚いつきやうきつした三助さんすけ
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
敬太郎けいたろう留桶とめおけの前へ腰をおろして、三助さんすけ垢擦あかすりを掛けさせている時分になって、森本はやっとけむの出るような赤い身体からだを全く湯の中から露出した。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
風呂ふろの流しいわゆる三助さんすけというものはいつの世に始まったものか知らないが考えてみると妙な職業である。
備忘録 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
戦争以前から、藤三はこの界隈かいわいの風呂屋を転々した三助さんすけであり、三助なるものが解消してからも番頭として働き続け、今は竹の湯の番頭として住み込んで居た。
刺青 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
三助さんすけだって湯殿に附属した道具ではありません、やっぱり人間です。浴場の出入口は両方にあるのです。焚場からでも自由に脱衣場へ来ることが出来るのです。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
天然理心流二代目近藤三助さんすけは武州多摩郡加住かずみ村の出、八王子はちおうじを中心に多摩地方の農村富農の子弟を「武術」の上で組織した。二代目を継いだ近藤周助しゅうすけも多摩郡小山村の「農」。
新撰組 (新字新仮名) / 服部之総(著)
拍子木ひょうしぎの音が聞えるのは、流しを頼むので、カチカチと鳴らして、三助さんすけに知らせます。流しを頼んだ人には、三助が普通の小桶こおけではない、大きな小判形こばんがたの桶に湯をんで出します。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
「やりましたよ、あんな風をしているくせに随分いやらしい三助さんすけじゃありませんか」
魔子を伴れて洗粉あらいこ石鹸せっけんや七ツ道具をそろえて流しを取ったこの児煩悩のお父さんが、官憲から鬼神のように恐れられてる大危険人物だとは恐らく番台の娘も流しの三助さんすけも気が付かなかったろう。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
そんな言葉は御維新前ごいっしんまえ折助おりすけ雲助くもすけ三助さんすけの専門的知識に属していたそうだが、二十世紀になってから教育ある君子の学ぶ唯一の言語であるそうだ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お湯やの三助さんすけさんや、町の青年たちは、ふろばの大屋根にのぼって、ワアワア、さわいでいます。
黄金豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
突然いきなりどんつくの諸膚もろはだいだいきほひで、引込ひつこんだとおもふと、ひげがうめかた面當つらあてなり、うでしごきに機關ぜんまいけて、こゝ先途せんど熱湯ねつたうむ、揉込もみこむ、三助さんすけ意氣いき湯煙ゆげむりてて
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「私はね、姐さんを子供の時分から知ってますよ、朝日湯の三助さんすけをしてましたからね」
刺青 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
それから立派な着物を着たまま湯に這入はいって、あとは三助さんすけにくれるのだそうです。彼の乱行はまだたくさんありましたが、いずれも天を恐れない暴慢きわまるもののみでした。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「やあ、金時きんとき足柄山あしがらやま、えらいぞ金太郎きんたらう。」と三助さんすけが、んで
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わしは三助さんすけの様に、我が妻の美しい肌をこすってやった。
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
自宅に風呂をはない時分には、つい近所の銭湯せんとうに行つたが、其所そこ一人ひとり骨骼こつかくの逞ましい三助さんすけがゐた。是が行くたんびに、おくから飛びしてて、ながしませうと云つては脊中せなかこする。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)